見出し画像

電気のおはなしその65・クーロン力とローレンツ力&ブラウン管TVの原理

電気のおはなしその11・クーロンの法則と電場(電界)の定義で、電荷どうしが受けるクーロン力について難しい式をほとんど使うことなく話してみました。極力定性的な説明をしようとしたあまり、ちょっと分かりにくい感じになってしまったかな、と思わなくもないですが…。

改めてクーロン力についてまとめると、

・クーロン力は、電荷どうしが及ぼしあう力である。
・力の向きは、吸引もしくは反発力である。
・力の大きさは、互いの電荷量の積に比例し、距離の2乗に反比例する。
・力の大きさはまた、電荷の周囲の物質にもよる。その定数をεとする。

ということで、式で表すと、

式1・クーロン力の式

となりました。
ところで、このクーロン力は「反発もしくは吸引」ですから、点電荷どうしを結ぶ直線方向に働く力です。つまり、2つの点電荷が乗った平面、二次元で表せる力でした。
それに対して、フレミングの左手の法則で表される力は、

図1・フレミングの左手の法則

このように、三次元で表されます。
これを式で表すと、磁束密度Bの中を電荷Qが速度vで移動する場合、この電荷Qが受ける力Fは、

式2・ローレンツ力の式

という式で求めることができます。この式の中にある「×」は、一般的な算数の掛け算ではなく、ベクトルどうしの掛け算、それも外積という計算になります。これを図示すると、次のようになります。

図2・ベクトルの外積の定義

このように、空間を移動する電荷に対しては、別の電荷を近づけることでその電荷に吸引もしくは反発する方向に力を与えることができ、また、別の磁荷を近づけることで、磁界の向きと電荷が移動する向きの両方に対して直角な方向に力を与えることができる、ということになります。

これらの力を利用したものが、昔のブラウン管式TVです。

図3・ブラウン管の原理

ブラウン管は、電子ビームを出し続けるカソードがあり。そこから飛び出してきた電子に対してまず電界を掛けて上下方向に力を与えます
次に磁界領域を通すことで左右方向に力を与えます

ブラウン管式オシロスコープなどでは、水平方向・垂直方向の両方ともに電界でコントロールしているものもあります。

このようにして軌道をコントロールされた電子は、ブラウン管の蛍光面に当たり、その点の蛍光物質を光らせることで、画面上に輝点として現れます。
したがって、昔のブラウン管式TVというのは、ひたすら自分に向かってくる電子ビームを真正面から受け続けるというシロモノだったのですね。(もちろん蛍光物質で可視光に変換してはいますが)

40代以上の方は、昔のTVって傍で聞き耳を立てると「ジー」という雑音が聞こえたのを覚えている方もいるかと思いますが、あれは強力な電子銃を作り出すための高圧電圧(だいたい新幹線の架線電圧を同じくらいの値です)を作る回路や、強力な磁界を作って電子ビームを左右に振るためのコイルあたりが振動することで聞こえる音だったわけです。なお、20kV程度以上の高電圧を発生させていますから、内部では微弱ながらエックス線も放出されていました。一応、外に漏れないように鉄板でシールドはされていましたが。

それに比べると、今の液晶モニターは面全体が光る方式ですから、目に与える負荷もだいぶ変わりましたね。昔のテレビ画面は、目が疲れると激しくチラチラして見えたものですが、それもそのはず、ある瞬間に点灯しているのは画面上の1点でしかなく、それを高速で上下左右に振って光らせていましたからね。

ローレンツ力のベクトル演算とか、電磁波を論理的に定義するマクスウェル方程式などは、国家試験でいえば電験2種や陸上無線技術士あたりのレベルになるかと思います。また、電気系の学生さんであれば、大学の専門課程に入って必ず習う電磁気学での必修内容になりますね。

そうそう、電気回路学や電磁気学、電子回路学などであれば、理系の学生さん向けの家庭教師も出来ますよ~!などと宣伝してみつつも、じゃあもし依頼があったとしてそんな時間が取れるのかという話になってしまいます…。
一応、昔、薬学部の学生さん向けに物理化学の家庭教師的な仕事をしたことはありますけどね。

おおっと。今日はこの辺にしておきましょう。

以上。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?