イーライリリー、通期業績見通しを下方修正 -肥満治療薬の売上低迷が影響
アメリカの大手製薬会社イーライリリーが、2024年の通期業績見通しを下方修正しました。主な要因は、肥満症治療薬「ゼップバウンド」の売上が予想を下回り、4-6月期に積み上がった在庫が影響したことです。これにより、投資家やアナリストは今後の見通しについて注目を寄せています。
業績の下方修正の背景
肥満症治療薬「ゼップバウンド」の販売実績
イーライリリーのヒット商品「ゼップバウンド」は、世界的に需要が高い肥満治療薬として市場で注目を集めています。しかし、今年第3四半期(7-9月期)の売上高は12億6000万ドルで、市場予想である16億3000万ドルを大きく下回りました。肥満治療薬市場は、特に成長が見込まれる分野であり、2030年には規模が1300億ドルに達するとの予測もありますが、今回の売上未達はその期待に一部陰を落としています。
在庫の積み上げ問題
売上高の伸び悩みの一因として、前四半期に積み上がった「ゼップバウンド」と糖尿病治療薬「マンジャロ」の在庫が挙げられています。流通段階での在庫が多かったことにより、当期の売上が抑制される結果となりました。製薬会社は在庫管理が収益に直接影響を与えるため、効率的な在庫コントロールが必要です。
通期売上高の見通し修正
今回の業績修正では、リリーは通期の売上高予想を454億-460億ドル(約6兆9600億ー7兆500億円)とし、従来の上限466億ドルから下方修正しました。これにより、同社株は30日のニューヨーク株式市場で一時14.9%の大幅な下落を記録し、投資家心理にネガティブな影響を与えています。
競合と市場動向
ノボ・ノルディスクとの競争
リリーは肥満治療市場での主要競合であるデンマークのノボ・ノルディスクと激しい競争を繰り広げています。ノボ・ノルディスクは糖尿病治療薬「オゼンピック」や肥満症治療薬「ウゴービ」で知られ、同様に供給の確保に苦労しています。リリーとノボ・ノルディスク両社は、供給体制を強化するため数十億ドル規模の投資を行っており、供給能力の向上を目指しています。
市場拡大に対する期待と課題
肥満症治療薬市場は今後も成長が見込まれており、企業にとって大きなビジネスチャンスとされています。しかし、供給管理や在庫問題が課題として浮上しており、安定した供給体制の構築が今後の成長の鍵となるでしょう。
投資家視点で捉えるポイント
今回の下方修正により、リリーの成長性に一部懸念が生じましたが、肥満治療市場そのものの成長性には依然として期待が寄せられています。リリーやノボ・ノルディスクが行う供給体制の強化は、今後の収益向上の可能性を示唆する要因です。また、リリーの在庫管理と販売戦略の見直しが今後の安定的な成長を実現するために重要となるでしょう。
まとめ
イーライリリーは2024年の通期業績見通しを下方修正し、肥満治療薬市場の供給体制と在庫管理が収益に大きな影響を与えることを示しました。同社と競合企業であるノボ・ノルディスクが行う供給体制の強化は、今後の成長に期待を持たせる一方で、安定供給が課題であることも浮き彫りになりました。今後、リリーが供給体制をどのように改善し、成長市場において安定した利益を確保できるかが注目されます。