
アッヴィ(AbbVie)の株価、好決算を受け大幅上昇
米製薬大手アッヴィ(NYSE: ABBV)は、第4四半期および通年の決算がアナリスト予想を上回ったことを受け、株価が大きく上昇しました。四半期決算の具体的な数字や主要製品群の売上動向、今後の業績見通しなど、今回の決算で明らかになったポイントを見ていきましょう。
第4四半期・通年決算の概要
EPS・売上高の結果
第4四半期調整後EPS: 2.16ドル(FactSet調べの予想2.12ドルを上回る)
第4四半期売上高: 151億ドル(予想148億ドルを上回る)
通年売上高: 563億ドル(ウォール街予想560億ドルを上回る)
通年EPS: 10.12ドル(予想10.08ドルを上回るものの、前年から8.9%減)
今回の決算発表後、アッヴィの株価は大きく反応し、発表当日の米国市場では一時9.2%近く上昇。終値ベースでは約7%高と、大幅な伸びを記録しました。
2025年の見通し
2025年調整後EPS予想: 12.12~12.32ドル(市場コンセンサス12.15ドルを上回るレンジ)
さらに同社のCEOであるロバート・マイケル氏は、2024年を「重要な進展の年」と位置づけつつ、2025年の好調な見通しにも自信を示しています。
主要製品ポートフォリオの動向
免疫分野(Humira, Skyrizi, Rinvoq など)
免疫領域の第4四半期世界売上高: 73億ドル(前年同期比+4.9%)
主力製品Humira: 特許切れによりバイオシミラーの参入が進み、売上は約50%減少
SkyriziやRinvoqなどの新製品が成長しており、アナリストからは「Humiraの売上減少を徐々に補う可能性がある」という見方も示されています。
がん領域
オンコロジー(がん領域)の第4四半期世界売上高: 17億ドル(前年同期比+12%)
免疫チェックポイント阻害剤や血液がん治療薬など、オンコロジー領域は堅実な伸びを示しています。
美容・医療美容領域(Botoxなど)
美容領域の第4四半期売上高: 13億ドル(前年同期比-5.2%)
Botoxを含む医療美容製品は若干の減少傾向がみられるものの、依然として主力ポートフォリオの一角を占めています。
アナリストの評価と競合状況
エドワード・ジョーンズのアナリスト、ジョン・ボイラン氏は決算後もアッヴィ株に対する「ホールド」評価を継続しています。
新薬(SkyriziやRinvoqなど)の伸長は評価しつつも、「競合が激しく、価格競争リスクがある」という見解を示唆
一方で過去数年、S&P 500ヘルスケアセクター指数を上回るパフォーマンスを示してきた背景として「予想を上回るEPS成長」を指摘
特許切れによるHumiraの売上減少は大きな懸念材料ですが、アッヴィは競争激化のなかでも新薬を含むポートフォリオの拡充で総合的な収益を確保し、今後も安定成長が見込まれるとする声もあります。
投資家視点で捉えるポイント
配当とバリュエーション
アッヴィは増配を長年続けているいわゆる「Dividend King」の一社。
予想ベースの配当利回りは3.5%とされ、比較的高水準のインカムを期待できる可能性があります。
一方で将来PER(株価収益率)は約14.6倍とされ、医薬業界のなかでは妥当あるいはやや割安感があるとの見方もあります。
今後の成長ドライバー
Humira依存からの脱却が大きなテーマですが、SkyriziやRinvoqをはじめとする新製品が、同製品の売上減少をどれだけ補えるかが重要。
オンコロジー領域や医療美容領域など、複数の成長分野を抱えている点はポートフォリオの強みと言えます。
2025年に向けた好調なEPS予想を示すなど、経営陣の自信は高いようです。
まとめ
アッヴィは、第4四半期および通年で市場予想を上回る決算を発表し、株価が大きく上昇しました。主力薬Humiraの特許切れによる売上減少という課題を抱えながらも、新薬パイプラインやオンコロジー、美容領域などが堅調に伸びており、経営陣も2025年のEPS予想を上方に示すなど、今後の成長に自信を見せています。競争環境は厳しさを増す一方、長期増配実績や比較的魅力的なバリュエーションなど、投資家にとって注目すべきポイントが多い銘柄と言えるでしょう。