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石破首相の再指名と少数与党政権の前途多難な船出

11日に召集された特別国会にて、石破茂首相が30年ぶりの決選投票の末、再指名を受けることとなりました。しかし、与党が衆院で過半数を割っている状況で、政権運営はこれまで以上に複雑なものとなりそうです。特に、野党の協力が不可欠な法案や予算案の成立に向けた調整が求められ、石破首相の手腕が試される局面となります。



石破首相の再指名までの経緯

特別国会ではまず、首相指名選挙の1回目が実施されましたが、石破首相がトップに立つも過半数には届きませんでした。最終的には立憲民主党の野田佳彦代表との決選投票に持ち込まれ、石破首相が221票を獲得して再指名されました。今回の投票結果は与党が衆院で過半数割れを起こしたことを反映しており、国会運営の不確実性が増しています。

野党との連携の必要性と「年収の壁」問題

与党が過半数を割ったことで、野党との協力は避けられません。特に国民民主党とは、現在の「年収の壁」とされる103万円の所得税発生基準を178万円に引き上げる政策協議が進められています。この基準引き上げにより、税収減のリスクが指摘されていますが、年末の税制改正に向けた折衝が注目されます。

石破首相は国会運営について「野党の意見を誠実に謙虚に承り、国民に見える形であらゆることの決定をしていきたい」と述べ、柔軟な姿勢を示しています。この発言からも、国民民主党など一部の野党の協力を取り付けるための取り組みが続くと予想されます。

国民民主党の玉木代表との協議と揺らぐ立場

11日には石破首相が国民民主党の玉木雄一郎代表と会談を行い、所得税の基礎控除拡大やガソリン減税、さらにはサイバー攻撃に対応するための「能動的サイバー防御法案」の成立について議論が交わされました。しかし、玉木代表が不倫疑惑を報じられ、党内での立場が揺らぐ事態が発生しています。これにより、政策協議の行方に影響を与える可能性もあり、石破首相の戦略にどのような調整が行われるのかが注目されます。

第2次石破内閣の発足と閣僚人事

石破首相は再指名後、第2次内閣を発足させるにあたり、閣僚の多くを再任する方針を固めました。特に、衆院選で落選した法務大臣や農相の後任にはそれぞれ鈴木馨祐元外務副大臣と江藤拓元農相を起用し、国土交通大臣には公明党の中野洋昌議員が充てられます。

対外政策と「米国第一主義」への対応

石破首相は今週後半からペルーで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)とブラジルでの20カ国・地域(G20)首脳会議に出席する予定です。この外交の場で、日本の立場を国際社会に発信すると同時に、米国の「米国第一主義」への対応が緊急の課題となります。来年1月に政権復帰が見込まれるトランプ次期大統領との関係構築が急務となり、特に米軍駐留費用や通商政策における日本側の負担が増す懸念もあるため、早期の調整が求められます。

投資家視点で捉えるポイント

今回の政権再始動における注目点としては、政権の安定性や政策の持続性が挙げられます。衆院選大敗と与党内の不満から、石破首相の支持率がさらに低下する可能性も指摘されており、不支持率の上昇が「石破おろし」の引き金になるリスクが存在します。また、税制改正やサイバー防御法案の成立は、企業活動や個人投資家にとっても影響が大きい分野であり、年末に向けた進展が重要な投資判断材料となるでしょう。


まとめ

石破首相の再指名は、少数与党政権という厳しい環境下での船出を意味します。野党との協力が欠かせない国会運営の中で、政策実現力や交渉力が試されることになります。特に税制や防衛政策に関する決定は、経済界にも影響を与えるため、今後の動向が要注目となるでしょう。

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