寄り添う暮らし ~ガーデニアの香り~
雨の季節、庭の片隅。
クチナシの花は、いつも静かに、大きく咲く。
花が静かという表現は、不思議だろうか。
クチナシは樹勢が強いため、枝葉に花が隠れてしまい、
大きな花なのに、意外と目立ず、花もちも長くない。
この理由から、存在感が薄い=静かという表現をした。
ご理解いただければと思う。
そんな薄い印象だった、我が家のクチナシが、
ポテンシャルを発揮したのは、数年前のこと。
雨季の晴れ間に、庭先で花がら摘みをして、
それらを、小さなビニール袋の中に入れ、
そのまま車で外出することとなった。
しばらくして、車に戻ると、
突然圧倒的な、芳香に包まれた。
甘く、爽やかで、品が良く、強いが、
酔うほど押しつけがましいところのない、新鮮な香り。
一瞬、何が起こったのかわからなかったが、
それは、花がらを摘んだビニール袋からで、
源は、圧縮されたクチナシの香りだと思い至った。
なんでこの香りを知らなかったのかと、慌てて調べた。
かのクチナシとは。
クチナシ(梔子、巵子、支子、学名: Gardenia jasminoides)は、アカネ科クチナシ属の常緑低木である。庭先や鉢植えでよく見られる。(中略)別名、ガーデニアともよばれる[8]。花にはジャスミンに似た強い芳香があり、学名の種名 jasminoides は「ジャスミンのような」という意味がある。「三大芳香花」の一つに数えられる植物で、渡哲也のヒット曲『くちなしの花』で、その香りが歌われている。多くの人が親しみを感じている植物であり、日本の多くの「市の花」に選ばれている。
そうだった!
「くちなしの花」っていう歌謡曲、
幼いころ、聴いた事を思い出した。
歌詞を調べてみると・・・薄幸な女性の歌。
(よければお調べください)
もしかしたら、この歌のフレーズを通しての原体験が、
自分のクチナシに対する、地味な印象を
形成していたのかもしれないと思う。
しかし・・・。
クチナシさん、ごめんなさい。
あなたの香りは短い歌詞で表現できるものではない、
身近で、毎年姿を見せていてくれたのに、
殆ど見ていなかった、私を許してほしい。
こんなに素敵な香りを、感じていなかったとは、
本当に残念な歳月を過ごしてしまったと、
少し後悔した。
以降、クチナシは、一躍我が家の花壇の
スターダムにランキングされている。
毎年、花が咲くと、一度は、
摘んだ花をビニール袋に入れて、
誰かにプレゼントしたくなるし、
ちょっと鬱陶しいと思っていた、強い樹勢や、
虫がつきやすい葉さえも、
愛おしいものの一つと捉えている。
かぐわしい香り、白く清楚な存在感から、
クチナシの花は、結婚式のアイテムにも人気。
英国では、ダイアナ妃の成婚時、
花自体が、ウェディング・ブーケ中にあしらわれ、
また、キャサリン妃の成婚時では、
身につけた香水に、香りがブレンドされていたそう。
主張すぎない、品が良く、幸せになれる香りは
世界中で親しまれているのだ。
そうなれば。
名前も「クチナシ」という和名ではなく、
学名の「ガーデニア」という
エレガントな名前で呼んであげるほうが、
この樹木にはふさわしい気がする。
理由は、私のような先入観をもたないため。
・・・歌謡曲を知らない世代は関係ないのだが(^^)
一瞬で、幸せな夢の世界を感じさせてくれる
クチナシ=ガーデニアの香り。
ぜひ、姿を見たら、嗅いでみて欲しい。
また、その際には、香りを堪能するために、
花をビニール袋に入れて、しばらく置いてから、
試されることをお勧めしたい。