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第28話:マーケティングのSTPとマーケティングで陥りがちな問題点

前回のおさらい

マーケティング論を研究するためには有用な知識をお伝えしてきましたが、実務で使えないと意味がない!ということで前回はマッカーシーのマーケティング・ミックスについてお話していきました。

今日は、STPについてお伝えしていきます。

マーケティングのSTP

マーケティングミックスを理解するだけでも十分武器になりうるのですが、マーケティングミックスを実行する前に明確にしておく点があります。
それが、STPと言われている、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングです。

マーケティングと言っても、ある「マーケット(市場)」を狙うことはほぼありません!というのも、今のビジネス界では、市場を幾つかの“セグメント”に分けて、自分の会社が有利に戦えそうな特定の分野を選んで、そのターゲットに対して、明確なブランドポジションを決めないといけません。

例えば、

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この例は、良くしていただいている麻布十番にあるオーガニックワインビストロ喃喃(https://nannantokyo.owst.jp/)を例にしています。このような形で自社の事業のポジションを固めていきます。

STPはマーケティング・ミックスを実施する前の、マーケターに課せられた大切な事前課題といえます。当然ですが、ターゲットやポジショニングは普遍であることはありません。大切なことはマーケティング・ミックスを実施したあとにターゲットやポジショニングを規定することがないようにしなければいけません。

セグメンテーション

昔は、マス・マーケティングが有効でした。その時代の人は一つの製品を大量生産(Product)をして、全国的に流通させて(Place)、妥当な価格をつけて(Price)、テレビコマーシャルをなどのマスメディアを使って全国にプロモーション(Promotion)をすれば全ての買手に売り込むことが出来たのです。

しかし、1つの市場でも、消費者のニーズは多様化して、1つの市場においても様々な思考が存在するようになったため、現代ではミクロマーケティングをすることが主流になっています。
市場はいくつかのセグメントに細分化(セグメンテーション)されそれぞれの割り振られたセグメントに対して、財・サービスを提供することになるのです。

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セグメント別でいろんなマーケティング手法があります。

・マス・マーケティング
→市場に対して全体を狙っていくものです。
・セグメント・マーケティング
→セグメントをしっかりと分けることで狙いを絞るマーケティングです。
・ニッチ・マーケティング
→「ニッチ」隙間を狙っていくマーケティングです。
・カスタマイズド・マーケティング
→個々に対して狙うマーケティング手法です。それに沿ってプロダクトが変わるため企業のコスト負担が大きくなります。

市場細分化の切り口

市場細分化はいくつかの切り口で実施することが出来ます。

・地理的変数
・人口統計的変数
・サイコグラフィック変数
・行動上の変数

基本的にこれらの切り口を利用して市場を分けていきます。
切り口と言えば、、、

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思い出してください!哲学のところでお話しましたが、どこからがりんごでどこからがそうでないものなのか、それを定義するものは何なのかということには誤りが生じやすいことをお話していました。

一口で切り口変えると言ってもむずかしいんですね。
気をつけないといけないのは、マーケティングの入門書の欠点はこういうことをさらっと流していくところです。
機械的に切り口を決めていけばいい話ですが、実はその切り口が、現象を正しく捉えているかどうかはわからないのです。でも、こういう時に科学哲学の分野を勉強していると役に立ちます。

ターゲティング

次に、標的市場を設定する、すなわちターゲティングを確認しましょう。
これは、細分化された市場を評価して、どのセグメントをターゲットとするのかという意思決定を行います。
ターゲティングには、無差別型マーケティング、差別型マーケティング、集中型マーケティングと言う3つの考え方があります。


無差別型マーケティング
セグメントを無視して商品を展開する方法です。
例としてあげられるのは、コカ・コーラです。
とはいえ、このようなマーケティング手法を取れるような企業は最近は少なくなってきています。独占市場で唯一無二のモノを作っている企業であればこのようなものを活用することが出来るでしょう。


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差別型マーケティング
複数の市場セグメントを取り上げてそれぞれの市場に対して異なる商品を展開する方法。
例えば、トヨタ自動車。高級自動車であるレクサスや、それぞれ異なる販売チャネルであるトヨタ店、トヨペット店、カローラ店などの販売店によって異なる商品を展開していますよね。これが差別型マーケティングです。

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集中型マーケティング
少数の市場セグメントに注目してその市場に対して経営資源を透過する手法です。これが世の中でもっとも使われているマーケティング手法なのではないでしょうか。

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ポジショニング

見込み客の心のなかにブランドをどのように位置づけたら良いのかと言うマーケティングをする上でとても大切な課題です。ターゲットが決まったらターゲット市場において占めるべき「位置」を明確にしなくてはいけません。

ポジショニングの例として自動車業界を例にします。

■ボルボ→もっとも安全な自動車
■BMW→究極のドライビングマシン
■ポルシェ→世界最高の小型スポーツカー

と言われています。
しかし、これは相対的に捉えられるものです。
相対的なものであるということから解るように、ポジショニングは、製品(やサービス、ブランド)に対して行なわれるものではなく、消費者の心に対して働きかけるものなのです。しかし、製品開発の段階ではどういう消費者に訴えかけたいのかということを明確にしておかなければいけません。

ポジショニングは消費者のマインドに働きかけるもので、ポジショニングを“認識”するのは消費者です。つまり、解釈は消費者側が恣意的に行うわけです。消費者が恣意的に解釈しないためには企業は常にブランドメッセージを発し続けなくてはいけません。

ポジショニングの切り口はなんでもいいわけではありません。3つの条件を網羅するようにしましょう。

①重要性。
②独自性。
③優越性。

有用なポジショニングになるかどうかを改めて考えなければいけません!

また、ポジショニングは誤りやすいのですが、ポジショニングでありがちなミスを見ていきましょう。

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どちらにせよ、企業の想いや思惑が消費者に伝わっていないところからこのようなミスが生じてしまいます。

まとめ

マーケティングの諸問題は、認識と言う言葉でまとめることが出来ます。そもそも、企業と消費者は商品やプロモーションを通してでしかコミュニケーションを取ることが出来ません。

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認識のズレを、ターゲットを男女で分けたときの問題を見ていきましょう。スカートを売るときは、女性の方が男性と比べて圧倒的にスカートに対する知識を持っています。その場合、彼女たちが見るスカートの分類と、彼らが見るときの種類は異なります。

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女性は、しっかりと形を見ることでスカートの種類を答えることができますが、男性はスカートとしか答えることができません。これは笑い話で済む話ですが、女性を企業と、男性を消費者として考えたときに、情報量や知識の差異でセグメントやポジショニングのズレが発生してしまうことはしばしばあります。他山の石と思って認識しましょう。

ズレは必ず生じてしまいます。ズレを起こさないためにはどうすれば!
認識についてはもうお勉強しましたよね?
そう、科学哲学の登場です!

これまでご紹介してきた、5つの学問とマーケティングの関係は、入門編レベルのマーケティングを学んでいる時にぶつかる課題を解決するのがこれまで学んできた5つの学問なのです。よーく復習してください!ようやくスタートラインです!


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