電気のおはなしその48・コンデンサー(3)コンデンサーの過渡現象に関する重要問題演習
というわけで、コンデンサーの過渡現象を国家試験の問題に落とし込んだ例をピックアップして見ていくことにしますよ。
電験3種の2015(H27)年、理論の問10です。
まず最初に、RL直列回路・RC直列回路ともに、スイッチSをONにした瞬間以降は必ず
の関係が成立していることが分かりますね。これは、コイルやコンデンサーの過渡現象云々以前の話です。また、回路に流れる電流 i と、抵抗の両端に発生する電圧vrの関係は、
ですから、回路電流 i の形とvrの形は相似形でないとおかしいです。
選択肢(1)~(5)の波形を見ると、どれを選んでも以上の条件①②を満たしていることが見て取れるかと思います。
ではいよいよ、コイルやコンデンサーの挙動について見ていきます。
まずコイルですが、電気のおはなしその44に書いたとおり、
と書きました。つまり、スイッチSをONにした瞬間の回路電流はゼロのはずです。選択肢(4)と(5)はこの時点で脱落です。
また、スイッチSをONにした瞬間の回路電流はゼロであり、このとき抵抗の両端には電圧が発生しませんから、スイッチSをONにした瞬間のコイルの両端に発生する電圧はEとなるはずです。したがって、選択肢(3)は誤りです。
次にコンデンサーの挙動です。前回書いたとおり、コンデンサーの性質はコイルと真逆で、電荷が溜まっていない状態から電圧を掛けた瞬間、極板間電圧はゼロであり全力で電流を流し込む働きをします。しかし、電流が流れ込んだ結果として極板間電圧が上昇していく、という性質を持っていました。したがって、この回路でスイッチSをONにした瞬間、コンデンサーの極板間電圧vcはゼロで、回路に流れる電流はE/Rとなります。これに合致する選択肢は(2)で、これが正解だと分かります。
もう一問いってみましょう。上記の問題の1年前、2014(H26)年の電験3種、理論問11の問題です。
コイルのお話でもちょっと出てきましたが、「時定数」というのは過渡現象の持続時間の長さを表す値で、コンデンサーと抵抗の直列回路の場合、静電容量が大きいほど極板間電圧が上昇するために必要な電荷量が多くなり、また抵抗値が大きいほど電流が小さくなり、やはり極板間電圧が上昇するために掛かる時間が長くなりますから、時定数τは
つまり、ただ単純に抵抗値とコンデンサーの静電容量を掛けただけの値になります。とっても分かりやすいですね。
さて問題に戻ります。時刻t=t1の段階でスイッチS1のみがONになりますから、これは左側の電池EによってコンデンサーCが充電されていくだけの回路になります。もう説明は省略できるように、時刻t=t1からt2に至るまでは、選択肢(1)~(5)のいずれも、正しい波形を描いています。
さて、時刻t=t2になった瞬間、今度は右側の電池Eが接続されることになりますが、右側の電池によってコンデンサーに電流が流れ込み、その電流がゼロになるまで時間が経過した結果、最終的にコンデンサーに発生している電圧は、回路に記された電圧vの定義より、-Eに落ち着くことが分かります。これを満たす選択肢は(4)であることが分かります。
では最後に、コンデンサーの過渡現象を利用した問題として、電験3種の2010(H22)年の理論問10を置いておきますね。
この問題の考え方ですが、スイッチSを入れた瞬間はコンデンサーが全力で電流を流しますから、R1と(R2とR3の並列)の直列回路と考えることができます。十分時間が経ち定常状態になると、コンデンサーには電流が流れなくなりますから、回路全体としてはR1とR2の直列回路と考えることができます。この値を1:2とするように合成抵抗値を求める連立方程式を立て、それを解くことで答えを求めるという問題でした。
以上。