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Appleの好調な決算とiPhone販売の伸び悩み
アップル(AAPL)が発表した2025年度第1四半期(※発表タイミングは米国時間木曜引け後)の決算は、売上高・利益ともに市場予想を上回る結果となりました。しかし、iPhoneの売上高や中国市場での売上はアナリスト予想を下回っています。この記事では、決算のポイントや背景となる中国市場での動き、そしてアップルの最新AI戦略や新製品の情報などを整理しながら、投資家にとって注目すべきポイントをお伝えします。
好調な決算結果とiPhone売上の推移
予想を上回った全体売上・利益
アップルの2025年度第1四半期決算は、1株当たり利益(EPS)が2.40ドル(市場予想は2.35ドル)となり、売上高は1,243億ドル(同じく予想1,241億ドル)を記録しました。トップライン・ボトムラインともにコンセンサスを上回る好調な数字ですが、セグメント別に見ると必ずしも順風満帆というわけではありません。
iPhone売上はやや伸び悩み
iPhone部門の売上高は691億ドルとなり、市場予想の710億ドルを下回りました。前年同期の697億ドルと比較しても微減となっています。アナリストからはiPhone販売台数の伸び鈍化を懸念する声が出ており、先週はJefferiesとLoop Capitalが、さらに今週はOppenheimerが、アップル株の投資判断を引き下げる動きがありました。
中国市場での苦戦
売上の下振れ
決算では、中国を含むグレーターチャイナ地域での売上が185億ドルにとどまり、市場予想の215億ドルを下回りました。アップルはここ2年ほど中国市場に苦戦しており、2024年には売上が8%減、2023年には2%減と、下落が続いています。原因としては人民元安やiPhoneやiPadの販売減少が挙げられています。
市場シェアの低下
IDCやCanalysの推計によると、2025年第1四半期(厳密には2024年Q4比較)のiPhoneのシェアは前年同期比で1ポイント減の23%に落ち込みました。スマートフォン市場全体では出荷台数が3%増加している中でのシェア減少ということもあり、アップルにとっては注意が必要な動向です。
AI戦略「Apple Intelligence」と新製品ラインナップ
Apple Intelligenceの投入
アップルは2024年10月に「Apple Intelligence」と呼ばれるAI機能群を投入し、本格的なAI推進をスタートさせました。年内を通じて段階的に機能をアップデートしていく予定で、アプリ横断での情報収集など、ユーザーの利便性を高める取り組みが続きます。ただし、アナリストの間では、このAIがiPhoneの買い替え需要を大きく後押しするほどの“起爆剤”にはなっていないという見方もあるようです。
今後の新製品
さらに、アップルは数カ月以内にエントリーモデルのiPhone SEや新型iPad、新型MacBook Airを投入する見込みだと報じられています。新モデルによってどこまでユーザーを取り込めるかが、来期以降のアップルの業績に影響を与えそうです。
株価動向と他社との比較
アップル株の推移
アップルの株価は過去12カ月で約24%上昇しており、総じて好調といえます。しかし、同じ期間のグーグル(GOOG, GOOGL)は約27%、NVIDIA(NVDA)は102%と、他のハイテク企業がさらに大きな伸びを見せるケースもあります。一方でMeta(META)は69%上昇、マイクロソフト(MSFT)は8%の上昇と、ビッグテック各社で明暗が分かれている状況です。
NVIDIAの急伸とAI関連への注目
特にNVIDIAの株価が大幅に上昇している背景には、AIブームでの半導体需要拡大が期待されたことがあります。しかし中国の「DeepSeek AI」プラットフォームにより高性能チップの需要が減少するのではないかという懸念が生じ、一時は株価が下落する場面もみられました。AI関連領域は投資家にとって大きなチャンスである一方で、中国動向の影響や競合他社の参入などリスク面も意識しておく必要があります。
投資家視点で捉えるポイント
iPhone販売動向の見極め
iPhoneはアップルの収益の柱だけに、今回の予想未達と市場シェア減は気になるところです。新モデル発売時期やAI機能のアップデートが需要をどの程度刺激できるか、引き続き注目する必要があります。
中国市場の不透明感
中国市場はアップルにとって大きなマーケットである一方、為替や政治的要因、現地の競合の台頭などリスクも潜んでいます。売上減少の連鎖が続かないか、その回復のきっかけを見極めることは投資家にとって重要です。
AI戦略の行方
Apple Intelligenceは、今年以降のアプリ連携や新機能強化によってユーザー体験を高めるとされています。しかし、投資家としては「このAI戦略がどれほど収益やユーザーエンゲージメントを拡大するのか」という点を慎重に見守る必要があります。
ビッグテック間の株価比較
アップル株はこの1年で24%上昇しているものの、グーグルやNVIDIA、Metaなど、他のビッグテック企業もそれぞれに強みを発揮しています。投資家はポートフォリオを組む際、複数企業の成長ポテンシャルやリスクをバランスよく検証する必要があります。
まとめ
アップルの2025年度第1四半期決算は全体として好調な数字を残しつつ、iPhone販売の伸び悩みと中国市場での下振れが懸念材料となりました。また、AIを含む次世代技術の投入や新製品ラインナップの拡充も控えているものの、それがどの程度需要を喚起し、株価や業績を押し上げるかは不透明です。ビッグテック各社の株価動向と合わせて、アップルの成長エンジンがどこにあるのか、今後も慎重に見極めていきたいところです。