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電気のおはなしその16・交流は交流。直流も交流。ぜんぶ交流。

オームの法則をはじめとした電気回路の話に入っていく前に、直流と交流についての話をしておくことにします。
直流というのは、

電圧や電流の値が一定でずっと変わらない電気

とされています。例えば、乾電池などがその代表例ですね。電気回路の勉強のとき、最初は必ず直流回路から話が始まっていくかと思います。
それに対して、交流は、

電圧や電流の値が変化する電気

と教わったかと思います。直流と交流の大きな違いとして、

直流…どの瞬間でも電圧や電流などの大きさが変わらない。
交流…タイミングによって電圧や電流などの大きさが違う。

という点が挙げられますね。

さて。ここからちょっと屁理屈を展開してみます。

直流電源の代表例である乾電池は、常に一定の電圧を発生しているから直流ということになっていますが、その乾電池が製造される前は電圧は無かったのではないでしょうか?また、目の前の電池が10年後、100年後、1000年後…にも同じ電圧を保っていられるのでしょうか?

…もちろん乾電池が製造される前はゼロVだし、何年何十年と経てば、電池は劣化してこれも消滅するはずです。すると、「時間によって電圧が変化」していることになりますよね?その「時間」が10年とか100年と長いだけで。

…というわけで、実は世の中に本当の意味の直流っていうのは存在しません。目の前の乾電池だって、使用すれば消耗して電圧が変化しますし、乾電池が製造される前から電圧があったわけありません。

図1・直流は交流のうちの一部である

そう考えると、直流というのは存在せず、すべてが交流ということになります。

では、直流って一体何なのでしょうか?それは、

目の前で観測している短い時間の間に限っては、変化していないと思っても差し支えない電気

のことを直流と呼んでいます。交流を考えるときは、電圧・電流のほかに時間(タイミング)を考えなければいけませんが、時間やタイミングを考えなくてよいとすれば、非常に単純に回路を考えることができるようになります。そこで、観測している短い時間に限って理想化したものが直流なのです。

逆に言うと、ある程度長い時間観測していたり、コンセントに来ている50ヘルツや60ヘルツの電気などを考えるときは、時間やタイミングを考えずに論じることはできません。また、情報というのは時間変化、つまり交流ですから、情報伝送理論(電話などをはじめとした有線通信、無線通信、もちろんインターネットや光ファイバ、携帯電話など全て)を考える際も、必ず交流の理論が必要となります。

電気の勉強をしている人に話を聞くと、直流回路や抵抗の接続回路などは何とかクリアしたものの、交流に入って挫折してしまったという人を多く見かけます。その理由は、そもそも交流というのは何なのか、交流を考えるにあたって何に注目すべきか、という点が良く分からないままにベクトルなどをむりやり覚えようとして破綻していることが多いように思えますので、ゆっくりと順番に分かりやすく話をしていきたいと思っていますよ。

有名なオームの法則

V=IR

は、電圧・電流・抵抗の3つの値の関係を示す式ですが、交流の場合、測定するタイミングで値が色々変わるはずなのに、オームの法則の中には時間tの値は含まれていませんよね。そこで、それを何とかするために虚数が出てくるんですが、それはまた、交流の理論のときに改めてお話したいと思います。虚数とか複素数なんていうと、高校の数学の時間に、こんなの何の役に立つんだか全く意味ぷーな状態で暗記させられ、それで嫌になった人も多いかと思いますが、実は大して難しい話じゃないんです。その辺はまた、あとで。

以上。

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