『いろどり』の教え方#2/『いろどり』の真髄 ✨F on F✨
文法積み上げ型が話せるようにならない、タスク達成型は話せるようになる、とよく言われている論拠のひとつは F on F だと思います。
真髄とは言い過ぎかもしれませんが、大切なことには変わりなくて、しかもその仕組みは忘れられがちだと感じます。かくいう僕も日本語を教え始めた時は理解していなくて、練習の効力を下げていたなあと思ってます。反省。(くろぼしは教え始めた時、ボランティアで『できる日本語』を教えていました。)
まず 「F on F (フォーカスオンフォーム)」の復習
この用語、僕は教師養成講座で聞いても教育能力試験対策で勉強しても意味が分かりませんでした。なのでここで一度かみ砕こうと思います。そんなの読めば分かんじゃんという聡い方は飛ばして頂けると40秒くらい節約できます。ラピュタに飛ぶ支度ができます。
まず、『みん日』のような文型積み上げ型と、『いろどり』は、文型に注目する点で共通しています。『みん日』のベーシックな教え方では、最初に文型を例文を使って提示します。『いろどり』も文型に注目というパートがあります。文型(=フォーム)が両方出てきますね。
文型積み上げ型『みん日』は、文型のリスト(シラバス)があって、文型がたくさんあるからフォームズ、F on Fs 。これ分かりやすい。
一方、タスク達成型『いろどり』は、タスク毎にセクションが組まれていますから、まず状況とタスクを確認します。その後、実際に使われている会話を聞いて、会話の結果、分かったことや伝えられたことなどを確認します。これを理解したら、この結果を得るために使われた文型に注目します。この時、「これをしたいときにはこの文型を使うのかー」と学習が進みます。この流れの結果、ある文型に行きつくのでフォームはひとつ、F on F 。
F on F では、状況・タスク・したいことに文型をくっつけて学習するため、実際の状況で話せるようになるという理屈が、「F on F は話せるようになる」ともてはやされている理由です。
というのがくろぼしの理解。もっと分かりやすい名前なかったんかなといつも思う🤔
なるほど F on F なのは分かった。で授業では?
F on F の考え方では、したいこと(タスク)と文型を繋げて覚えるのが必要です。この点で僕が注意していることが二つあります。
一つ目は、タスクと関係ない練習をしないこと。これは前回の記事でも触れましたし、意外と簡単じゃないですけど、意識はしやすいと思います。
二つ目は、文型に集中しすぎないこと。学習者はどうしても形としての知識を欲しがりがちで、文型が出て来るとそれを言えるようになることが目的になってしまいます。でもここで文型だけに集中してしまうと、F on F の目的の 「あるタスクを達成するために」という部分が抜け落ちてしまいます。
実際にあった例を紹介します。『いろどり』2課で「日本語で何ですか」という文型というかフレーズを確認し、そのあと実際に質問してみる練習に入ります。ある学習者は調子よく、「waterは日本語で何ですか」「Scissorsは日本語で何ですか」 と聞きまくりました。その後、英語(学習者言語)でwaterやscissorsを日本語で何と言うか確認したところ、学習者は全く覚えていませんでしたとさ。_( ┐ノε:)ノズコー
上の状態では文型を練習しているだけなので F on Fs の状態になっています。『いろどり』の様な順番で授業を進めても、文型に集中しすぎると「日本語でどういうかを知りたい」という当初のタスクを忘れて F on F 「これをしたい時にこの文型を使う」の形式になっていないことがあるわけです。
そこで、上の学習者ともう一度同じ練習をしました。練習の前に、「練習の後に日本語でなんて言うかもう一度聞くから、メモするなりしてね」と伝えました。すると学習者の意識は「この文型を使う」から「日本語でなんて言うか聞く」ために「これは日本語で何ですか」という表現を使うとなるわけでした。これすなわち F of F。めでたしめでたし。
教師の役割
外国語での会話に慣れていない学習者は特に、言葉を「勉強」して「練習」すると、目の前にある文型のみに意識が集中してしまうようです。こういう時に練習方法や意識を修正できることが教師が付く意義で、教師の役割の一つだろうなーと思います。せっかく勉強するんだから教科書の効果をしっかり発揮させて、学習の効率を上げたいですね。
ちなみに例に出した学習者は今、「~は日本語で何ですか?」が得意になったらしく、課が進んで他の会話の練習をしていても途中で「~は日本語で何ですか?」と得意気にぶっこんで来るので、上の練習の成果かどうか分かりませんが、嬉しく思っています。
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