モモンガの1日(10)
読み終えてから、モモンガはまた頭の中にイタチのシッポがふわふわと飛び回るのを感じた。
かわらばんを持ったり置いたり、ぼうっとしたり、部屋を行ったり来たりして
いつの間にか眠りにつく時間になっていたけれど、
どうしても眠る気になれず少し外の空気を吸いに行くことにした。
「今日は何度も出かけるなあ」
と思いながら、持ち物はとくに必要ないのでふらりと外に出た。
ふと思い立って木のてっぺんまで登ることにした。
幹を伝ってするすると登って行く。
いつぶりだろうか、とモモンガは考えていた。
木の上から眺める景色は好きなのに、もうずいぶんと登っていなかった。
鼻先で葉を押し分けて、てっぺんに出ると遠い空に月が浮かんでいた。
木々の上側が半透明な膜をまとったように照らされている。
その仄白くうすい膜の起伏は、どこまでもなめらかに続いていく。
すぐ下は、いつもの黒々とした闇が控えていた。
(つづく)