電気のおはなしその61・有効電力・無効電力・皮相電力・力率&無効率
前回と前々回、それぞれコンデンサーに交流を掛けた場合とコイルに交流を掛けた場合の挙動についてお話ししました。これらはいずれも、電源から電力は受け取るけど、受け取っただけそのまま投げ返してしまうという性質を持っていたため、人間の役に立つエネルギーを得ることはできない代物でした。そして、こういうのは無効電力と言って、嬉しくない存在だよーという話をしました。
いっぽう、電気のおはなしその57・抵抗と電力の関係の回では、抵抗は直流だろうが交流だろうが電力を消費して熱に変えてくれる、という話をしました。
それでは満を持して今回、抵抗とコイルまたはコンデンサー、もしくは抵抗・コイル・コンデンサーの全部が含まれた回路ではどうなるの?という話をしますね。
結論から言うと、
コイルもしくはコンデンサーに注ぎ込まれる電力を無効電力
抵抗で消費される電力を有効電力
有効電力と無効電力を合成した値を皮相電力
皮相電力に対する有効電力の割合を力率
皮相電力に対する無効電力の割合を無効率
と呼んでいます。
では、具体的な回路で見ていきましょう。回路で考えれば難しくないよ。
こんな交流回路があったとします。
まず、有効電力は、P=I^2Rで300Wとすぐに求まります。
無効電力も同じく、Q=I^2Xで400varと求まります。
皮相電力は、電源電圧×電源電流(位相差を考えずに、単に電源電圧と、電源から流れ込む電流を掛けたもの)で求まります。抵抗の両端の電圧は30V、コイルの両端の電圧は40Vであることはすぐに分かりますから、これらを合成したものが電源電圧となります。これはおなじみ、3:4:5の直角三角形ですから
50Vと求められます。つまり、電源電圧50V、電流10A、これらを掛けた皮相電力は500VAと求めることができます。
力率は「皮相電力に対する有効電力の割合」でしたから、300÷500=0.6。
無効率は「皮相電力に対する無効電力の割合」でしたから、400÷500=0.8。
( ゚Д゚)<以上。
…というわけで、簡単だったでしょう?そうでもない??
ではもう一問、今度は並列にした場合を行きましょうか。
はい。有効電力は、I^2Rから48Wですね。無効電力も同様にして、36var。ついでに、電源電圧は12Vということも分かりますね。
では、電源から流れ込む電流は幾らか?と考えると、これも3Aと4Aを三平方の定理を使い3:4:5に当てはめて、電源電流は5Aと求まります。
3A+4Aだから7Aじゃないの?と思った方は、良く復習してくださいね。
というわけで、電源から流れ込む皮相電力は、12×5=60VA。
有効電力が48Wなので、力率は48÷60=0.8。
無効率は、36÷60=0.6。
いかがでしょうか。同じ抵抗値、同じリアクタンス値のコイルを使っているのに、直列と並列では力率と無効率が逆転していますね。そして、電気工事士の受験テキストとか色々な本とかで「直列の場合の力率の公式」「並列の場合の力率の公式」なんかが書いてありますが、別にそんな公式を覚えなくても、
という原則だけを覚えておけば、並列でも直列でもなんでも求められるのでありました。この電力を求めるために使った式は、P=VIとかP=I^2Rとか、良く知っている式しか使っておりませんことよ。
というわけで、今日はこの辺で。
以上。