貧しい国にフェアな貿易を~國岡徹
世界の多くの地域で、なぜ貧困がなくならないのでしょうか。貧しい国が成長するためには、フェアな貿易の推進がたいへん重要です。「援助よりも貿易を」という議論もあります。
だれもが国力を牽引するには貿易が必要であると知っています。二つの国が貿易を交わす時、双方が利益を得ることができます。しかし豊かな国が貧しい国との貿易に積極的になれないのには大きな理由があります。
まず、「互恵主義」という貿易の原則に固執しています。つまり、他国に財の関税の引き下げを提案し、その国に売ろうとする財に同様の取り扱いを求めるのです。
言うまでもなく、貧しい国の経済ははるかに規模が小さいです。それゆえ、この対等の扱いのせいで、豊かな国で競争するうえで必要な貿易障壁の緩和・撤廃交渉が難航します。たとえば、アメリカがバングラディッシュからの輸入に対して、フランスからの輸入に比べてほぼ10倍の関税を課しているのはこのためです。
同時に、豊かな国は、貧しい国が真に競争優位を有していると思われる経済分野で、1日当たりおよそ10億ドルの援助を拠出しています。その分野とは農業です。
多くの貧しい国において、この農業援助は危険な意味をはらんでいます。真の経済開発はボトムアップのものでなければならないからです。農業からの余剰は工業製品の購買や投資資金に変わり、製造業の余剰が同じくより複雑な消費と生産につながっていきます。
また、豊かな国は己が優位に立っている分野で、自由貿易を推進しようと政治力を行使します。貧しい国から買うことより、売りつけることばかり考えています。しかしこれも、近視眼的な戦略でしかありません。
豊かな国が貧しい国から買うことによって、豊かな国の消費者が負担するコストを引き下げられるだけでなく、貧しい国の購買力を引き上げ、豊かな国の商品により大きな市場がもたらされます。
豊かな国はその代わり、何がしかの援助によって貧しい国の購買力を人為的に引き上げようとします。さまざまな二国間もしくは多国間を通じて、1週間にほぼ10億ドルも提供しています。
國岡徹
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