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ビッグテック決算が目前、トランプ政権の影響に注目
新年が始まり、AIへの注目度はますます高まっています。そんな中、アップル(AAPL)やメタ(META)、マイクロソフト(MSFT)など、ビッグテック企業の決算シーズンがいよいよスタートします。今年は、AI開発に向けた投資やAI関連インフラ構築の進捗だけでなく、二度目の就任を果たしたトランプ大統領がどのように産業界に影響を与えるかが大きな焦点となりそうです。
ビッグテック決算の注目ポイント
AIへの莫大な投資や消費需要の動向はもちろん、新たに就任したトランプ大統領が課すかもしれない追加関税や規制緩和、あるいはCHIPS法の行方など、多岐にわたるテーマが投資家やアナリストの関心を集めています。
AIインフラへの支出と収益
大手IT企業ではAIを活用した新サービスの収益化が加速しています。AI関連のデータセンターや新たなモデル構築にかかる資本的支出(CAPEX)が増大する中で、企業がどのようにコストを管理しながら売上を拡大しているかが注目されます。
マイクロソフト(MSFT)は前四半期の決算で予想以上の売上とクラウド・AI分野の成長を示しましたが、その後の株価は下落。投資家はさらなるAI消費拡大を期待しており、今回の決算でもAI関連の需要動向が焦点になります。
メタ(META)は2024年のAI関連を含む設備投資額(CAPEX)を上方修正し、市場ではコスト増への警戒が強まっています。
一方、グーグル(GOOG, GOOGL)やアマゾン(AMZN)は前回決算でそれぞれクラウドや利益率の改善を示し、投資家から好感を得ました。株価の動きで見ると、この12か月でアマゾンは株価が約50%上昇、グーグルは34%の上昇。メタの株価も64%と堅調です。一方マイクロソフトは12%の上昇にとどまり、S&P 500が25%の上昇を記録する中ではやや見劣りしています。
トランプ大統領の影響
トランプ政権は関税や輸出管理、反トラスト法関連の取り扱いなど、テック業界に対して大きな影響力を持ちます。前回の政権下でもアップル(AAPL)はCEOティム・クック氏とトランプ大統領の良好な関係を維持し、関税回避に成功したとされます。今回も同様の動きが期待される一方で、アマゾンやメタ、グーグルなどの企業にとっては合併買収(M&A)や反トラスト法絡みの規制が緩和される可能性もあると見られています。
CHIPS法の行方
バイデン政権下で成立したCHIPS法は、半導体の国内生産を奨励するための巨額支援を含むものでした。しかしトランプ大統領はこれに否定的なコメントを出しており、法案の見直しや撤廃があり得るという懸念も浮上しています。インテル(INTC)、TSMC、サムスンなど、米国内に半導体工場を建設する計画を進める企業にとっては重要な資金源であり、もし支援がなくなれば計画に支障をきたす可能性があります。今回の決算では、これらの企業が政権とどのような対話を持ち、CHIPS法に対してどのような見通しを持っているかにも注目です。
TikTokの動向
メタやグーグルにとっては、ショート動画アプリ「TikTok」の去就が気になるところ。米国内で約1億7,000万人ものユーザーを抱えるTikTokが規制で利用不可になれば、インスタグラムやYouTubeへのユーザー移行と広告収入増が見込まれます。ただし、選挙期間中に「TikTokを守る」と語っていたトランプ大統領が、同社CEOの周受資氏と協力して運営継続を模索しているとも報じられています。果たしてアプリは存続するのか、それともサービス停止に追い込まれるのか、ビッグテックに与える影響も大きいだけに注目が集まります。
投資家視点で捉えるポイント
投資家としては、以下の点に注目する必要があります。
政策リスクと関税・規制動向
トランプ政権が施行するかもしれない輸入関税や輸出規制強化が企業のサプライチェーンや利益率にどのように影響するかを見極めることが大切です。また、反トラスト法の扱いが緩和される場合、M&Aによる成長期待が高まる可能性もあります。
AI関連投資のリターン
AIインフラやクラウド事業への投資がいつ頃どの程度収益につながるのか、各社の具体的な見通しを把握することは不可欠です。特にマイクロソフトやメタ、グーグルは大規模言語モデルやデータセンターへの投資額を一段と増やしており、投資効率に要注目です。
半導体事業の進捗
CHIPS法の先行きが不透明な中、国内外の半導体企業がどのように製造拠点を確保するのかも重要です。インテルやTSMCなどの新工場建設計画がとん挫するような事態になれば、長期的な供給体制に影響し、関連セクター全体に波及するおそれがあります。
TikTok問題による広告市場の変化
TikTokが禁止される場合、メタやグーグル、さらにはアマゾンなど他プラットフォームに広告が流れる可能性があります。短期的にはプラスになるシナリオも考えられますが、企業がどれだけ積極的にTikTokからの広告移行を取り込めるかがカギとなりそうです。
まとめ
2025年に入り、AI分野への期待が高まる中で幕を開けるビッグテックの決算シーズンは、トランプ大統領の二度目の就任による政策変化が大きく影響する可能性があります。関税や規制動向、CHIPS法の行方、そしてTikTokの存続問題など、企業の収益構造を左右するテーマがめじろ押しです。投資家にとっては、AI関連の売上増や設備投資とあわせ、政権とのやり取りを含めたリスク管理が一層重要になってくると言えるでしょう。