電気のおはなしその35・各種のダイオード(3)
当初、ダイオードの話は1回だけで終わりにする/終わりになるだろうと思っていたのですが、書き始めたら書くこといっぱいありますね。
というわけでもう一回だけダイオード行こうかなと思ってます。
ガンダイオード
ガンダイオードの「ガン」というのは、別に鉄砲のことでも病気のことでもありません(水鳥の名前でもありません)。ガン効果を発見した人物の名前から取られています。
ガンダイオードは、ガリウムひ素で作られたN型半導体に電圧を加えたとき、負性抵抗特性(トンネルダイオード/エサキダイオードと同じですね。電圧を上げたのに電流が減少する特性のことです)によって発振が起こり、それによって極めて高い周波数のマイクロ波を直接得られる、という素子です。普通の発振回路でマイクロ波を直接発振させるというのは難しいのですが、ガンダイオードを使えば非常に容易にマイクロ波を得ることができます。筆者も何本か持っていたのですが、どこかに行っちゃいました。
定電流ダイオード
秋葉原の部品店などに行くと、「定電流ダイオード」として電圧にかかわらず一定の電流が流れる部品を販売しています。外観も普通のダイオードと変わりません。
しかしこれは、狭義のダイオードからは外れる製品で、実は内部にFETが入っていて、FETのゲートとソースを直結することでIDSSをそのまま出力するという部品です。FETのIDSSは、ドレインーソース間電圧に関わらずほぼ一定になるので、これを利用して定電流素子として用いたものです。
実際に電子回路を設計してみると分かるのですが、従来から存在している抵抗・ダイオード・トランジスタなどを組み合わせて定電流を得る回路を作るには多数の(という程ではないんですが、それでも幾つかの)部品が必要です。また、定電流ダイオードと同様、FETを選別して利用することもできるのですが、今度は多数のFETから電流を実測して選別するという手間がかかります。そこに目を付け、従来のダイオードと同様のパッケージで手軽に定電流特性を得ることができる、というのは確かになるほど良く考えたなぁ、という感じですね。
二極真空管
半導体で「何々ダイオード」と称するものは、これまでに挙げたものの他にも幾つかあるのですが、細かく掘り下げるのはこの位にして、最後にオマケ?として「ダイオード」という名称の元となった二極真空管を取り上げます。
真空管は、熱電子放出現象を利用した素子です。詳しい話は次回以降してみようと思っていますが、白熱電球のフィラメントと同じ原理で加熱された電極から、その熱運動によって電子が真空空間に放出される現象を利用しています。この電極をカソードもしくはフィラメントと呼びます。
加熱によって真空中に放出された電子は、真空中に置かれたもう一方の金属電極に向かって飛んでいきます。この電極をプレートと呼んでいます。
プレートは加熱されていないため、飛んできた電子を吸収することはあってもプレートから電子が飛び出すということはありません。これにより、プレートからカソードもしくはフィラメントに向かう一方向のみ電流が流れる、という整流素子として利用することができるものです。
この現象は「エジソン効果」と呼ばれ、その名のとおり発明王のエジソンによって発見された現象です。残念ながら?エジソンはこの現象が世紀の大発見であることには気付いておらず、その後真空中の電子効果の研究を進めたフレミングによって「真空管」として花開くことになります。
この、真空中の熱電子放出という現象、さらにはグリッドなどの電極を追加した場合に増幅効果が起こるという現象、これによって20世紀の科学の時代が始まりました。フレミングの二極真空管の発明が1904年、そしてトランジスタの発明が1948年ですから、20世紀前半の半世紀は真空管の時代でした。
また長々と書いてしまいました。次は真空管の話にいってみたいと思いますよ。
以上。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?