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電気のおはなしその68・三相交流(2)三相Δ結線
三相Y結線とくれば、次は三相Δ結線ですね。
三相Δ結線も、3個の単相電源と3個の負荷を合計6本の線で接続した回路からスタートします。
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Y結線では、1本を共通線にして合計4本にする→各回路の位相差を付けることによって共通線の合成電流をゼロにする→電流がゼロなので取り外せる、という理屈で3線にしていました。しかし、Δ結線は、次のように線を共通化します。
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ちょっと分かりにくいかもしれないので説明しますね。
3つの単相交流回路 a b c があります。回路 a と b 、b とc 、 c と a 、それぞれ隣り合うように線を共通化します。上の図で青く描いた部分が共通線で、一番上の共通線に流れる電流は回路 a と 回路 c の差の電流、二番目の共通線に流れる電流は回路 b と 回路 a の差の電流、三番目の共通線に流れる電流は回路 c と 回路 b の差の電流です。いずれも、隣り合う相の「差」の電流が流れるという所がポイントです。(これが分からないと、電験3種などの試験で三相交流の性質を云々するとき理解できなくなります)
Y結線の場合は、共通線は全ての相の合計電流が流れましたが、Δ結線では隣り合う2相の差の電流が流れる線が3本で構成されるわけですね。この回路を、良くある描き方に直すと次のようになります。
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さて、これを見た俺氏(当時小学生)。
(; ・`д・´)<え?これじゃ電源ショートしちゃうんじゃないの?
…そう、電源が3個、リング状に接続されているじゃないですか。もし乾電池でこんな回路を組んだら、
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こうやって短絡してしまいます罠。
それが長年疑問だったのですが、大人になって分かりました。これも、120度ずつ位相をずらせば、3つの電源の電圧の和がゼロとなり、短絡電流が流れない訳なんですね。これは、交流で、かつ同電圧・120度ずつの位相差だからこそできることです。一応ベクトル図を描くと、
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こうなりますね。
このΔ結線は、三相の和がゼロにならない高調波成分や雑音などが還流して消えてくれるというメリットがあるほか、三相負荷が不平衡となっても相電圧が不平衡にならない(線に流れる電流は不平衡になりますが、これはさほど大きな問題にはならない)などの利点がありますが、電圧的な中性点が存在しないため、どれか1線を接地するとか、いっそのこと非接地方式にするかという選択肢しかありません。したがって、変圧器の鉄心と巻線の間には、Y結線よりも高い電圧が掛かってしまい、絶縁性能に注意する必要がある、などの欠点もあります。
次回は、実際的に良く用いられているV結線と、各々の結線方法のベクトル図でも描いてみましょうかね。
それでは。
以上。