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Metaが際立つ理由:ビッグテック全体の苦戦を乗り越えるAI投資
2025年に入り、ビッグテック企業の多くが厳しいスタートを切る中、Meta(META)だけが株式市場で好調なパフォーマンスを見せています。Amazon、Google、Microsoftはクラウド収益が市場予想を下回り、AppleはiPhone売上、Teslaはトップ・ボトムライン共に期待を下回る結果となりました。しかし、Metaだけは2025年年初から株価が22%も上昇し、17営業日連続で上昇するなど、際立った動きを見せています。本記事では、その背景にあるMetaのAI投資と戦略について整理してみます。
ビッグテック全体の低迷とMetaの好調
他社が抱える課題
2025年に入ってから、主要なビッグテック企業は総じて市場予想を下回る業績や売上結果に直面しました。
Amazon(AMZN): クラウド収益が伸び悩み
Google(GOOG, GOOGL): 同じくクラウド収益が市場予想を下回る
Microsoft(MSFT): クラウド分野での期待を大きく上回れず
Apple(AAPL): iPhoneの販売実績が落ち込み
Tesla(TSLA): 売上高・利益ともに失望感を与える結果
株価の動きとしては、GoogleとMicrosoftが年初来でそれぞれ-2.7%、-3.3%、Teslaは-17%、Appleは-6%と軟調です。Amazonこそ年初来4.4%の上昇はあるものの、2月7日の決算発表以降は-1.4%下落しています。
Metaの株価躍進
対照的に、Meta(META)は年初来で22%上昇し、ウォール街で17日連続の株価上昇を記録するなど好調を維持しています。投資額の大きさで見れば、Amazonが1,000億ドル超、Googleが750億ドル、Microsoftが800億ドルの設備投資を予定し、Metaも600~650億ドル規模の投資を計画していますが、そこでの違いは投資先の目的です。他の企業がクラウドなど外部の顧客に向けたインフラ投資を進めるのに対し、Metaは自社プラットフォームの成長を最優先に投資を行っている点が評価されているとみられています。
AI投資がもたらす即時的な成長
広告・ユーザーエンゲージメントへの貢献
Metaは大規模なAI投資を自社の広告配信やユーザー体験の向上に直接活用し、実際に成果を出しています。
CEOマーク・ザッカーバーグ氏によれば、AIを活用したフィードや動画の推薦機能の改善により、Facebookでは8%、Instagramでは6%ものユーザーの滞在時間増加につながったと報告しています。
CFOスーザン・リ氏は、ジェネレーティブAIを活用して広告を作成する企業が急増していると説明。6ヶ月前は100万社だったのが、現在では400万社に拡大しています。
こうした結果が広告収益やユーザーエンゲージメントに直結していることから、投資家にとっても投資対効果が分かりやすいと考えられます。
他社との違い
GoogleやMicrosoft、AmazonもAI投資による成果を積み重ねていますが、それらは主に大規模なデータセンター投資を通じて、外部顧客にサービスを提供する形で進んでいます。一方、Metaは外部売りを意識するのではなく、“自社の成長に直結するAIの活用”を最優先にしているため、投資家にとってはより明確に収益につながるストーリーが見えやすい状態です。
オープンソースLlamaモデルの可能性
Llamaがもたらす将来像
Metaが開発・公開している大規模言語モデル「Llama」は、オープンソースで提供され、月間7億ユーザー規模まで利用が可能という制限付きながら、多くの企業や開発者の注目を集めています。将来的にはライセンス形態の拡大などにより、大きな収益源へと発展する可能性も指摘されています。
Llama 4への期待
ザッカーバーグ氏は今後登場する「Llama 4」について「ネイティブにマルチモーダル対応し、エージェンティック(主体的にタスクをこなせる)な機能を持つ“オムニモデル”になる」と強調しています。具体的な発表時期はまだ定まっていませんが、着実に開発を進めていることがうかがえます。
投資家視点で捉えるポイント
即効性のあるAI活用
MetaはAI活用を広告とユーザー滞在時間の向上に直結させることで、短期的にも成果が見えやすい形をとっています。他社がインフラ提供を通してさまざまな業種にサービスを広げようとしている一方、Metaの取り組みは自社プラットフォームの価値向上に集中しており、投資家にとって収益モデルが理解しやすいといえます。
オープンソース戦略の将来性
オープンソースの大規模言語モデルをフリーで提供するアプローチは、そのままでは大きな直接収益にはつながりにくいものの、将来的に有料ライセンスや追加機能の販売など、さまざまな展開が考えられます。今後のLlama 4の進化がどのように収益化されるかが注目ポイントとなりそうです。
まとめ
Metaは他のビッグテックが苦戦する中でも、AIを自社の主力ビジネスである広告収益とユーザーエンゲージメント向上に即時的に活用することで、投資効果を分かりやすく示しています。また、オープンソースの「Llama」を通じて将来的な収益化の可能性も模索しており、この独自路線がウォール街の高い評価につながっています。依然としてAI市場は始まったばかりで、今後の展開には不透明な部分も残りますが、現時点ではMetaの戦略が一歩先を行くかたちとなっていると言えそうです。