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マイクロソフトが発表した「Majorana 1」量子チップが示す次世代コンピューティングの可能性

マイクロソフト(MSFT)が、新たな状態の物質「トポコンダクター」を活用した量子コンピュータ向けチップ「Majorana 1」を発表しました。グーグル(GOOG, GOOGL)が「Willow」という量子コンピューティングチップを公表してから約2か月後の動きで、市場では“量子コンピューティング戦争”とも呼ばれる技術開発競争が加速しています。今回はこの新たな動向や、投資家目線でのポイントを整理していきます。



Majorana 1とは

マイクロソフトは、この新しいチップ「Majorana 1」に、従来の固体・液体・気体でもない“トポロジカル”状態に着目した素材「トポコンダクター」を採用しています。この素材を使うことで、量子コンピュータが抱える課題の一つである誤り訂正など、複雑な計算がより安定して行える可能性があるとされています。

量子ビット(qubit)の特性

量子コンピュータは、従来のコンピュータが扱う「0」と「1」のビットではなく、「0」と「1」の両方を同時にとりうる量子ビット(qubit)を用いて超高速な計算を実現しようとするものです。ただ、その反面、qubitの数が増えるほどエラー補正の問題が深刻化しやすい点が課題となっています。

マイクロソフトの狙い

マイクロソフトの発表によれば、Majorana 1により「実用的な量子コンピュータ」が数十年先ではなく「数年のうちに」登場する道筋をつけたいとのこと。これは、量子コンピュータを使った素材研究やヘルスケア分野におけるシミュレーションなどが飛躍的に進歩する可能性を示唆しています。


グーグルの「Willow」との比較

今回のマイクロソフトの発表は、グーグルが量子コンピュータ向けチップ「Willow」を公表した直後というタイミングでも注目を集めています。グーグルのWillowもまた、qubitが増えるほど深刻化するエラーを補正するアプローチを重視しており、量子誤り訂正の実装に力を入れています。

依然として不透明な“実用化”の時期

ただし、マイクロソフトもグーグルも「量子コンピュータがどのタイミングで本格的に実用化されるか」については明確なタイムラインを示していません。エラー補正の進展によりブレイクスルーが近づいてはいるものの、まだ研究段階が長引く可能性も十分考えられます。

異なる見解:Nvidia CEOとGoogle CEO

  • Nvidia(NVDA)のCEOであるジェンスン・フアン氏は、実用的な量子コンピュータが現実となるには「あと20年はかかる」と発言しています。

  • 一方、グーグルCEOのスンダー・ピチャイ氏は、「5年から10年で実用的な量子コンピュータが登場する可能性がある」との見解を示しています。


米中の国家プロジェクトとしての量子コンピューティング

企業の競争だけでなく、米国や中国などの大国も量子コンピューティングに巨額の投資を行っています。世界経済や安全保障の観点からも、量子コンピューティングの覇権争いは一段と激しくなる見込みです。マイクロソフトやグーグルなどの民間セクターと国家の共同研究も活発化しており、近い将来さらなる進展が期待されています。


投資家視点で捉えるポイント

量子コンピューティングは、将来の技術的インパクトが極めて大きい分野として期待が高まっていますが、まだ不確定要素が多いのも事実です。以下では、株式投資家として考えるポイントを整理します。

1. 研究投資の持続性と企業のR&D体制

マイクロソフトやグーグルといった大手IT企業は十分な研究開発資金と人材を持ち、長期にわたって量子コンピューティングに投資できる体力があります。今後も安定的に開発が続き、複数のブレイクスルーが期待できることから、研究投資の継続性と成果を注視することが重要です。

2. 他領域への波及効果

量子コンピュータ技術が進めば、素材研究から創薬、金融工学など幅広い産業に波及効果をもたらすと期待されています。企業の特許ポートフォリオや、量子技術を活用する提携先企業などに注目すると、将来的な収益源のヒントを得られるかもしれません。

3. 実用化時期への幅広い見解とリスク管理

現時点で実用化時期に関する見解は大きく分かれています。技術的な課題がクリアされるまでの時間をどのように見積もるかが投資判断のポイントです。大きな成長ストーリーを期待する一方、長期戦となる可能性を踏まえたリスク管理も必要です。

4. グローバル競争と規制面でのチェック

量子コンピューティングは国際競争が激しく、国家プロジェクトとしての支援が拡大していく見通しです。各国の政策動向や規制の変化、研究開発助成のインパクトなど、マクロ環境も含めてウォッチすることが投資家には求められます。


まとめ

マイクロソフトの「Majorana 1」の発表は、量子コンピュータの技術開発が新たな局面に入りつつあることを示唆しています。ただし、グーグルの「Willow」も含めて、実用化の時期は今なお不透明であり、専門家の見方も大きく割れている状況です。長期的視野と研究投資の持続性に注目するとともに、量子コンピュータの商用化がもたらす波及効果や国家レベルの支援状況を総合的に見極めることが、投資家にとって重要な視点となるでしょう。

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