電気のおはなしその26・電池とはなにか
今回は真性半導体の話を書こうと思ったのですが、方針を変更して、電流のみなもとである「電池」とは何なのか?についてお話したいと思います。
「電池?そりゃあ、電流を流す元だよ」と言われればその通りですが、では乾電池や鉛バッテリー、太陽電池などは、どうやって「電流を流す力」を作り出しているのでしょうか。
まずは、もっとも身近にある、ふつうの乾電池について。
乾電池は、プラスの電極となる金属(実際は金属ではなく炭素棒だったりもしますが)と、マイナスの電極となる金属と、その間を埋める、電流が流れやすい液状物質である「電解質」という物質で出来ています。
ここで、電流とは何だったのかを今一度思い出してみます。
電流というのは、
のことでした。
金属というのは、導線に使われることからも分かるように、その内部に存在する電子が容易に流動する性質があり、そして金属自体が溶けることで、その際に電子を分離させるという性質があります。
「電子を放出した金属の原子」は、電子が不足となって相対的にプラスの電気を持つ状態になりますが、これをプラスイオンと呼んでいます。
では、このような金属棒を、電解質の中に挿入することを考えます。すると、金属が電解質のほうに溶け出していこうとすることが想像できるかと思います。
この、「金属が溶けることによって電子を分離させやすい度合い」は、金属によって異なります。ものすごく溶けやすく電子が出ていきやすい金属もあれば、そこまででもない金属もあります。全然溶けない金属もあります。
「ものすごく溶けやすい金属」の代表はリチウムとかナトリウムで、水の中に投入すればたちまち大爆発を起こすレベルで激しく反応します。
(; ・`д・´)<よいこはまねをしちゃいけません
(; ・`д・´)<もとい
(; ・`д・´)<よいこもわるいこも大人もみんな真似しちゃいけません
金属が溶けることで、金属のプラスイオンは電解液の方に流出し、残された電子が金属棒に取り残されます。したがって、この金属棒は
ことになります。この、「金属が溶けることによって電子を分離させやすい度合い」のことをイオン化傾向と呼んでいます。
では、この度合いが大きい金属と小さい金属の2種類を電解液の中に浸し、その金属棒の間を外部回路でつないだらどうなるでしょうか。
金属Aも金属Bも電解液に溶け出していこうとするものの、金属Aの方がその度合いが強いため、金属Aの中の電子が金属内に留まり、金属Aのイオンが電解液の方に移動して行くことが分かります。
このとき、
ということになります。これが電池の基本的な原理です。
最初に、
なんて書きましたが、マイナス極となる金属が電解液の方に溶け出し、溶けた金属が残していった電子を外部回路に流出させ、その電子がまた電解質に戻っていくことでループ電流が流れる経路が出来上がりさえすれば良いので、プラス極は金属ではなく炭素でもよいわけですね。
以上のように、乾電池というのは、金属棒が溶けて無くなっていくという化学現象を用いて電子を取り出していますから、必ず程度の寿命が来たら交換する必要が生じるんですね。
鉛バッテリーなどの充電可能な電池は、外部から電流を流しこむことで、いったん溶け出した金属がまた電流の作用によって再生し、放電時と同じ化学変化を起こすことが可能になるもの、と考えればよいでしょう。実際はそうんな単純な話ではありませんが、ものすごく大雑把に言って電流の流れる方向を変えれば可逆性がある化学変化を用いることで充放電を可能にしている、そう思っていただければ結構です。
太陽電池は大きく異なる原理で発電しています。本来的には半導体ダイオードの性質のところでお話することですが、化学変化ではなく、太陽光によって電子を大きく振動させ、その振動の勢いで箱の中から飛び上がってくる電子を別の箱でキャッチすることで移動させ、この飛び上がった高さの分だけの位置エネルギー(電圧)を外部に取り出せるようにしたもの、と思っていただければ結構かと思います。箱と箱の位置の高さの差をバンドギャップなんて呼びますが、その辺はまた別のところで話しましょうかね。
今日も朝から一日仕事で疲れましたよ。おやすみなさーい。
以上。