モモンガの1日(6)
モモンガはカウンターにいるシマフクロウにあいさつをした。
それからいったん腰をかけるため、カウンターの先にある広いベンチに座った。
吹き抜けの作りの図書館は、見上げると上のほうまで壁一面にびっしりと本が並んでいる。
図書館ははじめ、杉の幹をくり抜いて作られるはずだった。
けれど森の住民たちの反対もあって、木を守るために外側に沿うように作られた。
住民たちはツタや細い枝を一本一本持ちより、丁寧に編み上げて、背の高いドーム型の図書館を作ったのだった。
モモンガは壁面の本棚の奥からのぞくツタのうねりを眺めて、それらを持ちよった昔の住民たちのことを思った。
たくさんのそれらが、流れるようにタテヨコに絡みあっている。
それぞれがまっすぐな線を描きながらある一点で交わり、離れ、また他のものと交わり、離れていく。
これだけ多くの材料を集められたのは、たくさんの動物がいたということでもあった。
吹き抜けの上のほうには採光窓がはめ込まれている。
どこから持ってきたのか、それはところどころが赤や青や黄色い光をあつめていて、
明るくて綺麗だった。
「ここは教会みたいだ」と物知りなキツネは言っていた。
「人間の街にあるたてものだよ」とも言っていた。
モモンガは教会のことはよく知らないけれど、きっとそれなら「教会」もすてきなところなんだろうなあと思った。
そのあと、カウンターで本の返却手続きをした。
今日の担当のシマフクロウはいつも穏やかに微笑んでいるから、モモンガは好きだった。
日よっては、あまり混んでいない時でも忙しそうなこわい顔のもいて、
そんなときはこっちの心臓がどきどきしてしまうから、
シマフクロウを見ると安心できた。
「もう一度借りようと思ってます」
モモンガがそう言うと、
シマフクロウは「あら」と言って、貸出す本の上に一枚の用紙をのせた。
「これね、『貸出すときに配って』って頼まれたの」
見ると“森のかわらばん”と書かれている。
下のほうの発行者名には「とんび」、さらにその下には小さく「ねずみ」と書かれていた。
「これ、最近よく見かけるようになりましたね」
「ええ、以前は3ヶ月に一度とか、それくらいだったかしらね」
“森のかわらばん”は、モモンガが住む木の掲示板にもときどき貼り付けられていた。
おもに森で起きたニュースが書かれているものだ。
それが月に一度、週に一度というようにだんだんと発行される間隔がみじかくなってるようなのだった。
(つづく)