医療者向けブログ戦略、必ず知っておくべき基礎知識
最近、ブログを始める医療従事者が増えているようです。
ブログ運営の方針は人それぞれ。
「こうあるべき」というルールはありません。
思うままに、自由に書けるのがブログのいいところです。
私が拝見するに、ブログの目的は以下の二つに大きく分けることができると思っています。
①日々のイベントや旅行記、書評などをまとめてストックする”自分のための”備忘録
②自分の持つ知識やノウハウを使い、”他人に向けて”情報発信するサイト
このうち難度が高く、精神的にも辛いのは②の方です。
「他人に読まれること」を目的に書くと、「一生懸命書いたのに他人に読んでもらえない」というリスクを負うことになるからです。
文章を書くにはかなりの時間と手間がかかります。
①のように自分のためであれば、誰にも読まれなくてもモチベーションを損なうことはありません。
自分を磨くために粛々と継続できます。
ところが、他人による受信だけを目的としていればどうでしょう?
時間をかけて記事を作っても読まれない、という状況が続いてもなお書き続けられる人は多くありません。
そのうち、意欲を失って更新が止まってしまうでしょう。
②の方針で、つまり自分の書いた記事を他人に読んでもらうことを目的にブログを運営するのであれば、かなりのノウハウが必要になってきます。
私たちが思う以上に、人は他人の書いた文章に興味はありません。
「自分の書いた文章を読んでもらうこと=他人の時間を奪うこと」です。
これだけ難度の高い挑戦をする以上、それなりの勉強が必要、というわけです。
このノウハウに関して、まず入門編として私は「開設4ヶ月後に月間67万PV達成!ブログ作成のコツをデータを公開して解説」というnoteを書いています。
もちろん私の意見が正しいとは限りませんし、「ノウハウ」などと偉そうに言えるほどの実績もないことは承知しています。
ただ、この入門編の内容を全く知らないと、②の方針での運営が難しいことは間違いありません。
その上でこの記事では、医療従事者向けに特化した内容を追加でお送りします。
ブログの原則
まず、②の目的でブログ運営をするのであれば、集客の基本はSEOです。
検索エンジンで疑問について調べたユーザーに、オンデマンドで情報を提供できるアーカイブをネット上に作る、という感覚です。
(これが「???」であれば入門編を読んでください)
多くの方は、調べ物をする時にGoogleなどの検索エンジンを利用します。
そして、たいてい上位の1、2ページを見て満足し、ウィンドウを閉じています。
よって、検索エンジンの上位に自分の記事を表示させなければ、多くの人に読んでもらうことはできません。
ちなみにYahoo!の検索エンジンを使用する方もいますが、システムは同じGoogleのものが使われています。
ただし、医療の専門家が記事を作る際には、注意すべきことがあります。
病名・症状名キーワードでの集客は不可能
現在の検索エンジンは、病名や症状名では、上位に医療機関・公的機関や、製薬会社など企業のページを優先的に上位表示するアルゴリズムが採用されています。
以下をご覧ください。
病名、症状名に関わるキーワードを、1位〜10位まで、私が手作業で調べたものの一部です。
(※本記事執筆当時のデータ。一部10位がないものあり。GRCなどのチェックツールは使用していないため、あくまで参考程度とお考えください)
黄色は公的機関や医療機関、学会のサイト、青色は製薬会社のサイトです。
上位をこれらのサイトが独占していることが分かります。
この記事を読んでいる方が始めようとしている、あるいはすでに始めているような「個人ブログ」は、上位にはほぼ皆無です。
医療とは全く関係のないキーワードで調べてみると、この異様さが際立つと思います。
Googleは多様な検索意図に応えることを重視するため、普通はこのような偏った検索結果を返すことはしません。
医療系キーワード以外であれば、個人運営のブログやキュレーションサイトなどが多数出てきます。
1年半ほど前までは、医療系ワードでも同じ状況でした。
病名、症状名で上位表示されていたのは、個人ブログに加え、WELQ、ヘルスケア大学、いしゃまちなどの医療・健康系キュレーションサイトや、一部のアフィリエイトサイトでした。
ところが、2017年末から段階的に検索アルゴリズムが変動し、これらのサイトのほぼ全てが圏外に飛ばされました。
病名、症状名キーワードを使って私が書いた記事も例外ではなく、以下のように段階的にPV数が削られた記事は多くあります。
そして最終的に、検索上位は上図のような顔ぶれになった、というわけです。
私はSEOの専門家ではありませんが、ブログを運営する中で毎日のようにこの変化を注視してきたので、とてつもなく大きな変化が起きたと身にしみて感じています。
(私のブログは多い時で60〜80万PV/月を推移していましたが、この結果として今は20万PV/月程度です)
キュレーションサイトの席巻とWELQ問題
こうしたアルゴリズム変動の契機となったのが、WELQ問題でした。
現在、WELQのサイトを訪問すると、以下のような状態になっています。
DeNAが運営していた医療・健康情報サイト「WELQ」は、多くの素人ライターにマニュアルに沿って記事を外注し、膨大な数の記事をネットの海に投下していました。
検索エンジンを攻略し、記事が低品質にもかかわらず、病気や症状に関する多くのキーワードで上位表示に成功していたのです。
実は、上で例に挙げたキーワードは、当時WELQが1位だったものから選びました。
心筋梗塞、大腸がん、腸閉塞、肩こり、動悸、結核、口内炎、生理痛、鼻づまり、ヘルニア、胃痛…
毎日何度も検索されると思われる、あらゆる医療系キーワードで全て1位を独占するという、悪夢のような事態が現実に起こっていました。
そしてこれらの多くが間違った内容であるだけでなく、他サイトから無断に転用された記事も多く見られました。
私がブログを始めようと思ったのは、この「地獄絵図」を見て、
「せめて自分の専門分野くらいは素人ライターの書いた記事より上位に表示したい」
と思ったからでした。
2ヶ月ほどかけて100本以上必死で記事を書いた結果、当時は一部のキュレーションサイトと互角に戦えるようにもなっていました。
しかし、大型キュレーションサイトは、1日に数十、数百という速度で記事を更新します。
とても個人で太刀打ちできるレベルではありませんでした。
誤った医療情報は、ユーザーの健康被害につながる恐れがあります。
こうした状況が社会問題化した結果、Googleが動いたのです。
アルゴリズムの変動
Googleは2017年12月6日、健康や医療に関わる記事の検索アルゴリズムを大幅に変動させたことを発表しました。
このアップデートは医療・健康に関連する検索結果のおよそ 60% に影響したとされ、過去最大級の順位変動でした。
ネット上では「健康アップデート」と称されています(Googleが正式に命名したわけではありません)。
その後の経緯は前述の通りです。
この記事を読む医療者の中には、自分の専門分野の医学知識で情報提供したい、と思っている方がいるかもしれません。
しかし、例えば、私が「腹痛の原因」や大腸がんについて解説したり、循環器内科の先生が「胸痛の原因」や心筋梗塞について解説したりした記事を、SEOで読者に届けることはほぼ不可能です。
これは残念なことですが、かつてあまりにずさんな記事が上位にあふれていた時代を思えば、ユーザーにとってはむしろ安全になったとも言えます。
また、そもそも医師という資格を持つ人であっても、必ずしも信頼性の高い情報を発信するとは限りません。
いわゆる「トンデモ情報」を有資格者が発信している様を見れば、「有資格者であることは、必ずしも記載した内容の正確性を保証しない」と容易に気づけます。
この点では、医療機関や製薬企業のサイトのように、複数の専門家のレビューを受け、かつ更新性が維持されているサイトには勝てません。
よって私たち医療者は、病気・症状を解説する記事においては、公的機関や医療機関、製薬会社などの企業に任せる、あるいは必要に応じて支援する仕組みを作る、という方向性で動く方が無難だと考えます。
もちろん、症状名、病名ど真ん中のワードで攻めず、かつ医療者であることを生かしたコンテンツの作成は可能です。
私のブログの中にも、上図のようにPV数が段階的に減った時期とほぼ同じ時期でも、以下のように無風だった記事はあります。
医療者であれば、病気や症状以外にも、英語学習、論文執筆、研究、留学、資産運用、税金対策、資格取得、転職など、解説できるジャンルの選択肢はいくらでもあるでしょう。
また、当然自分の「職業」にこだわらなければ、選べるジャンルは無限です。
「初心者向け!ブログジャンルの決め方・考え方 具体的な3つのポイント」の記事に、ジャンル選びに関するポイントをまとめていますので、ぜひ読んでみてください。
また、自分のブログに本気で集客したい、と考える方は「開設4ヶ月後に月間67万PV達成!ブログ作成のコツをデータを公開して解説」を読んでみてください。
この記事だけは有料にさせていただいていますが、きっとお役に立てると思います。