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忘れかけた記憶(短編小説)
執筆者
#有度の里 #Ishikawa・Hironao
リハビリに関する物語を書いてみました。この物語はフィクションであり、実在の人物と団体とは関係ありません。すこしでも福祉の魅力について知ってもらえると幸いです。
リハビリに通う夏子。書くリハビリにチャレンジ
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夏子は83歳。彼女は一度も文字を紙に書くことはなかった。
しかし、最近の転倒事故後、
病院のリハビリセンターに通っている最中、セラピストから提案されたのは「書くリハビリ」だった。
「夏子さん、昔の思い出や日常の出来事を書くのはどうでしょうか?」とセラピストの美紀は優しく提案した。
「私、書くことなんか得意じゃないわ」と夏子は頭を振った。
「だからこそ、新しいことに挑戦するのもいいかもしれないですよ」
と美紀は優しく語りかけた。
最初は乗り気ではなかった夏子だったが、しばらくすると彼女の心は変わった。物語を紙に書き始めると、彼女の中の古い記憶が甦り、かつての忘れていた自分の若い日の情熱や夢、恋の記憶が蘇ってきたのだ。
若かりし頃を思い出す
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ある日、彼女は書き留めたことから、若かりし日の恋人、清二との思い出を書き始めた。
「戦争が終わったら、2人で新しい世界を作ろうね」と夏子は思い出す。
リハビリが進むにつれて、夏子の手の筋肉が鍛えられ、文字を書くことが楽になっていく。
「あれ、前より書きやすいかも」と夏子。
夏子の作品が希望を与える
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ある日、美紀が夏子の物語を読んで、涙を流していた。
「夏子さんの物語、とても感動しました。他の人たちにも読んでもらったらどうでしょうか」
「分からないけど、試してみる?」と夏子は言った。
夏子の物語はリハビリセンターの壁新聞に掲載されて、多くの患者と希望を与えたそうだ。夏子は文字を紙に記すということを発見してから、今でも物語を書き続けている。
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