電気のおはなしその10・作用反作用の法則、重力加速度、エネルギーなどについて(補足編)
今回は、これまで話してきた内容の補足となります。
①作用反作用の法則は、物体が接触している場合に限り成立するのか?
作用反作用の法則のところで、「物体同士が接触して力を及ぼし合っている、でも物体が中に入っていかないということは、作用反作用の法則が成立しているから」というようなことを書きました。その後、重力場の話で、
という話をしました。
では、作用反作用の法則は、重力場に存在している物体には関係ないのでしょうか?というと、実は
のです。これを含めて作用反作用の法則なんですね。
一例を挙げると、人間が地球の重力に引っ張られて地球表面に存在していますが、それは同時に、人間が地球を引っ張っていることになるんです。
運動方程式が示すように、加速度は質量に比例しますから、地球が人間を引っ張る加速度と、人間が地球を引っ張る加速度は、人間の質量と地球の質量の比に反比例するため、事実上地球に加速度が発生する大きさはゼロです。そのため、「人間が地球に引っ張られて加速する」現象しか見えていないだけなのですね。
②重力加速度g=9.8とは何か
電験3種の勉強をしているときなど、水力発電所で水が持っている位置エネルギーを電気エネルギーに変換する場合の公式として9.8QHηとか出てきます。また、高校などでの力学の勉強で、位置エネルギーはmghで、g=9.8と言われます。
では、この「重力加速度g=9.8」っていうのは何なのでしょうか。
答えを言うと、
ということなのです。これまでに書いてきたとおり、「1kgの物体」というのは、人間がちょうど良さそうなオモリを「これを1kgということにしよう。」と決めただけですし、速度や加速度の定義の基になっている時間とか距離も、一日の長さを24時間と決めたり、地球一周を4万kmと人間が決めただけのことですから、その「人間がテキトーに決めた値どうしの整合性を取るための値」が「9.8」だった、というだけのことなのです。
③位置エネルギーの定義式がmghなのはなぜか
「電気のおはなしその9・力と仕事」で書きましたように、
と定義されていました。この「仕事」の値というのは、エネルギーと基本的には同じものだという話もしたかと思います。
さて、質量m[kg]の物体を、h[m]の高さから落下させたとします。落下した点に、例えば受けた衝撃を100%電気に変換できる装置とか、受けた衝撃を100%熱に変えることができる装置なんかが置いてあったとします。では、どれだけの電気エネルギーや熱エネルギーが得られるかというと、
物体を地球が引っ張る力は、落下中ずっと9.8m[N]
落下距離はh[m]
ということから、仕事の値はm×9.8×hで求められます。つまり、㎎hという式で表されるわけです。これが、「質量mキログラムの物体を、地球の重力が働いている空間で、高さhメートルから落下させたときに得られる仕事の値」です。
④ほかのエネルギーとの関連性は?
エネルギーは、位置エネルギーのほかに運動エネルギー、電気エネルギー、波動エネルギー、核エネルギー、熱エネルギーなどなど様々なものが定義されています。これらの関連性については、ここで書くと長くなってしまいますので別のページに分けたいと思いますが、共通しているのは、物理学的な「仕事」の概念です。要は、熱エネルギーであれば熱、電気エネルギーであれば電気、核エネルギーであれば核分裂によって発生する熱などを、例えば発電機のような何らかの変換装置を使って物理学的な「力×距離」に変換すれば、どのくらいの大きさになるか、という値ということになります。
さて、だいぶ長くなりましたので今回はこの辺にしましょう。
エネルギーの詳しい話もそうだけど、仕事についてもベクトルの概念を導入して詳細の話をしないといけないなぁ。書くこといっぱい。
以上。