貨幣
ここからいくつかの記事を通して、少しずつお金の正体について学んでいきます。手始めに、現金紙幣の実体を知っていただきましょう。
貨幣とは
貨幣とは、いわゆるお金のことです。英語では、ずばりmoney(マネー)です。日本銀行では、紙幣と区別する意味で、硬貨(コイン)のことを貨幣と呼びますが、以降の一連の記事ではあくまでも「お金」のことを意味します。
下の画像は、日本銀行のウェブサイトに掲載されているものです。
この紙切れ(日本銀行券)の正体、なんの印刷物かというと・・・
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「借用書」と呼ぶ人もいますが、私はあえて「負債証明書」と表現します。「債務証明書」でも構いません。意味はすべて同じです。
現金紙幣は、日本銀行の発行する負債証明書であって、債務者は日銀、債権者は紙幣を持っている人です。
おや? と疑問に思いませんか。1万円札ってお金そのものですよね。持ち主が債権者ということは、日銀に1万円の貸しがある、と・・・では日銀に何を貸しているのでしょう。貸しがある方が、なぜ手元にお金を持っているのでしょうか?
実は、皆さんの「お金」に対する理解が間違っているのです。現代のお金(貨幣)は、貸しがあることの記録あるいは債権(=負債証明書)のことなのです。「債務と債権の記録」「貸し借りの関係」と説明する人もいます。
Wikipediaの「貨幣」を見てみましょう。
「負債の一形式」とあります。貨幣の概念をきちんと理解していないと、この定義はちんぷんかんぷんですよね。
ちなみに、上の定義は本記事執筆時点にあったもので、2020年11月21日にこの定義は別のところに移されています。Wikipediaは誰でも書き換えられるため、こういうことが発生するのは防ぎようがありません。
現金紙幣は日銀にとって○○!?
さて個人でも法人でも、それぞれのバランスシート上では当然、現金は「資産」に計上しますよね。
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ところが、日銀のバランスシートでは、現金紙幣は「負債」に載っているのです。これ、正しい事実です。(えっ!?)
本当でしょうか? 事実確認しましょう。日銀のバランスシートは公開されていますので、誰でも検証可能です。日本銀行/日本銀行について/決算・会計に、過去分含めた決算情報が公開されています。
例えば執筆時点では、「第136回事業年度(令和2年度)決算」が参照できます。財務諸表等(PDFファイル)を開くと以下のように書かれています。
「発行銀行券」というのが、発行済みの現金紙幣のことです。世の中に出回っていると日銀が認めている銀行券が約116兆円分あるということです。これまで発行した銀行券から、回収して処分した分などを差し引いた、発行残高記録なのです。
なお、資産の部にはまさしく「現金」があります。日銀は硬貨や紙幣の在庫管理もします。手元にある現金は、あたりまえですが「資産」として計上します。発行銀行券の金額のたった0.2%、2千億円ほど手元にあるようです。
まとめ
要するに、現金紙幣とは無から資産(債権)と負債(債務)として生まれ、負債は日銀に残り、資産が現金紙幣として流通する貨幣(お金)なのです。これ、まごうことなく正しい事実です。否定のしようがありません。
さて結局のところ、現金紙幣の持ち主は日銀に貸しがあるのでしょうか。日銀に現金紙幣を持ち込んで、債権を行使できるのでしょうか?
はい、実はできます! 日銀に古くなった負債証明書(現金紙幣)を渡せば、「お金」である新品の現金紙幣(負債証明書)で返済してくれます!(笑)
それで、何か問題あるんですか? なんにもないですよね。日銀に貸しがあることになっていますが、その貸しを証明する券(=債権)そのものがお金なんですから。