刀ステ一挙無料配信・延長戦「維伝 朧の志士たち」感想

月曜日、前夜の慈伝の楽しさや前々夜の悲伝の衝撃からまだ醒めきっていない頭で、仕事中もぼーっとしながら考察図を書いて過ごし、夜に配信購入して観た、維伝。
慈伝までの自分の考察を大きくひっくり返すことになり、仕事もあって全然まとめられなかったのですが、やっと週末になった…。
維伝単体の感想と、維伝までの考察で2記事に分ける予定です。



・陸奥守吉行

とてもとても気持ちのいい坂本龍馬だった。(打ち間違いではありません)

もう、この刀ステ世界で、元の主絡みのしんどいものは、もう、たくさん見てきたわけですよ。
だからね、今更、龍馬に会って、死なせたくないとかやっちゃったら、さすがに、またかよ、ってなるわけですよ。

ところが「なんでお前はそんなに簡単に割り切れる」と和泉守に聞かれた答えが、まあなんと気持ちのいいこと。
この性格は主からもらったものだから、って。
さらに東洋に、志半ばで果てたって言われても、そうじゃない、そのあと龍馬の望んだ国になってる、って。
決して無理した笑顔なんかじゃなくて、本当に、心からそう信じているとわかる、清々しい笑顔で。

かっっっっこよすぎませんか!?!?!?

虚伝の不動、聞いてますか???
黒甲冑、鵺、聞こえますか???

…しかしね、皮肉なことに、今作に出てくる龍馬は、そんなにかっこよく割り切れる男じゃなかった。
死なせたくない、その一心で、歴史改変にまで手を出していた。
まあもっとも、この龍馬も史実とはまた違うのでしょうが…

やっぱり、史実がどうだったかよりも、朝尊先生の言うように、「逸話」が元になっているのでしょうね。
そもそも坂本龍馬の知名度も、日露戦争中に皇后が夢で見たというエピソードによって爆上がりしたという話もあるし、歴史を形づくるのがそういったエピソード=「逸話」である以上、刀剣男士たちも、そうしたものの影響を強く受けるのでしょう。
そもそも史実なんて厳密にはタイムスリップしないとわかんないもんね、今残っているものから想起されるイメージでやっていくしかない。

むっちゃんはまさに、後世の語りや創作によって、いわば一つの「改変」を受けた龍馬のイメージを、そのまま体現しているんでしょうね。


あと殺陣!!ブレイクダンスみたいな動きもあって、見応えすごかった…。
むっちゃんだけじゃなくて全体に言えることだけど、むっちゃんの動きを見てていちばんぴったり来るのが、「本格アクション時代劇」って言葉。

これまでの刀ステでやってきたのが、古式ゆかしき「殺陣」だとしたら、
今回のはほんとにもう、剣術の動きだけではない、銃ありダンス要素ありの、「アクション」って感じだった。倒された遡行軍が全員が吹っ飛ぶとかね、完全にエンタメ時代劇の手法なんですよね。(こういうの押切時雨が撮ってそう、と思った。特撮ネタです時代劇役者がいるんです)
とにかく全員の躍動感がすごい!舞台装置も相まって、縦にも横にも広がりのあるアクション。何度でも見返したいですね。



・鶴丸国永

久しぶりの染鶴!Twitter情報によると、あの残骸を持ってのアドリブのところは、歴史人物たちの朧メイクの時間をつくるためだったそうで…さすがアドリブキング。
ここのアドリブで笑いそうになりながら耐えた朝尊と肥前にMVPあげたい。

「戦場で赤く染まって、鶴らしくなるだろ!」っていうセリフの言い方が、健鶴と違う感じがした。これが個体差か。
健鶴はわりと「なるだろ!↗」って上がり気味に挑発するような印象だったけど、染鶴は「なるだろう!↘」ってドス効かせて言い切る感じ。

しかしやっぱり、「出陣はご無沙汰だった」みたいなセリフは気になるんだよな。まあこれについては考察で…



・小烏丸

あの、たぶん劇中3回くらいしか発してないドス声と、普段のギャップが激しすぎてやばい。
朧の志士たちを指して「ハリボテよ」と言い切ったところ、ぞっとした。

あとあのステップ!歩き方なんてもんじゃない、常に完成されたステップを踏んでいる。鶴との会話のシーンでしばらく片足立ちで膝曲げてたのすごかった…玉城さんの身体能力よ…。
全力に近い殺陣のはずなのに、力感が見えないのがすごいよなあ。ずっと力入ってないように見える。

「鳥が二羽」とかおっしゃってたけど本当にこの2振りがいると紅白でまあ華やぐし美しい。
そしてその鳥二羽が主から下された密命は、陸奥に試練を乗り越えさせて強くすること…。
これね、前までなら、ステ審神者マジ鬼、まあ作者が作者だからな!!!って思ってたんだけど、ここまで来ると、鬼なのは審神者なのか…?って思いますよね。誰なの?三日月?まんばちゃん?いったい誰の差し金ですか!?審神者はどこまで知ってるのそれとも操られてるの!?



・南海太郎朝尊

また劇団Patchからの登場だ!三好くん!
Patchは俳優グループみたいな感じではなく「劇団」なので、作演出や殺陣師などもこなすメンバーが普通にいます。楽しいぞ。

解説役を担うだけでなく、意味深なことをいろいろ言ってて、朝尊語録作れそうだな、なんて思いました。
人間の延長が刀なのか、刀の延長が人間なのか、とか。
歴史を守るのが刀剣の本能、とか。

そして罠を作ったり何か語ったりするときの、あのマッドサイエンティストな笑みが癖になりそう。
まだ経験が少なく弱いとか言ってたくせに、そんな弱そうにも見えないし(ゲーム的には初期値が高いのか?)、あげく脱ぐやつやるし…
今回いちばんハマってしまったキャラかもしれない。やっぱり演者を先に知ってるのってでかいんだよなあ。



・堀川国広

かわいい。兼さんのことを元主つながりで慕ってたけど、調べたところ、同一人物に同時に使われた刀、として実装されてるのはこの2振りだけだそうで。
今回のメンバーの中で唯一、ぱっと見でわかる洋装だけど、歴史人物たちに変な人扱いされてなかったのが印象的だった。今までは、何だお前たちは面妖な格好をしおって!って歴史人物に言われるのが常だったから。
あの時代の土佐であれば、内番衣装のジャージとかはともかく、あれくらいのブレザー風の洋装なら、まあこういうのもあるか、くらいの認識になってるのかねえ。

完全に個人の妄想解釈ですが、和泉守と堀川国広の関係って、土方歳三本人と、土方の小姓をつとめて土方の実家に遺品を伝えたとされる市村鉄之助がモデルなんじゃないか…?と。
どうもあの言動を見てると、土方本人を強く模したのが和泉守で、堀川国広には鉄之助の思いも込められてるんじゃないかと思うんですよね。
そして和泉守が和装、堀川国広が洋装なのも、もちろん刀派揃えってのはあるんでしょうけど、どうも洋装の少年=鉄之助のイメージに見えてきて。(土方自身も箱館戦争以降は洋装したと言われている)
もちろん、最終的には「助手」じゃなくて「相棒」と呼ばれるアツい展開がありますけどね…!これ特撮オタク大好きなやつです。相棒認定はアツい。

ところで兼さんは堀川国広のことを「国広」って呼んでますけど、まんばちゃんのことはどう呼んでるんでしょうかね…。
え、あの、この本丸にも、まんばちゃん、いるよね…?(不穏)
他の人は「堀川国広」とフルネームで呼んでいたような気がするので、この二人の間だけなら、いいんですけどね…。

この子のスライディングがすごかった。伸ばした足が真っ直ぐなまま最後まで滑るの。勢い殺すには少し曲げないときついはずなのに、そもそも勢いを殺そうとしてなかった。



・和泉守兼定

新選組の羽織!かっこいい!!
殺陣のときに、同じ兼定の歌仙に似たような、弧を描いて敵に斬りかかるようなステップが見れて嬉しい!すごく細かく作ってあるよねえ。
あと声が好き。田淵くんかなり頑張ったと思う。

あの、龍馬が取り落とした銃を使ったときがめっっちゃかっこよかった。
「刀の時代の終わりの最先端」って、今回いちばん好きなセリフかもしれない。
終わりを終わりとしてただ悲観的にとらえるのではなく、見方を変えればその最先端であって。終わりの最先端ってつまりは殿(しんがり)だから、その大トリを飾ってるってことなんだよね。確かにすごいこと。
そしてこの最先端っていう言葉には、「その時代の最前線にいた」という誇りも見え隠れするようで…

なんかこう、本当にみんな気持ちいいんですよ今回の幕末組は!
国内での力比べだからどう転んでもおかしくなかった戦国時代に比べて、世界史と工業革命に巻き込まれた形の幕末を生きた彼らは、幕末の歴史はこうなるしかないということをよくわかっているのかもしれない。例え土方歳三が生き延びようが、刀の時代は終わっただろうし(土方も洋装して戦ったし、土方を殺したのは銃弾らしいし)。
みんながこの狂った文久土佐をなんとかすることに真っすぐ向き合っていて、あれですね、邪魔する人がいない系の作品として、シンゴジラを見ているような快感があった。



・肥前忠広

いやあのほんとに、以蔵さんとの殺陣が速すぎて見えなかった。
斬りたいわけじゃない、誰も信じてくれないと思ってたその気持ちを、以蔵さんとだけはわかちあえてよかったね…!



・坂本龍馬

もういろんなところで坂本龍馬をやられてる岡田達也さん。カテコの「また会おう」という言葉は、まさに『また逢おうと竜馬は言った』じゃん。まさかまだ演られる気!?(笑)

序盤の「みんなを死なせるわけにはいかない」的な発言は、虚伝再演の蘭丸と同様、無自覚にループしてる証拠かと思ったが、そもそも主犯とはねえ…。
しかし人間が自分の意志で歴史改変できるって示されたのが地味にでかい。

手紙で武市と以蔵の死を知って、気づいたらここにいた、か。どれほどの無念がそうさせたんだろう。遡行軍はどこまで干渉したんだろうか…

終盤の龍馬を見ていたとき、この性格だからこその葛藤だな、と思った。
これまでに改変を望んだ不動、黒甲冑、鵺などなどは、とにかく自分の望みを果たしたい、その一心で動いていた。それが正しいとか正しくないとか知らない、やりたいようにやりたいんだ、って。
でも龍馬は、わかってた。「やり直しができないから、この世はおもしろい」ということを。だから「やり直せたら」と思った自分を「アホやのう」と言った。
この、自分がしていることが間違っているとわかっていて、それでもやってしまった。そして、そのことに気づいてしまった。その胸中、いかばかりか…。
こんな分析なんてできないまま、衝動のままに動く方が、きっとよっぽど楽なのに。己が道を踏み外していると知りつつ、それでもその世界に縋りたい自分も確かにいることを否定できないなんて、この正史ではない文久土佐を、続けることも壊すこともどちらもしんどいだろう。

だから、むっさんと切り結ぶことができて、引導を渡してもらえたことは、他の終わり方になるよりははるかに良かったんじゃないかな、と思う。思いたい。
いやでもね、この死に際でも、また会える気がする、って言ってたけど、いやたぶんまた会えちゃダメなんだよな…もうこの龍馬の時代に刀剣男士たちが出陣しないこと、それが平和の証だから。
これはきっと、このあと家宝の陸奥守吉行を自分のものにする、ってことなんでしょうね。



・岡田以蔵

以蔵は人なのに、武市に「お前はわしの刀」って言われちゃうのがなんか示唆的であり、悲しくもあった…。
義伝とかジョ伝では、元の主に「わしの刀」と言われることはまあまあ嬉しいことであったはずなんだけど、それは刀剣男士たちが言われるからであってね。
人なのに、主に使われる「刀」と言われてしまった以蔵の悲哀よ…。
肥前との邂逅がわりとハッピーエンド寄りでよかった。

てかほんとに、肥前との殺陣が、早すぎて見えなかった(2回目)
あと肥前と一緒に戦うとき、背中合わせになって、ちょうど鏡のように構えるところあるんだよね…!エモい!!


・吉田東洋

「頭の中が朧げ」とか言って、幕府に背くのは蛮行と言った次の瞬間には尊王攘夷とか言ったり、ずっと発言がふわふわしてたのは、朧の志士たちの中でも唯一、史実ではすでに死んでいる存在だったからなのかな。オリジナルがいないのだから、その模倣たる朧もよりおぼろげになる。
(唐橋充さんなのでずっと適当なことを言っていたわけではない。はず。)

史実では佐幕派の学者や官僚のような人なのに、こんな、思想を持たないふわふわした存在に成り果てさせてしまってまでも、
龍馬は、東洋に死んでほしくなかったのかなあ。
もはや吉田東洋と呼べないような朧に成り果てた姿になってでも、生きていてほしかったのかなあ。



・山姥切国広?

いやおかしいだろこの作品にこの項目つくるの。
なんですか「物語をおくれ」って。寄越せ、という意味の「おくれ」なのか、それとも、送れ、贈れ?
ちょっとここで考察始めるとキリがないので後ほど別記事で。
とりあえずこのお話の中ではむっちゃんと龍馬を助けてくれたので、完全なる闇落ちではないだろうということだけ。



・音楽

音楽が!これまでの7作品と全然違った。
慈伝までは、和楽器のみにこだわらず、洋の東西を問わないクラシック、って感じだったんだよね。
維伝の音楽は、ギターメインの邦ロック、って印象だった。エレキの音とかバリバリにかっこつけてて、見得を切るような使い方が邦ロックって感じ。
金管楽器の使い方にしても、オーケストラ的な感じじゃなくて、J-POPに乗せてくるような使い方で、おおお!ってなった。

アクション時代劇、っていう印象は、この音楽のおかげもあったかもしれない。なんていうか、必殺仕事人っぽい感じもあったかも。楽器は向こうは意外と古典的なのでぜんぜん違うんだけど、なんだろう、調なのかリズムなのかわかんないけど、イケイケドンドンな感じ、というか。
もうちょっと富豪だったらサントラを買ってたかもしれん。こちらも映像配信と同じくセールとかになりませんかねえ。



・その他いろいろ

かつて敗北したかもしれない刀剣男士たち、後ろ姿でずらっと出ましたけど、出た瞬間にすぐ誰が誰だかぱぱっとわかったの、この1週間の自分の成長を感じましたね…日本号、ばみちゃん、まんばちゃん、陸奥、伽羅、宗三。伽羅ちゃんだけは衣装の特徴が少ないからちょっと戸惑ったけど、それでも2秒でわかりましたよ…ほかのみんなは簡単だし。
ところでこのばみちゃんはどっちなの!?それともどっちだろうと意味はないのか???

しかしね、朝尊は「別の本丸の刀剣男士かも」とか言ってたけど、だったらこのステ本丸に出陣経験のあるメンバーだけで揃うのは不自然なんだよなあ…たとえばミュ本丸のように、メンバーが全然違う本丸もいるわけで。やっぱり同一本丸の別時間軸では…?


まとめるまでかなり時間経っちゃいましたけど、やっぱりメモを見るとすぐに思い出せますね…
あとストリーミングじゃなくてダウンロード購入したので、これ書きながら少し気になるところは見返せたりしたのも良きでした。円盤も気になるけどひとまずこのセールで全部揃えます。
ここまで読んでいただいた方、ありがとうございました。

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