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Amazon第4四半期は好調も来期ガイダンスの失望で株価下落
世界最大のクラウドサービス企業の一角として注目を集めるアマゾン(AMZN)。2023年末からのホリデーシーズンの好調を受け、第4四半期は売上・利益ともにアナリスト予想を上回る結果を残しました。しかし、2024年第1四半期の見通し(ガイダンス)が市場予想を下回ったことで、発表後の株価は下落。業績発表の詳細から、為替要因やAI投資をめぐる動向、さらに小売業全体に影響する関税の話題まで、最新の注目ポイントを整理します。
第4四半期の業績概要
アマゾンが発表した第4四半期(10〜12月)の売上高は1877億ドル(別の発表では1878億ドル)に達し、市場予想の1873億ドルをわずかに上回りました。前年同期は1699億ドルだったため、約10%の増収となります。EPS(1株当たり利益)は1.86ドル(アナリスト予想は1.50ドルもしくは1.49ドル)と大幅に上振れ。前年同期のEPSが1.00ドルだったことを考えると、力強い利益成長を示したといえるでしょう。
AWSの売上
注目されるクラウド部門であるAWS(Amazon Web Services)の売上は287億ドルとなり、市場予想の288億ドルをわずかに下回ったものの、大きな落ち込みではありません。競合するマイクロソフト(MSFT)やグーグル(GOOG, GOOGL)がAIサービス向け需要への対応力不足を理由にクラウド売上の伸び悩みを報告している中、アマゾンも引き続きクラウド投資を強化しつつ成長を狙う姿勢です。
AIインフラへの投資
AI需要が急伸する中、アマゾンは2024年に750億ドル、2025年にはそれ以上の設備投資を予定しています。中国発のAIスタートアップ「DeepSeek」が新たなAIモデルを発表したことで市場は一時動揺しましたが、アマゾンはすでにマイクロソフト同様、自社のAIサービスプラットフォームを通じてDeepSeekのAIモデル提供を始めています。こうした積極投資を背景に、今後のクラウド市場でのAI対応力強化が期待されます。
第1四半期ガイダンスと株価下落
好調な第4四半期に比べ、第1四半期(1〜3月)のガイダンスが市場予想を下回ったことが株価下落につながりました。アマゾンは1510億ドルから1550億ドルの売上高を見込んでいますが、市場予想(アナリストコンセンサス)はおおむね1580億ドルから1585億ドルとされていました。
為替影響とうるう年の影響
アマゾンは今回のガイダンスについて、約21億ドル(150ベーシスポイント)に及ぶ大きな為替の逆風を見込んでいると説明しています。さらに2024年はうるう年の影響がなくなり、前年の売上に約15億ドル分上乗せされていた“日数増”の効果が消失するとも言及。こうした特殊要因が重なってガイダンスが控えめになったとしています。
関税の影響と小売部門の展望
小売業全体としては、ドナルド・トランプ米大統領が中国からの輸入品に対して新たに10%の関税を課したことも話題となっています。カナダやメキシコに対する関税は約1カ月の猶予があるものの、中国向けの関税措置は小売価格や調達コストに影響を及ぼす可能性があります。
ホリデーシーズンの好調要因
アマゾンはホリデーシーズンに早めのセールを打ち出し、ブラックフライデーやサイバーマンデーといった大型セールも積極的に実施。こうした販促施策が奏功して売上を押し上げた形ですが、新たな関税コストが商品価格に転嫁されれば、今後の消費動向に影響を与えるリスクが残ります。
投資家視点で捉えるポイント
投資家としては、好調だった第4四半期決算そのものよりも、やはり次期ガイダンスや外部環境の影響に注目する必要があります。
AI投資によるクラウド事業の伸び余地
アマゾンはクラウド大手として、今後さらに増大するAI需要を取り込める立場にあります。DeepSeekのAIモデル提供や大規模投資計画からもわかるように、AI対応のインフラ整備は依然として大きな成長エンジンとなり得るでしょう。ただし、クラウド競合他社も同様にAIサービス強化を進めているため、競争の激化は想定されます。
為替・関税・うるう年などの一時的要因
今回のガイダンスでは大きな為替差損やうるう年消失が原因とされており、ある意味“特殊要因”ともいえます。また、中国製品への追加関税という外部要因も不透明要素として残ります。これらの影響が一時的にとどまるのか、長期化してアマゾンの利益を圧迫するのかを見極めることが重要です。
まとめ
第4四半期はアマゾンの底力を示す好決算となりましたが、2024年第1四半期の売上見通しが市場予想を下回ったことから、株価は失望売りにさらされています。為替やうるう年の影響など特殊要因も大きいとはいえ、投資家としてはAIインフラへの巨額投資や関税によるコスト上昇など、先行きの不透明性を注視せざるを得ません。一方で、アマゾンが引き続きクラウド分野での優位性を確保し、AIサービス関連で需要を取り込み続ける可能性も十分。そうした長期的な成長ポテンシャルと、足元のリスクをバランスよく見極めることが重要になってくるでしょう。