電気のおはなしその80・実効値
我々が発電所から延々電線を引き、日常生活の隅々まで電気を引いてきているのは、いったい何のためでしょうか?
「エジソンが電球を発明」した頃は、光を得るために電気を利用しました。アルコールや油などを用いた光(ランプ)はあったものの、燃料補給が不要で、排気ガスも出さず、そして何時間でも連続して点灯し続ける明かりが得られるというのは、極めて画期的なことでした。そして、各種電動機の利用により、機械力としての電気の利用も広がりました。
…という「電気利用の歴史」的な話はこれまでもしてきましたが、今回の話は「実効値って何?」という内容です。
エジソンは直流送電にこだわりました。一方、テスラは交流送電を推し進め、結局交流送電が勝ち残って現在に至っています。直流は時間によって電圧や電流が変わらない電気、交流はプラスマイナスが周期的に入れ替わる電気です。光や動力として電気エネルギーを利用する場合、その尺度は、御存じのように電圧×電流で計算される「電力」で求めることができます。
ここで、直流電力と交流電力について考えます。
直流は、ずーっと電力が発生しっぱなしです。100Vで5Aの電流が流れていれば、100×5=500Wの電力が連続して得られます。
ところが、最大値が100Vで最大値が5Aの交流電力が流れ込んでいる負荷に発生する電力は、直流と同じように考えることは出来ません。電圧・電流がプラスのときは電力が発生しますが、電圧・電流がゼロの瞬間の電力はゼロです。電圧・電流がマイナスのときは、マイナス×マイナス=プラスとなるためやはり電力が発生、しかし電圧・電流がゼロになって電力がゼロ…をひたすら繰り返します。したがって、
ことが分かります。
しかし、これは不都合です。何故なら、人間は電圧や電流が欲しいために電気を引いているのではなく、電力を得るために電気を引いています。ということは、「直流の100V・5Aを消費して得られる電力と全く同じ電力が得られる交流の電圧や電流を、100Vや5Aと定義したほうがうれしい」わけです。このような尺度で決定された交流の電圧や電流を、「実」際に「効」力が得られる「値」ということで「実効値」と呼んでいます。
では、正弦波交流で「直流100V・5A」と同じ電力が得られる値が幾らになるかというと、これは電圧・電流ともに、最大値が直流の値の√2倍であると数学的に求められています。したがって、最大値が141Vの電圧を「交流100V」と呼ぶことにし、最大値が7.05Aの電流を「交流5A」と呼ぶことにしています。
家庭のコンセントに来ている交流100Vの電気は、「交流の実効値100V」の電気ですから、実は最大値は141Vもあるんですね。コンセントに来ている交流を、ダイオードを使って直流に変換するさい、交流波形のピーク電圧をコンデンサに充電して直流化して出力する回路となるため、
という面白い?現象が起こるわけです。
今回はこの辺で。
以上。
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