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電気のおはなしその58・電力と電力量

今回は、息抜きレベルの易しいお話です。すぐ終わります。

前回のおはなしで、電力とは何か?という話をしました。

電力というのは、電気エネルギーから取り出せる仕事のこと
電力を求める式は、電力=電圧×電流(P=V・I)
この式を変形させると、P=VI=RI^2=V^2/R という形にもなる

といった話でございました。

さて、この「電力」。では、部屋を暖かくするためには、できるだけ電力の大きなヒーターを使用するしかないのでしょうか?

まぁ、現実問題として壁や窓からの熱の放散があるため、大電力のヒーターを使用する≒その方が部屋が暖かくなる、で間違いはないのですが、加熱効果はそれだけではないですね。もし小さめのヒーターであっても、そのぶん長時間利用することによって部屋を暖かくすることができます。逆に言うと、大電力のヒーターであっても、短時間しか使用しないのであれば部屋は余り暖かくなりません。

これは、弁当を暖める電子レンジでも同じです。
1500Wの電子レンジで1分暖めるお弁当は、1000Wであれば1分半くらい、500Wの電子レンジであれば3分くらい加熱することにより、ほぼ同じ温度まで温めることができます。すなわち、

加熱効果=電力×時間

で計算できることが分かります。
この「加熱効果」のことを、正式には「電力量」と呼びます。電力量は、記号「W」で表しますが、電力の単位のワットと混同しやすいので気を付けてください。
電力の単位はワット[W]、時間は秒[s]を用いますから、電力量は

W=Pt[W・s]

で求めることができます。
さらに、この1W×1秒という値は、驚くべきことに?熱や仕事の単位であるジュール[J]と等しい値になっています。

というか、1W×1秒=1Jという奇麗な関係になるように、電圧・電流・電力・仕事などの値が定義されている、という方が正しいです。昔の人は上手く考えたものです。(あとは、電流の向きと電子の向きさえ合わせておいてもらえれば良かったのに…)

電力の世界では、1Wとか1秒という値は小さすぎるため、電力の単位として1kW、時間の単位として1時間を良く用います。この場合の電力量は、

1[kW]×1[時間]=1[kW・h]
1[kW・h]=1000[W]×3600[秒]=3600[kJ]=3.6[MJ]

となります。このように、エネルギーの単位ジュール[J]に合わせてしまうことで、色々なエネルギー間での単位換算ができるようになります。

そうそう、そもそも「エネルギー」って何?という話なんですが
電気のおはなしその10・作用反作用の法則、重力加速度、エネルギーなどについて(補足編)にもちょっとだけは書きましたけれども、実は「エネルギー」という物体は存在しません。エネルギーの実体は、人間が考えた計算式です。計算式に沿って求めた計算値がその正体です。
じゃあなんでそんなものを考えたの?ということですが、例えば「熱量のすごさ」とか「運動の勢いのすごさ」「化学反応のすごさ」「光の強さ」などなど、人間が体感的に「すげぇ」と感じる感覚を数値化して、そのうえで熱を電気に変換したり、光を熱に変換したり、化学物質を反応させて熱に変換したりする場合に共通項として使える値は作れないだろうか?ということで考えられたものが「エネルギー」ってわけです。
熱力学に出てくる「エントロピー」も同じような概念で、人間が数式で定義した値で、実体は無いものです。(多くの人にとって、熱力学の「分かりにくさ」はその辺に起因してるんじゃないでしょうかね)

例えば、1kWの電気ストーブを1時間使用するために、効率50%の発電機を使用して電力を供給したとすると、この発電機に投入する燃料の発熱量は7.2[MJ]必要であり、電力にならず廃熱として放出される熱量が3.6[MJ]である、という感じで計算することができるようになりますよ。

なお、毎月の電気代は、この使用した「電力量」に対して課金されています。電気の検針票などがあれば、「今月の使用電力量」という形で書かれているはずです。我々は、電力会社から、電力量を買っているわけです。

ま、こんなところでお開きにしましょうか。

以上。

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