見たかった観せたかった景色を見に行こう
映画版「M.バタフライ」
戯曲 吉田美枝さん訳「M.バタフライ」
さらば、わが愛〜覇王別姫
オペラ「蝶々夫人」(圭人くんの観た栗山民也版ではないけど…)
文化大革命…
普段ならネタバレ絶対嫌だけど…私なりに観たり調べたりしたのは
圭人くんの挑戦が大きくてその挑戦する世界を可能な限り解りたい、圭人くんの想いを全て受け取りたい、そしてソン・リリンを知りたいと思ったから。
ソン・リリンが肝になる。ソン・リリンが本当でなければ全てが嘘に見えちゃうな…率直にそう思ったし、絶対圭人くんは本物にしてくる。そう確信もした。
舞台が始まってからも圭人くんの挑戦は続いているように感じたのは「けいとのひとりごと」で圭人くんが毎日「頑張ります」と綴っていたから。きっと圭人くんの見たい景色はまだ先にあるんだなぁ…そう感じていた。
6/27 マチネ(A2)
待ちに待った…私の初日!!
圭人くんの初日からずっと情報を遮断してきた。色んな前調べはしたけど、実際に自分の目で見るまで他の人のフィルターを通したソン・リリンを知るのは絶対嫌だった。圭人くんの届けたかったモノをなんの情報も無く受け取りたかった。まっさらな私で…
冒頭の京劇「貴妃酔酒」からオペラへ…
舞台上中央に現れた圭人くん…ソン・リリンの優雅で美しい姿と舞に思わず息をのんで目が離せなくなった。
これが圭人くんが半年間積み重ねてきたモノの1つなんだ…
美しかった…想像のはるか上だった。劇場内を一瞬で幻想の世界へ連れて行ってくれた。
圭人くんが台詞を言うまでに少し時間がかかる。京劇、劇中劇「蝶々夫人」嫁入りの場面…これがとても美しい。圭人くんが日常でもひらひらやクネクネしてたのを思い出す。台詞が無い分、所作の美しさが際立つ。手、首、腰の柔らかい曲線は圭人くんのそれではない。
女性そのもの。
障子スクリーンといわれるセットの裏でシルエットのみ写し出される演出も、圭人くんの体のラインをより美しく魅せてくれて、私はそれを本当に愛おしく愛おしく眺めていた。圭人くんの努力の成果が私の目の前にあった。
そして同じ場所で、ソン・リリンが「蝶々夫人」の死の場面を演じる。
オペラ。
びっくりした。純粋にびっくりした。声楽のお稽古をしたって圭人くんが言ってたからオペラを歌うんだろうな…とは思ってたけど、私の知ってる圭人くんの声でも歌い方でもなかった。今でも耳の奥に聞こえる。
すごい…圭人くんすごい…。こんなに沢山の要素をマスターしたんだ。ってこの半年間、ずっと向き合ってきた日々を思っていた。
「失礼。ムッシュー…」
ソン・リリン!!
思ったよりいつもの声。
でもそこにいたのはソン・リリンだった。
約1年ぶりの圭人くん。ほんとに所作が美しい…そして私が映画を観た時から気に入ってるソン・リリンの台詞を圭人くんが話すのを待っていた。
「ブロンドの、ミス学園祭がちびの日本人ビジネスマンと恋をしたら?男は娘を冷たくあしらったあげく帰国して3年が経つ、その間、娘は彼の写真に向かって祈り、()求婚を断る。やがて彼が他の女と結婚したと聞いて自殺をする。あなたはこの娘はバカだと思うでしょう、どうです?でも東洋の女が西洋人のために自殺すると……ああ!……美しいというんですね。」
ソン・リリン…かっこいい…このクールな見解は私のお気に入りで、ソン・リリンそのものだと思っている。
圭人くんもこの台詞が海外にいた時に、自分の中にあった気持ちの代弁だと思ったって言っていて、これは私の中にもある西洋に対するなんでか分からないコンプレックスを海外経験もあって英語も堪能な圭人くんでも感じるんだ?ってびっくりしたのと同時に、海外へいたからこそ私以上にアジア人を感じることも多かったんだろうな…ってヘイトや差別を思って胸が痛くなった。
圭人くんは日本に居ても同じようなことを感じる…とも言っていて…そうゆうフィルターっていらないな…って本当に思う。ありのままのそのまんまを愛する。それでいいじゃんって思う。少し外れちゃったから元に戻そう。
圭人くんが絡むと熱くなっちゃう。
京劇「覇王別姫」
お稽古で2つの演目をマスターした圭人くん。多分、それは冒頭の「貴妃酔酒」と「覇王別姫」だと思うんだけど、この 「覇王別姫」は3分の演技をマスター。演出の都合で30秒ほどになったけど圭人くんはそれにもすぐに対応してくれた…とアフタートークショーで日澤さんが話していたそう。
30秒…とてもそんな長さには感じない。見応えありまくり。圭人くんのキレのある無駄のない動きに圧倒される。ラストの剣をくるくると回すとこなんて「どんな動きなの⁇」ってくらい。ずっとずっと観ていたかった。
この後、ソン・リリンとガリマールの会話になるんだけど
圭人くんは小さく息を「フッ」と1つついた後、息切れもせず台詞を言い出したのには、すごい…ずっとダンスして歌ってきた人だ…って思った。
そして、2人は舞台上の階段を登って並んで腰をかける。
この時のソン・リリンがスカートの裾を左右にヒラッヒラとなびかせて歩く様子は楽しげで無邪気でほんとにかわいくて…さっきまでのクールなソンとは別人みたい!
こんなキャップ見せられたら…ガリマールじゃなくても好きになっちゃう…
そしてソンちゃんは「時には同じ気持ち」だなんてにおわしてお家に帰っちゃう…罪でしょ…
圭人くんのソン・リリンは甘くてかわいい。
もうね、めちゃくちゃかわいい!!!!
初めてのソン・リリンはかわいいだけで終わった。
はっきり言って自分にガッカリした…
あんなに色々観たり調べたりしたのに…
全部吹っ飛んだ自分にガッカリした…
そして気づいた。
圭人くんは仕草やかわいい話し方じゃなくて
どうやったら好きになってもらえるのか?を考えているって言ってたそれじゃん!!って思った。
私はソン・リリンを、圭人くんのソン・リリンに夢中になっていた。
これは圭人くんの想いが届いた。受け取った証じゃない⁇
7/1 マチネ(C1)
Le Fils 息子の時は初日に完成してる感じがした。
今回は演りながらもっともっと…と完成させていく感じなのかなって思って、幕が開いたら…
3日前とは明らかに違っていた。
言いにくいのかな?って思うところもあった圭人くんの台詞が、台詞というより口から自然に出ている…そう感じた。
そう思うと圭人くんにも少し余裕が出たのか…
ガリマールに煙草に火をつけてもらおうとした場面で
「つけてくれたら眉間に煙を吹きかけてあげたのに」のとこで、「フーッ」って笑ってガリマールの顔にやったのめちゃくちゃかわいかった〜♡
この日のソンちゃん…とにかくあざとかった…
そしてセクシーなシーンはエロかった…♡
あぁ…圭人くん…
圭人くんが「自分はキャラクターに体を貸すだけ」
そう言ってたのがありありとわかった。
そこにはソン・リリンが生き生きと生きていた。
台詞→客席の反応
台詞→客席の反応みたいな
C&Rのような時間があったりして、私自身もすごくリラックスしてるのにその世界に入っていってて…とてもとても楽しかった。
舞台って生きてるんだな…って思った。
カテコで出てきた圭人くんがすごくニコニコしていて満足そうで…嬉しかった。
あー圭人くんも同じ気持ちなんだな…そう思った。
いつものように丁寧におじぎをして帰る時に、圭人くんが両手を合わせて、頷きながら「ぎゅっぎゅっぎゅ」ってやってて…それはまるで「よし、よし、よし」ってやってるように見えた。その横顔はとても納得が出来たような満足そうな顔だったのが忘れられない。
その日の「けいとのひとりごと」のテンションが今までとちょっと違うのも嬉しかった。
あぁ…圭人くんも同じように感じたんだな。そう想った。
嬉しかった。
お客さんがいて完成する。
私のその中にいたんだと嬉しかった。
忘れられない日になった。
7/2 マチネ(B3)
いきなりハプニングから始まった。
京劇の衣装の髪飾りの紐の部分がキレイに回らなかったのか、圭人くんの顔に絡んだ…心臓がドキドキした。
「あ…」と思ったけど、何事なかったように圭人くんは踊った。かっこいい…
なんとなく胸がザワザワしたけど、舞台は何も起こらず進んでいった。
よかった…そう思ってたら…
こうゆう日ってあるんだろうな…
ソンが裸になり、もう一度バタフライになるために着物を羽織るところで、背中で着物がねじれて上手く広がらなくて左手が袖に入らない…
最初は圭人くんも必死に袖を探すんだけど、どうしても袖が見つからなくて…(この間も台詞はある)
見ていた私も袖ばっかり見ちゃってて…
途中で諦めたのか、最後、着物の脇のとこからグッと強引に腕を出して何事もなかったように演じていて、(ここは少し男らしくて圭人くんを感じてしまった…)何が起こるかなんてわかんないよね…すごいな…って思ってたら…
階段降りる時にもう一度袖を探してて、下に降りてガリマールに腕を開いて制止する時にはちゃんと袖が入ってたのには震えた(袂が開いて綺麗だった)…冷静すぎる判断…かっこいい…
ソン・リリンはルネ・ガリマールを本当に愛していたのか。
答えになるのかはわからないけど、自分の理想を相手に求めるのはすごく自分勝手なことだと思った。
ソン・リリンは自分の作りあげたバタフライに夢中になるガリマールを見て西洋を支配している気持ちになっていたのかな。
ソン自身もやっぱりガリマールに理想を見たのかもしれないな。
ガリマールが見ていたバタフライは結局、自分の中にあった。
男性へ、本来の自分の姿になったソンとガリマールの対峙する場面。
ただ利用するだけだったらどうしてあんなに寂しげですがるようにも見える態度だったんだろう…
そう思うと
ソン・リリンは愛してたのかな?と思うけど…
ソンは男とか女とか,西洋とか東洋とか…そういったものを超えた、なんでもないただの自分を受け入れて欲しかったんじゃないか…と思った。
自分が作り上げたバタフライは、ガリマールは外側しか見てなかったのかもしれないけど、ソン自身を通して作ったバタフライはやっぱりソンでしかないんじゃないかなって。だからこそソンは裏側を見せたし、受け入れて欲しかったんじゃないかなって思う。
愛してた…より愛されたかったのかな。
ガリマールは現実を受け入れて自分の想いの昇華が出来たけど…ソンは…って思うのはやっぱりソン・リリン側から観たからなんだろうな。
最後の「バタフライ?バタフライ?」は
ソンの「ただの男」じゃない部分。なのかなって思った。
「私は東洋人だから。東洋人だから、完全に男ではありえない」
圭人くんはお稽古が始まる前に言ってたソン・リリンの人物像としての可能性
ソン・リリンはガリマールを本当に好きだった。
本当は男性が好きだったけど時代が許さなかったからスパイ活動という名目で一緒にいたかった。
文化大革命の中で子どもの頃からの夢を失くして、それでも生きる意味を探していたいからガリマールと一緒にいただけ。
答えを見つけるって言ってたけど
この中にあったのかな。
それともお稽古をして内野さん日澤さんとディスカッションをしてる中で変わっていったのかな。
どうなのか聞いてみたいな。
東京楽を前にすっかりソン・リリンロスになりそうだけど…私のM.バタフライはまだ続く。
7/30 7/31
今日を生きるソン・リリンに会えるのを楽しみに
今日を頑張るね。
もしかしたら
違った景色が見えるのかもしれない。