サッカー少年団が抱える課題についての考察。サッカーチームのパーパスとは
※「サッカー少年団」と書きましたが、これから書く内容は恐らく”多くの”サッカー少年団が抱えている課題であり、その課題は少年団に限らずクラブチームも抱えている可能性があります。またサッカー以外のスポーツにも当てはまる可能性があるのではないかと思います。
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先日、育成年代のサッカーのコーチをされている方とお話をしたのですが、その時に伺った話で、印象に残っていることを書き留めておきたいと思います。
ご自身も育成年代のサッカークラブの代表をされている方なのですが、近所の少年団のチームの代表の方からの依頼で、その少年団の一つのカテゴリーの外部コーチをすることになって、色々と大変だということでした。
少年団に外部コーチというのは稀なケースだと思いますが、報酬は少額ながら発生しているとのことでした。
お話を伺ってみると少年団の課題が見えてきたので、書き記しておきたいと思います。
指導者間のコミュニケーションがない
その少年団のあるカテゴリーの練習を見ていると、コーチの高圧的な指導によって子供たちが萎縮してしまっていたそうです。コーチの顔色を伺いながらプレーをしているので、練習後に声をかけたそうです。
「お疲れ様でした。あんまり言いすぎてしまうと子供たちが楽しんでプレーできないですよ」と。
すると、「試合で勝てないから少しくらい強く言わないとダメなんですよ」と言われてしまったそうで、コミュニケーションがなかなか難しいです、とお話ししてくれました。
私は、まずはそのコーチと仲良くなることが必要じゃないでしょうかと話をしました。人間関係ができていない段階で指導について指摘をされるとなかなか受け入れられないので、まずはお互いを知ってから指導の話をした方が良さそうな気がしますとお伝えしました。
多少時間かかっても、コミュニケーションを大事にしていきましょうと。
また別のカテゴリのコーチの指導は、子供たちがやんちゃなこともあって自由にやらせていて、オーバーコーチングなことは決してないものの逆に必要なタイミングで必要なコーチングができていなかったそうです。
子供たちのポテンシャルは高いのに、危険なプレーをしてしまったり、仲間を助けるべき時に助けなかったり、そんな場面があるのにも関わらず、放置してしまうと。
そんなコーチとのコミュニケーションも、やはりなかなか上手くいかないという悩みをお話ししてくれました。
少年団のコーチ全員でのミーティングはどんなことを話すんですか?と聞くと、ミーティングがないんです。代表とそれぞれのコーチと話したり、元々仲良しのコーチ同士で話したりはしてるんですが、コーチ全員集まって話をする機会はないですね、と。
そんな話を聞いて、いくつか提案してみたいと思います。
指導者の考え方を発信する
クラブのHPやブログでの発信、コーチがnoteなどで発信することも大切なことだと思います。
大学生の頃、はじめてサッカーコーチとして携わったクラブでのエピソードですが、コーチになったばかりの時に何人かの保護者の方に、コーチはどんな実績があるの?どんな考えのもとに指導しているの?と聞かれました。
その頃から、当時のクラブの代表が考えていることをクラブHPで発信しはじめました。
20年前なのでクラブHPすらないクラブがほとんどだった時代です。
指導者として大切にしていること、育成年代で起こっていること、それを踏まえてどんなスタンスでいるか、試合、練習での出来事を踏まえて子供たちの成長の軌跡、そんなことを発信していくと多くのことが変わりました。
まず、コーチたちがその内容を読むことで、代表の考えを理解し、それをもとにトレーニングを構築することができるようになりました。
代表の考えに触れることで、育成年代のこと、サッカーを指導することについてより深く考え、学ぶきっかけになりましたし、よりコミュニケーションが活発になりました。
そしてなにより、発信したことで、保護者の方々が共感し、信頼してくれるようになったんです。
僕らのスタンスを理解してくれる親御さんが増えたことで、結果が出なくても不満をいう方がいなくなったことは、とてもよかったなと思います。
当時から、目先の勝利よりも子供たちの一歩の成長を大切にして、大人にやらされるのではなく、子どもたちの心に火がつく瞬間を待つというスタンスで指導し、発信していたので、そこに共感してくれる親御さんばかりになったのはすごく良い変化だったと振り返ってみても思います。
なので、指導者が考え方を発信することはとても大切なことだと思います。
クラブの思想、パーパス(目的・存在意義)をつくる
もう一つ、少年団といえど、なぜこの少年団が存在するのか、なんのために存在するのか、を問い直す必要があるなと思いました。
一番の問題は、思想、パーパス(目的・存在意義)がないということです。
思想、パーパスがないからコーチがそれぞれが思うままに、なんとなく子供たちと向き合ってしまうわけです。少年団の指導者は多くの場合プロコーチではありません。パパさんコーチが多いですし、育成年代の指導に必要な情報も取れていなかったりします。
だからこそ、指針となる思想やパーパスが必要なんだと思います。お金のある立派なクラブにしか持てないと思っている人が多いのですが、思想やパーパスは誰にでもつくれます。そのクラブにいるコーチたちでつくらなければなりません。
まずはコーチ全員で下記の問いを本気で考えてみることからはじめてみるのはいかがでしょうか。
※代表が一人で思考してアウトプットした後にコーチ陣に共有し、ブラッシュアップでも良いと思います
・この少年団は(クラブは)なんのために、なぜ存在するのか。
・この少年団は(クラブは)子どもたちにとって、どんな場所なのか。
・この少年団(クラブ)のコーチは、子どもたちにとって、どんな存在であるべきなのか。
たった3つのこの問いをまずは考えることで、パーパスは見えてくると思います。それぞれの問いを掘り下げて、思想とパーパスをまとめることが大事だと思います。
「パーパス・ブランディング ~「何をやるか?」ではなく、「なぜやるか?」から考える」という本があります。サッカーとは関係ない(あるといえばある)ですが、チームのブランディングの観点で参考になると思います。
パーパス・ブランディングは、企業や組織の根幹であり、拠り所となる「パーパス(存在理由)」を見つけ、究極的にはそれ一つで、様々な判断をして、課題を解決していくことです。拠り所となるパーパスを明確化すると、経営者も現場もブレることなく、同じ方向を見て進むことができる。それは、パフォーマンスの最大化につながります。 そして、パーパスは「今」にフォーカスした考え方です。突き詰めると「企業やブランドが何のために存在するのか」という問いに回答できる、シンプルかつ、パワフルな言葉に行き当たります。
パーパスがあることで、そのクラブのメンバーはなにをすべきかの判断に一貫性がでてきます。また、
パーパスをつくるのが難しければ、まずはブログなどで考えや、スタンスを発信していけるといいのではないかと思います。
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