電気のおはなしその54・交流の性質(6)sin波形の位相
sin・cos・tanについて一通りお話をしたところで、次は位相(位相差)についての話をしますよ。
では、質問です。
ここに、交流100Vの電源が2つあります。この2つの電源を直列につないだら、合計何ボルトになるでしょうか。
(シンキングタイム・スタート)
「そりゃー200Vに決まってるでしょ」と思われたかと思うんですが、実は違うんです。答えは、「200Vから0Vまでのいずれかの電圧」になります。
と思われても仕方がないです。だって、直流の100Vを2つ直列にすれば200Vに決まってますもの。
さて、一体どういうことなのか見ていきましょう。
交流100Vの電源の波形を、それぞれVaとVbとします。
このように、VaとVbが全く同じ形の波形であれば、これらを直列にしたときは
このようになり、100+100=200Vの電圧になります。
では、VaとVbが次のような形の波形だったらどうでしょう?
Vaが0Vの瞬間、Vbも0Vなので合計電圧は0Vです。
Vaが、例えば+50Vの瞬間、Vbは-50V。90Vの瞬間は-90V。このように、VaとVbは常にプラスマイナス打ち消しあいますから、合計の電圧は常にゼロです。
それじゃあ、次のような場合はどうでしょうか?
VaとVbは、中途半端に波形のタイミングがずれていますね。これらを直列にした場合、次のような合成電圧になります。
この値を計算すると、約141Vになることが求まります。このように、VaとVbの波形が時間的にどの位ずれているかによって、合計電圧は変わってくるという性質を持っています。
改めて冒頭の条件に戻ると、これは「交流100Vの電源が2つあり、それらを直列に接続した場合の合成電圧」だったはずです。これから分かることは、
ということで、この「波形のタイミング」のことを位相と呼びます。
では、sin波形のタイミング、もとい、sin波形の位相はどのように表現すればよろしいのでしょうか?
ここで、そもそもsin波形とはどこから来たのか?と思い出してみてください。sin波形は、
でした。そこで、あるタイミングにおいて、VaとVbを示す点が円周上のどこになるのかを、円周上の点の位置で表せばOK!となるわけです。改めて図にしてみると、最初の例は、
となって、VaもVbも同じ位置になります。
二つ目の例は、
このように、VaとVbは円周上の真反対に位置していることが分かります。
最後の例は、
このように、Vaがスタート地点(y=0)にあるタイミングを基準にすると、Vbはちょうど+90°の地点にあることが分かります。
このように、交流の波形を考えるときは、必ずそのタイミング(位相)を考えないことには正しい答えが出ないよ、ということがお分かりいただけたでしょうか。次回はいよいよ、電気を勉強している人の多くが挫折する「交流のベクトル」について書いていきたいと思いますよ。
以上。