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フルーツティー/2月10日

水曜日は「ノー残業デー」である。
そそくさと退社してきた。

早く帰って来れたので、最寄駅の焼き菓子屋さん(19:00まで営業)に久しぶりに立ち寄ってみた。このお店は、カップケーキがイチオシ。以前はカップケーキってどうもボソボソぱさぱさしたイメージが強かったけど、ここのをいただいてからは、そのイメージが変わった。
しかも見た目もかわいいし、季節限定の味もあったりして、味覚でも視覚でも美味しいのだ。

小さなお店ということもあって、お店の中にはふわっとした甘いにおいが充満している。少し湿度が高めの。1日の終わりにこのにおいを嗅ぐと、なんだかもそれだけでその1日が幸福に満たされる感じがする。

今日は何を買おうかな、とショウケースまわりを見渡す。季節柄、バレンタイン用の詰め合わせセットもあり、いつにも増して品揃え豊富だ。でもやっぱり、ここはカップケーキ。

クリーム系がちょこんと乗ったケーキは冷蔵のショウケースに、常温OKのシンプルなケーキはその上に、1個ずつ袋に梱包された状態で、味ごとにそれぞれが一列に並んでいる。まるで、小学校の集会みたいな。
う〜ん、どっちも美味しそうだ。悩む時間も、また小さな幸せ。

悩んだ結果、今日は常温チームから「フルーツティー」を買って帰ることにした。ドライフルーツと、茶葉が混ぜ込んである生地で焼かれたカップケーキだ。きっと、いい香りがするんだろうな。
お店の方にその旨を伝えると、「はい、フルーツティーですね〜!」と元気よく言いながら、パッと手に取り、レジに持っていった。

ん。今、それは「フルーツティー」の列じゃないところから取ったような。その隣の、「チョコシナモン」から取ったような。

奇しくも、「フルーツティー」と「チョコシナモン」は、外観がとても似ている。
ドライフルーツなのか、チョコなのか。
茶葉なのか、シナモンの粉なのか。

いや、自分の目に誤りがあったかもしれない。
いや、実は「フルーツティー」の方が余っていて、はみ出た分が隣の列に並んでいたのかもしれない。
自分が間違っている可能性があることを疑いつつ、そうだったらなんか恥ずかしいなと思いつつ、何も言い出せない。

お会計が進んでいく。小銭はない。1000円札を出す。

ああ、もう袋に封のシールが貼られてしまった。
ああ、お釣りが返ってきた。
(ちなみに、両者は同値である)

レシートの品目表記に一縷の期待をしながら、しかし残念ながら品目表記に商品の名前は書いておらず「その他」という大まかな括りになっていた。
お店のおねえさんと私の意思が、どこまで通っているかも、確かめ損ねる。

なんだか、もうここまできちゃったし「チョコシナモン」でもいいや、という私と
「で、いいや」ってなんやねん、自分で選んだもの、貫き通せよ、という私。
(なんやねんとか言っているけど、根っからの関西人ではない。エセ。)

お釣りを財布に戻しながら、2人の私が、私の中で闘っている。

「…ん〜これって、“チョコシナモン”じゃないですかね!!!!!!」

貫き通したほうの私が勝利!!!!!

お店の方も、「あれ、確かに私ここから取りましたね??すみません。」と。
結局交換していただいて、私の手元には「フルーツティー」。


正直、私にとっては「フルーツティー」でも「チョコシナモン」でも、食べるのはどっちでもいい。多分、どっちも美味しいことには違いないから。

大事なのは、幸せに迷いながら自分で決め切ったものを選んで手に入れる、というそのプロセスだった。以前の私なら、「めんどくさいし、チョコシナモンでええわ」と、お店の人と会話するややこしさを、数秒前の小さな決意(=食べたいであろうカップケーキを選択したこと)を、放棄していた気がする。
でも今日は、自分で決めたことを貫き、その過程での誤りを正すことができたぞ、よし。
そんな自分をちょっとだけ褒めた。


「フルーツティー」は、明日の朝食に、いただく予定。

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