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リズムチェック前に除細動器を充電しておくべきか?

心肺蘇生のお話です。

二次救命処置において、胸骨圧迫を出来るだけ中断しないようにすることはとても大切と言われています。胸骨圧迫を30回行ったとすると、1回目の圧迫と30回目の圧迫では血流を生み出す効果が全然違います。たらいに入れたお水をぐるぐる回して水がどのぐらい動くかを考えると良いとある人が言われていました。
以下の論文(Ewy GA: Circulation 2005;111:2134-2142)のFigure3をご覧ください。

二次救命処置中は頻繁に様々な形で胸骨圧迫が中止されます。機会があれば、是非何もしない状態(が許されれば)で見学してみてください。胸骨圧迫をしている時間の方が少ない場合もあります。

よって胸骨圧迫の中断は誰かが気にしていないといけないでしょう。

例えば、心室細動の患者さんの蘇生をしている場面を考えると、以下のような感じです。
(1)10時00分00秒 今からリズムチェックをするから胸骨圧迫を止めて!
(2)10時00分05秒 心室細動だからショックします!
(3)10時00分10秒 充電開始します!
(4)10時00分15秒 充電完了しましたので、ショックをします!
(5)10時00分20秒 電気ショック完了。
(6)10時00分25秒 胸骨圧迫再開。
この場合、何と25秒も胸骨圧迫が止まっています。もっと短い場合ももちろんあるでしょうが、よりもっと長いこともあるでしょう。
例えば、(2)から(4)の間胸骨圧迫を再開していれば、胸骨圧迫の中断時間は短くなりますが、短時間の胸骨圧迫を繰り返しても、しないよりはマシですが、長時間連続した圧迫に比べたら効果が悪いです。

胸骨圧迫の中断を短くする一つの方法として、除細動器の充電をあらかじめしておくと言う方法があります。こちらも試していただくと良いですが、講習会ではエネルギーは少量(なんちゃって200J)ですので、直ぐ充電が完了しますが、実際はもう少し長いです。よって、あらかじめ充電しておけば、上記の(3)が不要になります。充電したパドルを空中に持ち上げて器械から患者さんの身体にもっていってはいけないという意見もありますが、それについてはここでは無視して(パドルではなくパットをあらかじめ貼っておけば良いです)、胸骨圧迫の中断時間が短くなるはずです。

それについて検討した研究が何とあるようです。日本蘇生協議会のガイドライン2020にあります。書籍ではP.98にあります。

「ALSで手動式除細動器を用いる場合、リズムチェックの前に除細動器を充電しておくべきか?」と言うところに、「十分なエビデンスがないため、リズムチェックの前に手動式除細動器を充電することについては、推奨には至らなかった」とのことです。研究をする場合に、あらかじめ充電をしてあるかどうかが蘇生を行っている人たちに分かってしまうからでしょうか。

実際の救急現場では、あらかじめ充電しておいてもいいですが、その際は感電しないように注意が必要です。

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