【当世猪犬見聞録】紀州系猪犬に半生をかけた猟人
文|八木進
出頭忠康 〜 紀州系猪犬に半生をかけた猟人
「紀ノ國」和歌山県は古来より「木ノ國」とも言われ、良質の檜・杉の産地として名高い。その豊かで秀麗な紀伊山地を源とする銘河川も多く、古くから川筋ごとに名猟師・名猪犬を輩出している。
中でも熊野山地の最深部を源とする「古座川」は、名紀州系猪犬の産地としてつとに有名であり、中でも上流部の支流「西川」付近から出た「古座川黒」は、特に秀でた希少な猪犬として猪猟師の垂涎であった。
茨城県鹿嶋市在住の出頭忠康氏(69歳)は狩猟歴46年である。
当初の数年間は紀州犬を使役してのヤマドリ猟であったが、猪猟への転向を思い立ち産地の和歌山県へ猪犬探訪に出かける。
古座川筋で猪犬探しをするも、なかなか良犬に巡り合えなかったところ、偶然、現地のある猟師から山梨県の猪猟師が「古座川黒」系を所有しているとの情報を得る。
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