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電気のおはなしその6・力はどのように存在するのか(作用反作用の法則)
電気の正体である電子が移動するためには、電子に対して力が働いている必要がある、ということで力の性質について書いてきました。
次は、いったい力っていうのはどうやって発生し存在しているのかということについて、力学入門みたいな感じで話していこうと思います。
では、また例によって自転車をこいでいる場面を考えてみます。人間が自転車をこぐためには、足の筋肉で自転車のペダルを押します。人間と自転車の間で力をやり取りする場所は、足の裏とペダルの接触部分です。
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次の例として、床に置いてある荷物を横から押して移動させる場面を考えます。昔、倉庫番っていうゲームがありましたが、それと同じ状況です。こちらも、物体に対して力を与えているのは、人間の手が物体を押している点で、この力が物体に伝わって物体が移動することになります。
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もうひとつ、床に置いてある荷物を持ち上げる場面を考えます。こちらは、人間の手と荷物が接触している部分で荷物に対して力が働いています。
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逆に、何にも接触していないのに勝手に物体(スプーン)が移動するとかいうマジックが昔流行りましたが、これはインチキで、接触していないのに力を伝えて物体を動かす、ということはできないのです。
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以上のような経験則から、
力は、物体同士が接触している点において発生する
ということが分かります。
ここで、基本に立ち返って「力とはいったい何なのか」について考えます。
力は「物体を加速させる働き」を持っていました。となると、ちょっとおかしなことが発生してしまいます。例えば、
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このとき、人間の手のひらで力が発生していたとすると、その力は「手のひらを加速させる働き」をしますから、次の瞬間、
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となるはずです。でも、現実はそんなことは起こりません。どんな力で押しても、手と荷物は接触したままで、荷物には力が働いて荷物が移動していきます。この矛盾の整合性をとるためには、
手が荷物を押す力と全く同じ力で、荷物は手を押し返している
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ということに気が付けば万事解決!というわけです。こうすることにより、人間の手は荷物に対して力を与えることができ、それでいて人間の手と荷物は互いに接触を保っていられることになります。
注:荷物が柔らかくて、人間が押す力に比べて押し返す力が小さい場合は、手が内部にメリ込んで「手が!手がぁぁぁぁ!」となります。
この考え方を適用すれば、
足が自転車のペダルを押すとき、ペダルも足を押し返しているから足とペダルが接触していられる。もし押し返す力が存在しなければ、足はペダルの中に加速して埋まっていってしまう。
床に置いてある荷物を持ち上げるとき、荷物の持ち手部分も手を引っ張り返している。もし引っ張り返す力が存在しなければ、持ち手部分だけ外れてしまう。
ハンドパワーでスプーンを浮かすとき、スプーンもまたMr.〇リックを持ち上げてしまう。
まぁ最後のは冗談ですが、ともかく、物体同士の接触点で力が与えられているとき、その力は一方的なものではなく、必ず両側に発生しているということになります。この原理を、
作用反作用の法則
と呼んでいます。愛情も作用反作用の法則が常に成立すればいいんだけど、そうじゃないのが人間世界のつらいところ
今回おはなしした、「力というのは、物体同士が接触していることで発生する」「接触点において、力は互いに反対方向のペアとなって存在している」というのは、いわゆる古典物理学のうちの本当に初歩の第一歩で、実は接触していなくても力は発生する、ということが今では分かっています(いや、それ以前に、「接触」って何?とかいろんな話はあるんですが、その辺については、次の次あたりにニュートン先生の話で出てくると思います)。
とはいえ、人間が「力」という概念をどのように発見し、どのように実験や研究によって科学が発達してきたか、という道筋を知るために、電気とはちょっと関係ない話ですが書いてみました。
高校の物理基礎の勉強だと、作用反作用の法則の次には「力の釣り合い」が出てくるのですが、電気の世界と力の釣り合いは関係無…
Σ(゚д゚lll)いや、関係ある。
というわけで、次は「力の釣り合い」について書いていこうと思います。
さらにその次は、お待ちかねのニュートン先生が出てくる(と思う)よ!お楽しみにね!
じゃーんけーん、ポン!
以上。