電気のおはなしその55・交流の性質(7)円を省略するためのベクトル
前回、
というお話をしました。100Vの交流電源VaとVbを直列にしたらどうなるでしょう?という例題も、「位相差が分からないと求められません」というのが正解でした。
そこで、VaとVbの波形を円周上の点を用いて表現してみました。
この波形二つを直列合成すると、その結果は
こんな形の波形になりました。
さて。
交流波形を表現する場合、このようにいつも円を描いていれば位相が分かりやすいのですが、円を描くのはスペースが必要なので、何とか円を省略することができないか?という話になります。
円を省略する…。
どうすれば、円を描かなくとも、「この波形は、円周上のこの点から回転するんだよ」ということを伝えられるでしょうか。
はい。
答えは、
ということになります。この二つがあれば、
このように、円を復元して描くことができるようになります。
電気のおはなしその12・スカラーとベクトル、ベクトルの和と差の計算の回で、「ベクトルって何?」ということを書きましたけど、今回のように「円の中心と円周上の点を結ぶ矢印」も立派なベクトルです。
…はい、そうなんです。
交流のベクトルというのは、
だったわけです。この基本を理解しないまま、「コンデンサーは上向き」「コイルは下向き」とやるから意味が分からなくなるわけですね。
それじゃ、いくつか例題を出して練習してみましょう。
まずは簡単な例から。
このVaとVbをそれぞれベクトルで表してください。
…これはすぐ分かりますね。
こうなります。
なお、別にベクトルを2本に分ける必要はなく、ひとつの図の上に重ねて表現することができますから、
このように重なったベクトルで表現してもかまいません。
ところで、
この図のように、①や②、③のタイミングを使ってベクトルを描く、すなわち
こんなベクトルを描いちゃいけないの?という疑問があるかもしれませんが、実はこれらのベクトルはどれも正解です。これでもOKです。
ただし、何か基準がないと分かりにくくなってしまうので、電源電圧とか負荷の電圧とか、あるいは電源の電流など、何か基準になるベクトルを基準(右向き)として表現する、というのが暗黙の了解になっています。
では、次の波形をベクトルにするとどうでしょう?
もう分かりますね。正解は、
このようになります。ひとつの図にすると、
こんな感じですね。(手描きなので斜めになってますが、Vaが真右、Vbが真左です…)
では、次の場合は
ベクトルだとこうなります。
以上で、交流波形のベクトル図が一体何を表現しているのか、ということがお分かりいただけたかと思います。次回は、これらの電圧などを直列にした場合、合成電圧などをどうやって求めるのか?という核心部分についてお話しますね。
以上。
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