電気のおはなしその33・各種のダイオード(1)
P型半導体とN型半導体を接合することで作られるダイオードですが、研究者たちが実験や研究を重ね、様々な種類のものが作成されました。今回は、種々のダイオードについて幾つかを取り上げてみたいと思います。
一般用ダイオード
前回お話ししたような、P型→N型と一方向にのみ電流が流れることを利用するもので、細分すると整流用ダイオードとスイッチング用(小信号用)ダイオードに分けることができます。
整流用ダイオードは、その名の通り交流から直流を取り出すために使うもので、
電流容量が大きい(大きな電流を流すことができる)
逆方向耐圧が高い(大きな逆方向電圧に耐えることができる)
という特徴があります。具体的に言えば、電流容量数アンペア、逆方向耐圧数百ボルト、といったレベルのものが一本数十円~で市販されています。
スイッチング用ダイオードは、直流電流と交流電流(信号電流)を重畳してダイオードに流すことにより、交流信号をスイッチするような用途として用いるものです。電流容量は数ミリアンペア~数十ミリアンペア、逆方向耐圧は数十ボルト程度の製品が一本10円~程度で市販されています。
小信号用ダイオードのうち、特にゲルマニウムで作られたものやショットキー接合(半導体と金属との接合)で作られたダイオードで、検波用という製品もあります。これは、交流の小さな信号から+側もしくは-側のみを取り出すことで、高周波信号に重畳された低周波信号を取り出す、つまり検波用として作られたものです。一本数十円~程度です。
発光ダイオード
照明用として広く一般に使われるようになったLEDのことです。LEDは、Light Emitting Diodeの略です。
LEDは、P型半導体とN型半導体の間の空乏層を広くし、そこに順方向電流を流すときに発生する光を外部に取り出せる構造として作ったものです。
前回、
と書きました。
空乏層を電子が乗り越える際、電子は持っているエネルギーを放出するのですが、空乏層の厚み(バンドギャップと呼びます)を適切な値にすることにより、このエネルギーから可視光を放出させることができます。その辺りの論理的な計算は量子力学の分野になってしまいますが、赤色LEDで約2ボルト程度、青色LEDだと3ボルト強程度の値になります。
光の三原色である青色を発光するLEDの発明者にノーベル賞が与えられたことは記憶に新しいですが、何故青色LEDをなかなか作ることができなかったかというと、青色光を発するのに対応したバンドギャップを持つ半導体材料をなかなか作ることができなかったからなのです。気体である窒素を取り込んだ半導体材料を作れば青色が出ることは論理的に分かってはいたのですが、窒素を上手く半導体に取り込む手法が無かったんですね。
白熱電球は高温になったフィラメントからの光放射、蛍光灯は水銀分子と電子が衝突することによるエネルギー放射によって発光しますが、LEDは電子が持っているエネルギーが光に変換されます。蛍光灯とLEDの発光原理は比較的近いのですが、近年は蛍光灯を超える発光効率のLEDも開発されていますから、今後ますますLEDが主流になっていくことでしょう。(この辺は、電気機器論でも取り上げたい話ですね)
エサキダイオード
江崎玲於奈が発明したダイオードで、トンネルダイオードとも呼ばれます。何故トンネルかというと、量子力学のトンネル効果を利用しているからです。
このダイオードは、P型・N型半導体を作るときに添加するドナーやアクセプタの濃度を非常に高くして作成されたもので、順方向電圧を加えたさい、電圧を上げると電流が減少するという特性を持つ領域がある、という性質を持っています。これが何故重要なのかというと、いわゆる普通の抵抗は電圧と電流が比例し、常に電力を消費するという性質を持っていますが、これとは逆の特性を持つということは、電力を生み出す、つまり増幅作用を持っているということが言えるわけです。これを負性抵抗特性と呼んでいます。
負性抵抗特性、つまり増幅特性を持つことから、エサキダイオード一本の外部に同調回路などを置くだけで、極めて簡単な回路で発振回路を作ることができるようになります。
これを利用した高周波発振回路やスイッチング回路などへの応用が期待されたデバイスでしたが、より汎用的に応用が利くトランジスタの性能向上により、それほど使われずに終わったデバイスでもありました。
書き始めたら思ったより長くなってしまったので、分割しますね。次は定電圧ダイオードあたりから行きましょう。
以上。