トイレ

ウォシュレットを通じて日本の“おもてなしの心”を読みとく

中田翔のつぶやき

2月1日よりプロ野球のキャンプが始まりました。北海道日本ハムファイターズは今年よりアメリカでのキャンプとなっていますが、ウォッシュレットに関するこんな記事が目につきました。

そうです日本ハム、いや侍ジャパンの主砲中田翔がキャンプ地のアメリカ、ピオリアにはウォシュレットがないことを嘆いているのです。今や日本ではほとんどの公共トイレにウォシュレットが装備されています。ウォッシュレットの洗浄機能に慣れてしまった日本人のお尻は、ウォッシュレットなしではトイレで過ごすことが出来なくなっているのです。しかし、「軟弱な日本人のお尻よ」と嘆くことなかれ。ウォッシュレットこそ、日本人が発明したおもてなし心満載の商品なのです。ウォシュレットはTOTOが開発、販売しています。その他にINAXのシャワートイレという製品もあります(ここではウォシュレットに統一して書いています)。

僕は海外出張した際に、ホテルのトイレにもウォシュレットがなくて失望感と違和感を覚えたことがあります。一旦お尻洗浄に慣れてしまうと、洗わないことに言いようのない不安感を覚えてしまいます。それに海外のトイレットペーパーは紙質が硬いことが多く、お尻が痛くなるのは僕だけではないはずです。

海外のウォシュレット事情

海外のエンターティナーも来日がきっかけでウォシュレットの虜になった人は多いようです。特にマドンナのウォシュレット好きは有名で、2005年に来日した際には「ウォシュレットに会いに来たわ」との名言を残しています。またレオナルド・デカプリオやウィル・スミスももウォシュレットが大好きで、自宅のトイレをTOTO製品に変えちゃったようです。一度味を知ってしまうと自宅にも欲しくなりますよね〜 気持ちはよく分かります。

ではなぜ日本以外の地域、特に欧米にはウォシュレットがないのか? 一つは水質の問題があるようです。日本の水道水の多くは軟水ですが、欧米は硬水が多いようです。硬水はマグネシウムとカルシウムの濃度が高く、軟水はその逆です。軟水は緑茶には合いますが、紅茶を入れるときは逆に硬水のほうが良いようです。僕は1990年台後半に2年間ロンドンに住んでいましたが、日常の生活でも硬水で入れた紅茶は美味かった。一方、和食には柔らかな風味の軟水のほうが合い、硬水は向かないようです。また硬水はカルシウムが多く含まれている分、ケトルなど食器にはすぐに石灰が沈着します。トイレなども同様に石灰沈着の問題があってウォシュレット製造には問題があったのかもしれません。

それに加えてライフスタイルの問題もあるのでしょう。ヨーロッパでの日常生活は僕たちが思っている以上にシンプルで質素です。店でのサービスも日本のように至れり尽くせりとは異なったライフスタイルでした。そのような環境ではとても「便器にお尻を洗ってもらおう」という発想には至らないのかもしれません(ホテルによっては便器と並んでビデは設置されてますが‥)。

ウォシュレットは日本文化の結晶だと思う 

それでも僕はウォシュレットを開発・販売したTOTOに拍手を送りたい。よくぞ「お尻を洗う」ことに眼をつけた、と思います。どこの企業もそうですが、特に日本企業は製品を開発・販売するためのアイデアが顧客目線なのだと思います。十分に市場リサーチを行い、顧客の要望を細かく聞き取り、製品の開発に活かす習慣がしっかりと根付いているのです。

ひと昔前まで、日本人は「自己主張がなくて何を考えているか分からない」と言われていました。ところが最近、日本へやってくる外国人観光客からは「日本人はいつもスマイルで、ホスピタリティが素晴らしい」と言われます。それは単なる「おもてなし」というよりは、「常に相手の気持ちや要望をくみ取って、察して応えようとする」日本的コミュニケーションの存在を外国人が感じ取っているからにほかなりません。このウォシュレットもまさしく日本人のおもてなしの心、ホスピタリティの結晶だと思うのです。

多様性の中の調和を目指して

しかし時にはそのホスピタリティが逆に日本人をスポイルする危険性もあります。中田翔選手の談話のように、ウォシュレットのある生活に一旦慣れてしまうと、ウォシュレットのない生活にストレスを感じてしまう。日本は現在モノが溢れかえっており、また痒いところに手が届くサービスが充実しています。その生活にどっぷり使っているのが今の日本の現状でしょう。恵まれた環境に慣れ親しんでしまうと、質素な環境には戻れなくなります。海外では日本のようにモノを手に入れたり、サービスを受けられるとは限りません。

だけど海外で生活する体験を積むと、かえって日本のありがたさがよく分かる、という心境に至ることがあります。日本でのサービスが受けられないことに不満を抱く人もいるでしょうが、逆に日本で得られない体験を積むことも出来ます。そうやって考え方や文化の違いに触れることによって、多様性の中で調和をもたらす活動 (harmony in diversity) が出来れば、さらに成長出来るのではないかと思います。

以上 keittaey 鷹のぼせでした!



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