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アルベルト・カミュ「異邦人」の文章は なぜ、たどたどしい文章なのか・・・。

「異邦人」を読み解くポイントは
主人公ムルソーの思い出語り、という点にあります。

平易で感情のない文章
たどたどしい文章。
全て、思い出語りだと思うと納得がいきます。

それを踏まえて読んでいくと・・・。
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第一部-1

「今日、ママンが死んだ」

知らせを受けた主人公ムルソーは
養老院へ向かう。

ママンの棺を取り囲むようにして座っている
院長、看護婦、そして友人たち。
たった一人の友人という女性が泣き出す。

そんな彼らを
ムルソーは、他人事の様に観察している。

「異邦人」というタイトルの意味が
何となく分かるような気がしてきませんか?

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真夏の炎天下
ママンを埋葬する墓地へ向かう途中
看護婦が言う。

「ゆっくり歩くと日射病に罹る恐れがあります。
けれども、急ぎすぎると
汗をかいて教会で寒気がします」

ムルソーは思う。
彼女は正しい、と。
逃げ道はないのだ、と。

ムルソーの運命を
示唆しているように思えてきます。

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第一部-2

ママンの葬儀の翌日は土曜日。
ムルソーは、女友達のマリーと海に行き、映画に行く。

ママンは、もう埋められてしまった。
ムルソーは思う。
「結局、何も変わったことはなかったのだ」

ボクは、ここまで読んで
ふと思いました。
ムルソーは、無理に
そう思うようにしているのかもしれない、と。

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第一部-3

ムルソーのアパルトマンの二人の住人が登場します。

一人は、サラマノ老人。
飼っている犬を手酷く虐待している。

もう一人は、レエモン・サンテス。
情婦を日常的に引っ叩いているようだ。

一番身近なものに、むき出しの暴力をふるう二人。
ママンの死さえ、無関心でいるムルソー。

不安な要素が充満しています・・・。

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第一部-4

サラマノ老人の飼っている犬が行方不明になった。
手酷く虐待をしていた老人は、涙を流している。

ひどくぶたれたレエモンの情婦が
思い余ってとうとう警察を呼ぶ。

ムルソーは、というと
愛しているかとマリイに聞かれ
「愛していない」と答えてしまう。

破滅に向かう予感がしますが・・・(;^_^A

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第一部-5

結婚したい?とマリイに聞かれ
してもいい、とムルソーは答える。

愛している?とマリイに聞かれ
愛していない、と答える。

なぜ私と結婚するの?と聞かれ
君がそう望むからだ、とムルソーは答える。

そんなムルソーにマリイは惹かれ
そんなムルソーを嫌いになるかもしれないと
マリイは言う。

少なくともムルソーは
「嘘」だけはつかないということがわかります。

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第一部-6

その日は
ママンを埋葬した日と同じ太陽が照り付ていた。

アラビア人がナイフを抜く。
ムルソーは、しなやかに引き金を引く。

「不条理」そのものであるムルソー。
ここからは
彼の身に起こる「不条理」が始まります。

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