色彩生理学
私たちは普段、色を見てある人は恐怖を覚え、またある人は安らぎを覚えます。
このように人は色によって感情が動かされています。
逆に考えれば人はある程度なら、色によって感情をコントロールできるということです。
今回学ぶことは、「色を識別する仕組み」、「色の生理的効果」、「ビジネス、ファッションへの活用」となります。
色を識別する仕組み
色の正体とは光で、その光の波長の違いが色の違いとなる。
波長の長さによってもガンマ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線などがあり人間が見える範囲は可視光線とされている。
可視光線の中で一番波長が短いのは紫の380nm、長いのは赤の780nmである。
これは虹を見ればわかることだが、一番下の色が紫で一番上が赤で、上に行けば行くほど長くなっていく。
私たちがリンゴを赤く見えるのは、りんごに当たった光のうち赤の光だけが反射して目に届くから。
つまり、物体の色というのは全部の色を含んだ光のうち吸収されずに反射したもの。
この反射した赤の光だけが人間の目の網膜に当たり、中の錐体という器官によって電機信号に変えられ脳に伝わる。
この錐体という器官で光の三原色(赤、青、緑)の比率を感じ取りその情報が脳を介して色として見える。
錐体は色を識別するのに対し、桿体細胞は明るさに反応する。
この桿体細胞は明暗を見分ける器官で、明るい部屋からいきなり暗い部屋に入ると最初は真っ暗で何も見えないが徐々に慣れてきて物が見え始める。この現象を暗順応という。
また、色の最小単位は素粒子なのでエネルギーを持っている。このエネルギーの違いによって色の濃さが決定する。
色の生理的効果
赤
赤色はアドレナリンの分泌を促し血流が促進される。
また、暖色系の色は素粒子のエネルギーによって肌に熱を吸収しているため体感温度が高くなる。
さらに赤は可視光の中で一番波長が長いから、一番遠くまで届き目立つ色である。実際、信号機などにも止まれのサインに使われている。
青
青色はセロトニンの分泌を促し、血液の生成や神経の安定に貢献する。
その結果、リラックス効果と集中心が生まれる。
また、青はメラトニンの分泌にも関わっていて疲労を解消し睡眠を誘う。
最近では、日本でも街頭に青色の照明を使って犯罪を減少させている地域が増えている。
セロトニンが犯罪への意欲を充足させるから。
橙
橙色はインシュリンの分泌を促し血圧を低下させる。常に高血圧の人は橙色をみじかな所に置くだけでも効果があるかも?
黄
黄色はエンドルフィン(運動したときなどに分泌されるホルモン)の分泌を促し人を朗らかにする。
緑
緑色はアセチルコリンというホルモンを分泌し頭の回転や記憶を活性化させる。
また、アセチルコリンはレム睡眠中に活発に働き、疲労、細胞の再生などの効果がある。
このように副交感神経が優位に働くからリラックス効果も期待される。
青紫
青紫は食欲を抑制する作用があるオブスタチンの分泌を促し、集中を高めてくれる。
昔、青紫のふりかけがダイエット効果があると言って販売されていたそう。
紫
紫色はノルアドレナリンを自律神経の末端に分泌し、不安や恐怖感を引き起こしたり、痛みを感じにくくなる。
また、記憶を活性化させるなどの働きがある。
ビジネス・ファッションへの活用
駅の通路などにはよくポスターが貼ってあるが、そこにも広告として人目を引く仕掛けがある。広告用語ではアイキャッチャーという。
よく使われるアイキャッチャーは人物の写真。
人気タレントやスポーツ選手などがよく使われる。
そして、色にもアイキャッチャーの力がある。
その力のことを色の誘引性という。
誘引性が一番強いのは赤色。
誘引性は波長の長さが関係していて、波長が長いほど誘引性がある。
色のもつ誘引性が効果を発揮するには大前提として背景がその色を活かすものでなければならない。
これを色の重畳性という。
全体に占めている色を見て、その補色に近い色やコントラストの強い色を選べば人目を引くことができる。
よく赤い刺身の横に緑の葉が添えられているがそれは刺身をより新鮮に見せるため。
看板は遠くからでもよく見えるように工夫されている。
この遠くからでもその色を認識できる性質のことを色の視認性という。
ある色の視認性を高めるにはまず地色(背景色)を無彩色にする必要がある。(黒や白、灰色など)
実験で視認性が高いのは、白地の場合は黄緑、橙、赤、黄。
灰地の場合は黄、赤、橙、黄緑。
黒地の場合は橙、黄、黄緑、赤の順になる。
これらの結果から、地色が無彩色の場合は暖色系の色が視認性が高い。
しかし、この視認性は環境などによって変化する。
夕方のような低照明になると寒色系である緑や青も視認性が高まる。
この現象をプルキニエ現象という。
色によっても目への負担は変わる。
黄色などを見つめていると目が疲れてこないだろうか?黄色などの有彩色などは無彩色と比べると色の可読性が低いと言える。
色の可読性とは文字の通り読みやすさのことで目に負担をかけない色のこと。
つまり、長時間見る場合は無彩色の方が負担は少なくなる。
色にも心理的な重さがある。
人は黒より白の物の方が軽く感じる。
実際に友達などに同じ重さで黒と白のダンボールを持たせてどっちが重い?と聞いてみてください。
多分黒のダンボールの方が重いと答えるでしょう。
最近では引っ越し屋のダンボールも茶色から白のダンボールが増えている。
色によって大きさが変わる?
明るい色や暖色系の色は膨張して見え、逆に暗い色で寒色系の色は収縮して見える。
つまり、波長が長い色ほど膨張して見える。
服を着るときなどは黒などを着るとシュッとして見える。
まとめ
このように色というのはその色のもたらす効果などを知っているだけでビジネス・ファッション・生活のあらゆるところで活用できます。
参考文献
色の新しい捉え方〜現場で「使える」色彩論〜(光文社新書)
南雲治嘉
http://www.my-craft.jp/html/aboutled/led_hachou.html
https://www.desi-k.com/2013-07-05/345
https://optica.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-2a2f.html
https://blog.goo.ne.jp/maduka/e/5c69f76586962a171d0fe280e81a4e44
https://cc.musabi.ac.jp/zoukei_file/03/sikisai/taikei.html
https://spc-jpn.co.jp/blog/10935/