見出し画像

電気のおはなしその77・デシベル(dB)計算

電気通信の世界では、信号の電圧などをボルトやワットで表すほかに、デシベル(dB)という単位を良く用います。この「デシベル」という単位自体は、騒音の大きさやタイヤの銘柄などで大抵の人は耳にしたことがあると思うのですが、じゃあその「デシベル」なる単位は一体何なのか?というと良く分からないと思います。そこで、電気通信の世界に欠かすことのできない「デシベル」についてお話したいと思いますよ。

デシベル=デシ+ベル

「デシベル」というのは、実は「デシ」+「ベル」に分かれます。「デシ」というのは、小学校の理科で習った「1デシリットル」の「デシ」です。

1リットル=10デシリットル
つまり、「デシ」は10の-1乗(10分の1)を表す値。

では、「ベル」の方は一体何なのでしょうか。
これは、

2つの値を比較して倍数を求め、それが10の何乗に当たるか?を求めた値

を意味します。なお、電気通信の世界では「2つの値」=「2つの電力の値」としますので、これを基にして例示してみます。

デシベル計算の具体例

入力に1Wを与えると、出力が10Wとなる増幅回路。
倍数を求めると10倍。10倍は10の1乗なので、この回路の増幅度は1ベル。デシベル値にすると、10デシベル。

入力に0.5Wを与えると、出力が500Wとなる増幅回路。
倍数を求めると1000倍。1000倍は10の3乗なので、この回路の増幅度は3ベル。デシベル値にすると、30デシベル。

入力に100Wを与えると、出力が0.01Wになる減衰回路。
倍数を求めると10000分の1倍。10000分の1は10の-4乗なので、この回路の減衰度は-4ベル。デシベル値にすると、-40デシベル。

こんな感じで、大体イメージが掴めましたでしょうか。要は、倍数がゼロの何乗になるかを求めて、その値をさらに10倍したものがデシベルです。
計算に慣れるためには、身近な例で例えればよいでしょう。例えば、財布の中に1万円があって、買い物の結果1000円に減ってしまったら「-10dB」ですし、万馬券を当てて100円が10000円になったら「+20dB」です。

半端な倍数のデシベル値

「10倍」「100倍」「1000倍」とか「100分の1」「100000分の1」などのデシベル値はすぐに分かりますが、2倍とか5倍とかの中途半端な倍数の場合は、どう計算すればよいでしょうか…?
これは、対数表を使って求めることができます。しかし、事実上、

2倍=3dB
10倍=10dB

だけを知っていれば、ほとんどの場合求めることができます。

半端な倍数のデシベル計算の具体例

5倍は何dBか?
5倍=10倍×1/2倍なので、10dB-3dB=7dB。

20倍は何dBか?
20倍=10倍×2倍なので、10dB+3dB=13dB。

250分の1は何dBか?
1/250=(1000分の1)×2倍×2倍なので、-30dB+3dB+3dB=-24dB。

このように、値が大きくなる場合は+のdB値、小さくなる場合は-のdB値になりますので、うまく組み合わせれば大抵の倍数は求めることができます。

デシベルを使う理由

最後に、デシベルを使う理由について。
計算の具体例でも書いたように、実際の値(真数値)で掛け算や割り算になる計算が、デシベルを使えば足し算や引き算で表すことができるからです。また、扱う数字自体を小さく(桁数を小さく)することができるのも理由です。例えば、1000000000倍の増幅器があったとすると、増幅度を進数で表せば10桁になりますが、dBで表せば+90dBと2桁で済みます。

相対デシベル値と絶対デシベル値

ここまで書いた通り、デシベル計算はあくまで「倍数」を表すものですから、「1Wの電力は何dB?」と言われても、1W基準なら0dB、1mW基準なら+30dB、10W基準なら-10dBになります。
そこで、暗黙のうちにある電力(例えば1Wとか1mW)に対するデシベル値で電力を表したものを絶対デシベルと言い、1W基準であればdBW、1mW基準ならdBm、1μW基準ならdBμのように表現します。

書きながら美味しいワインを飲んで良い感じに酔ったので、この辺で終わりにしますね。

以上。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?