医師や看護師の給与が高いと考える前に

医者は給料もらいすぎとか、看護師ももらいすぎとか、いや少ないとか突然Twitterなどで意見を見るようになりました。そう言うニュースがあったようですね(11月13日訂正、そのようなニュースがあったというのはデマだったようです)。

私は勤務医ですが、給料をもらいすぎているのかどうか、よく分かりません。たぶん平均よりはもらっているのでしょう。そして、正直もっともらえたらと思います。決して今の生活が楽だとは言えませんし。

それについては、アホかお前!と言う方もおられると思うので、今回は無視してください。

医者や看護師の給料が高いかどうかを判断する前に、少し考えてみてください。大物俳優の方や大物歌手の方は、たぶんかなりの収入があると思います。スポーツ選手とかもそうです。もらいすぎだ!給料減らすべきだ!と思うでしょうか。思いませんよね。彼らは才能があり、それによって我々を楽しませてくれています。もっと給料が増えて、もっと楽に生活していただき、もっともっと我々を楽しませていただきたいです。

医者や看護師の給料が高いと怒る方は、きっとろくに働いていないくせにと思っているのではないでしょうか。そんな方々に、日本の医療はこんなに素晴らしいんですよ!と言う事を知ってもらいたくて記事を書きます。

医療は3つの面があって、同時に3つを満たすことは無理だと言われているようです。3つとは、費用、質、かかりやすさです。ほんとかよ!って思うかも知れませんが、本当なのでちゃんと聞いてください。

日本の医療の費用(患者さんが払うお金)はとても安いです。例えば虫垂炎の手術を受けて入院すると、日本では実費でも50万円ぐらいまでしかかかりません。アメリカでは200万円を越えたりすることもあるようです。つまり、一つ一つの医療行為の値段が安いのです。
また、日本は人によりますが多くは3割負担です。50万円医療費がかかっても15万円で済みます。また、高額療養費制度というのがあって、収入が少ない人は15万円も払わなくてもいいです(一度払うのですが、あとで返ってくる)。
そして、日本はお金を当日払わなくても医療が受けられます(支払いを踏み倒す人もいて病院は困っていますので、ちゃんと払ってくださいね)。例えば、アメリカなどでは、お金を持っていないと診察すらしてもらえないことがあります。
逆にイギリスは住民であれば原則無料です(が、後で書きますが制限があります)。処方された薬の処方に費用がかかるようです。費用に関してはイギリスが世界最高です。

次にかかりやすさです。日本では平日に限らず、土日祝日夜間いつでも基本的にどこかで診療を受けられます。それも、予約なしで受診しても、必ず当日に診てもらえます。そんなの当たり前じゃないの?と思うかも知れませんが、こんなことは世界ではまれなことです。アメリカはお金さえ払えばいつでも診てもらえますが、前述のようにべらぼうに高いです。イギリスは制度が特殊で、大きな病院をいきなり受診することは原則出来ません。救急で受診しても何時間も待たなければならないようです。イギリスでは、住民となるとかかりつけ医(GPという)と契約しなければならず(いつでも変更自由)、まずはGPを受診し、その医師が必要だと認めた場合にのみ大きな病院を受診出来ます。当然ちょっと頭を打ったぐらいでCTなんて撮ってもらえません(世界中のCTのほとんどは日本とアメリカにあります)。ちなみに、イギリスの医者は専門医でなければ、原則GPであり、その医師は登録した住民の数で給料が決まるため、無駄な薬は出しません(日本では残念ながら必要のない薬を出して収益を得ようとする人がいます)し、予防に努めて患者さんが減れば、楽して給料がもらえますから、理想的な医療が出来るのではないかと思います。かかりやすさは日本が一番です。アメリカはお金さえあれば。イギリスは緊急時のかかりやすさは良いとは言えません。

質は世界のどの国に比べても日本は劣っていないと思います。前述の二つの為に、日本では容易に患者さんが受診し、病気の超早期で受診されることがあります。この場合の診断は非常に難しいです。日本の医者はこれらに毎日対応していますので質が高いはずです、、、、、、知らんけど。アメリカでは専門医になるには厳しいトレーニングや試験に合格しないとダメですし、イギリスは人口何万人に専門医何人と決まっているため、専門医になるには優秀でないと難しいらしいです。質は先進国は皆高いと思います。

お分かり頂けたでしょうか。アメリカは質とかかりやすさはお金次第という事です。お金があれば良い医療がいつでも受けられます。が、お金がなければ、、、、、、です。よって風邪をひいたぐらいで病院に行く人はいません。薬屋さんで薬を買った方がべらぼうに安いからです。
イギリスは安くて質が高いのですが、かかりやすさはそうでもないです。

そして、日本は何と質と費用とかかりやすさの全てを満たしているのです。そして国の医療費の対GDP比は先進国中最低です(日本のGDPが高いからかも知れませんが、以下の資料では一人当たりの医療費も少なく、日本の医療費の値段が安すぎるのではないかと思います)。当然患者さんの数は多いです。

この日本の素晴らしい医療を誰がどうやって支えているのか考えてみてください。病院のスタッフが定時で帰れる事はほとんどありません。昼の休憩もちゃんと取れないことはしょっちゅうです。ちなみに、医者には労働基準法で言うところの休憩時間はありません(緊急連絡のためのPHSの電源を落とすことが許されないからです。解釈は色々のようですが、私は医者に休憩時間はないと信じています)。家に帰っても電話がかかってきたり、緊急に呼び出されたりする事もあります。

この日本の医療の素晴らしさを支えている医療スタッフが高給取りでいけないですか?はい、いけないですと言われる方が多ければ、それは仕方ないと思います。きっと今の制度は維持出来ませんので、熱があるから診てもらいたいと受診しても、今日は予約一杯で受付出来ないので、明日また来てくださいと言われる様になるかも知れません、、、、、、知らんけど。

こちらのサイトには日本は薬剤や材料費が高いとあります。病院も苦しい経営状況にあります。医療費が下げられたら潰れてしまう病院もあるかも知れません。

医師や看護師の給与について考える前に、是非この事を知っておいて欲しいです。そして、この日本の素晴らしい医療制度をこれからも続けていって欲しいです。

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