医者もセールスマンです
救急外来では、医師と患者さんが初対面のため、なかなか患者さんがこちらの言うことに同意してくださらないことがあります。しかし、命に関わることがあるので、どうしても患者さんに同意してもらわないといけない場合もあります。そんな際の心構えの話です。
先日、中年男性が救急車で来院され、研修医の先生と診療しました。私は、その患者さんに入院してもらった方が良いと思ったのですが、研修医の先生が、「患者さんが帰りたいと言っているので、今日は帰宅として、後日の専門科受診で良いでしょうか?」と言われました。
専門の先生が説明したら入院に同意するかも知れないから、帰る前に一度診てもらいましょうと伝え、私も研修医時代に同じような経験をしており、その体験を伝えましたた。そして、専門の先生が説明したら、やっぱり入院となりました。
まず私の体験は以下のような物です。
私が研修医の時はC型肝炎のインターフェロン療法が始まったばかりの頃で、当時は肝生検をし、肝硬変でないことを確認することが必須とされていて、肝生検を私はたくさんさせてもらいました。肝生検で入院されたある方の胸部レントゲンで胸水があり、色々検査をしたところ、心臓カテーテル検査が必要と言われました。私は、元気だし、特に胸の症状があったわけでもないし、心カテ(当時はすごい侵襲の大きな検査だと思っていました)までするの?と思っていました。私が患者さんに検査の必要性を説明したところ、患者さんは受けたくないと言われました。
指導医の先生にその旨報告したところ、それは絶対ダメだよ、心カテは絶対に必要!と言われ、指導医の先生が説明したら、患者さんはあっさり同意されました。
ちょっと落ち込んでいたところ、指導医の先生がおっしゃいました。
医者はセールスマンと同じだよ。売ろうとする商品が素晴らしい!是非お勧めです!と思って売らないと売れないでしょ。医者も同じで、この検査、治療が必要だよ!とまず先生が理解しておかないと。
その言葉はとても印象的で、ずっと若い先生に伝えてきました。私の著書にも書きました。
そして、今回は私の話だけでなく、実際に体験してもらえたと言うことです。是非、その研修医の先生が来年度入ってくる研修医の先生達にも伝えてくれたら嬉しいです。