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LUUPだけじゃない!日本のシェア電動キックボード事情

特定原付の誕生から1年あまり。LUUPを筆頭に盛り上がりを見せている電動キックボードのシェアリングサービスについて、これまでの歩みを振り返ってみましょう。


風穴を開けた特例電動キックボード

電動キックボードは従来、原動機付自転車に分類されていました(現在でも用件を満たさない場合は原付に該当。また、出力によっては自動二輪等になる場合も)。しかし、これではシェアリング事業をおこなう上でヘルメット着用義務が大きな足かせとなります。そこで、

  • Luup(LUUP)

  • EXx(ema)

  • mobby ride(mobby)

  • 長谷川工業(SUM RiDE)

の4者が中心となって、新事業特例制度を活用した規制緩和を求めました。いわゆる「特例電動キックボード」です。

特例電動キックボードでは、道路交通法上の小型特殊自動車に位置付けることでヘルメットの着用義務をなくしたほか、自転車道や普通自転車専用通行帯の通行、「自転車を除く」とある一方通行路の双方走行が認められました。(詳しくは以下記事も参照)

特例電動キックボードは2021年4月にスタートし、さまざまな事業者によって全国各地で実証が行われました。

千葉市で実証をおこなっていた長谷川工業“SUM RiDE”

特定原付の誕生

そして、これらの実績などをもとに小型電動モビリティの規制緩和が検討された結果、2022年4月に改正道路交通法が可決。「特定小型原動機付自転車」(特定原付)の新設が決まりました。

一定の要件を満たした電動キックボードは、下記のような自転車と同等の交通ルールが適用されることとなったのです。

  • 運転免許不要(16歳未満は運転不可)

  • 歩道モード(最高時速6㎞)に切り替えれば自転車歩行者道の通行が可能

  • ヘルメット着用は努力義務

改正法の施行は当初2年以内とされていたものの、その後、2023(令和7)年7月1日に前倒しされました。ルールを周知するには期間不十分に思えますが、一方で下手に特例電動キックボードを継続してルールが混同されるよりはさっさと新制度に移行した方がよいというのも頷けます(実際のところどういう事情だったのかはわかりませんが)。

とはいえ急な制度変更に既存事業者は対応を迫られました。2022年7月に進出を果たしたばかりの韓国大手SWINGはあっさり撤退。特例電動キックボードの旗振り役であったSUM RiDEやmobbyも2023年6月末をもってサービスを終了しました。

原付ナンバーなのに特定原付のナゾ

こうしてスタートした特定原付ですが、LUUPキックボードを眺めると未だに数多くの機体が原付ナンバーです。これらは特例電動キックボード時代から運用されている機体で、要件を満たすため特定原付として扱われます。(※ただし歩道モードの設定がないため歩道は通行できない)

ただ、このようにすんなり移行できたのはLUUPくらいでした。最高速度表示灯という特定原付特有の装備が存在するためです。

そこで、2023年6月以前に製造された機体については、型式認定番号標、性能等確認済シール、特定原付用のナンバープレートのいずれかを装備していれば、最高速度表示灯の取付が猶予されることとなりました。
※歩道モードへの切り替えができないため、こちらも歩道通行は不可

たとえばこちらの機体には最高速度表示灯が装備されていませんが、ナンバープレートを特定原付用のものに交換しているため特定原付に該当します。


さて、この猶予措置の期限は2024(令和6)年12月22日となっています。

特例電動キックボード時代からサービスを提供している事業者は、この日までに最高速度表示灯を備えた機体に更新しなければなりません。一時サービスを休止するなどして機体を入れ替える事業者がある一方、Su_i(名古屋)やBEAM(那覇)は撤退を選択しました。

シンガポール発祥のBEAM。当初は大阪や南魚沼、のちに那覇でサービスを展開していた。

シェア電動キックボード事業者一覧(2024年12月現在)

こうして移行期間を終えようとしているシェア電動キックボード事業者について、いま一度まとめておきましょう。なお当記事では原則として無人貸出のサービスを掲載対象としています(レンタル系は除外)。また、抜け落ちがあるかもしれませんが、ご容赦ください。

LUUP

言わずと知れた国内シェア電動キックボード界の最大手。当初は東京や大阪など大都市への展開に留まっていましたが、LUUP for communityの提供開始に伴い、地方部へも続々と進出しています。

2024年12月現在の展開エリア

BRJ

  • BIRD:東京都立川市、千葉県勝浦市など

  • TOCKLE:福岡県福岡市アイランドシティエリア、千葉県流山市など

シェア電動キックボード事業のパイオニアである「BIRD」を2021年10月から国内で運営しているのがBRJです。東京都立川市を皮切りに、千葉県流山市や福島県郡山市など各地で実証をおこなってきました。

また、2024年7月には新サービス「TOCKLE」を立ち上げ、福岡アイランドシティで提供を開始。10月からは流山市のサービスをBIRDからTOCKLEに切り替えるなど、2つのサービスを並行して運営しています。

Lime

北米を中心に280都市以上に展開する世界最大手のサービスのひとつ。国内で初めて電動シートボード(座席付きの電動キックボード)を導入したのが特徴的です。

日本国内においては2024年8月に東京都区部でサービスを開始。2024年11月からはBEAMと入れ替わるような格好で沖縄県那覇市にも進出しました。

Kickboard Share系

  • ヨコハマベイスクーター:神奈川県横浜市

  • SEA-Board:神奈川県三浦半島・湘南エリアほか

  • TabiMo:奈良県奈良市

  • HAPPY BOARD:滋賀県高島市

  • MIYATOYO BOARD:宮崎県宮崎市・新富町※休止中

eBoard社のクラウドアプリ「Kickboard Share」を用いて貸出管理をおこなうサービス群。なお、MIYATOYO BOARDは機体入替のため休止中です。

YOKOHAMA BAY SCOOTER

JOJO系

  • JOJO OKINAWA:沖縄県本部町

  • Route:鳥取県鳥取市

  • Hello!NEW新居浜Scooter:愛媛県新居浜市

LAIL系

  • NiMo:新潟県新潟市(豊栄駅周辺)


movicle(※原付)

東京都港区を中心に展開するmovicleはシェア電動キックボードの中でも異色の存在。なんと原付扱いのサービスなのです。当然、要免許かつヘルメットの着用が義務付けられており、前カゴにヘルメットが備え付けられています。

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