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Broadcom、AI需要で来期売上予想を上振れ:強まるカスタムAIチップ需要
Broadcom(AVGO)が次期四半期売上を市場予想以上に見込んでいることが注目を集めています。特にカスタムAIチップの需要増加が背景にあり、同社は今後数年間でAI関連分野において大きな成長機会があると考えられます。
AI需要が後押しするBroadcomの成長
Broadcomは、カリフォルニア州パロアルトに拠点を置くテクノロジー企業であり、半導体からインフラ系ソフトウェアまで、多岐にわたる分野で事業を展開しています。今回の予想上振れは、AI分野、特にハイパースケール顧客向けカスタムAIチップの需要増加が大きな要因となっています。
AI関連収益の期待
CEOのホック・タン氏は、2027会計年度にはAI関連で600億ドルから900億ドルの収益機会が見込まれると述べています。特に3つのハイパースケール顧客が数百万台単位のAIチップクラスターを展開する見通しであり、AIインフラ整備においてBroadcomの技術が重要な役割を果たすと示唆しています。
需要拡大の背景:ジェネレーティブAI
OpenAIのChatGPTのようなジェネレーティブAIへの投資拡大に伴い、膨大なデータを高速かつ効率的に処理するネットワークチップの需要が急増しています。Broadcomはこうしたニーズに応える先進的なネットワーキング機器を提供し、AIインフラを下支えしています。
業界アナリストの評価
eMarketerのアナリストであるジェイコブ・ボーン氏は、「Broadcomの強さは驚きではありません」と指摘しています。AIブームが半導体業界を活性化する中で、BroadcomのAI関連収益は今年220%成長しているとのことです。
懸念点と競合状況
AI事業の好調さが目立つ一方で、Broadcomは競合や顧客動向に留意する必要があります。
Appleの自社チップ戦略
Appleは、無線チップ供給元への依存度を下げるため、BluetoothやWi-Fi接続向け自社チップへの切り替えを計画していると報じられています。このため、Broadcomの主要顧客であるAppleとの関係には先行き不透明感が生じています。
Nvidiaとの競争
Nvidiaは独自のインフィニバンド技術を用い、AI用データセンター向けネットワークソリューションを展開しています。BroadcomはASIC(特定用途向け集積回路)開発や大規模なネットワーク機器提供により地位を維持していますが、Nvidiaとの競争は今後激しくなる可能性があります。ただし、サミット・インサイツのアナリストであるキンガイ・チャン氏は、「Tier-1ハイパースケーラーが独自チップを継続投入していく中、BroadcomはMarvellなどと共にカスタムAI ASIC市場で引き続き存在感を発揮するでしょう」と述べています。
インフラソフトウェア事業の拡大
Broadcomは、半導体メーカーとしての側面だけでなく、VMwareを約690億ドルで買収するなど、クラウド関連インフラソフトウェア分野にも進出しています。インフラソフトウェア部門は、第4四半期に前年同期比196%増となる58.2億ドルを記録しており、同社が多角的な成長戦略を展開していることがうかがえます。
業績ハイライト
第1四半期売上予想:約146億ドル(市場予想14.57億ドルを上回る)
第4四半期売上:140.5億ドル(前年比50%超の増加)
第4四半期調整後EPS:1.42ドル(市場予想1.38ドルを上回る)
投資家視点で捉えるポイント
BroadcomはAI関連投資の拡大による収益上振れが期待できる一方で、主要顧客(Apple)の内製化動向やNvidiaなどの競合企業との競争激化がリスク要因となり得ます。ハイパースケーラー向けカスタムチップの強みを生かし、長期的な成長ストーリーを描くことが可能と考えられます。
強み
AI関連需要の拡大による安定した収益見込み
ASICを含むカスタムチップによるハイパースケーラー顧客の獲得
インフラソフトウェア分野拡大による事業ポートフォリオの強化
留意点
Appleによる自社チップ開発計画による既存ビジネスへの影響
Nvidiaをはじめとした競合企業との技術競争
AI市場拡大ペースの変動による先行き不確実性
まとめ
Broadcomは、AI需要増による業績上振れを背景に、2027年には巨額のAI関連収益機会を見込んでいます。インフラソフトウェアやカスタムAIチップといった多角的な戦略を通じて長期的な成長基盤を確保していますが、顧客の内製化や競合他社との厳しい競争にも備える必要があります。投資家としては、Broadcomの強固なAI対応力やインフラ整備を支える技術力に注目しつつ、顧客構造変化や競合環境を慎重に見極めていくことが求められます。