あの林の秘密
新幹線の車窓を眺めていたら、変なスポットが目に入ってきた。東北の田舎町を、北に向かってひたすら走っている真最中の出来事だった。田畑の広がるこのエリアの中に、ちょうど田んぼ1区画分のスペースの林がある。山が取り残されたようなその場所をよく見ると、神社の鳥居のような物の端が目にとまった。
「もういいかい?」
ふと口をついて言葉が飛び出した。無自覚な呟きに自分でも驚く。
「まーだだよ」
耳元で直接囁かれたような声が聞こえた。隣を見ても、後ろを見ても、誰もいない。おかしいな。
心の中で10秒カウントした。
そしてまた問いかける。
「もーいいかい?」
耳元で楽しそうな子供の笑い声が聞こえた。女の子だろうか?
「もーいいよ。」
隣の座席に手を置くと、さっきは何もなかったはずのその場所には、丸い紙風船のような物が置かれていた。
「もうすぐ、盛岡に到着します。」新幹線の車内には、角張った声のアナウンスが流れ始めていた。
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