ありがとう田中謙吾選手
2022年からいわきFCの最年長選手として活躍してきた田中謙吾選手が、2024年シーズンをもって引退した。出場試合数は多くはなかったものの、サポーターにも恐らく選手にも多くの影響を残してくれた田中謙吾選手への感謝を綴りたい。
田中謙吾は"持っている"
まずは13年間の現役生活、お疲れ様でした。
そしていわきに来てくれてありがとうございました。
田中選手のいわきFCにおける初出場は2022年J3リーグ第5節・長野パルセイロ戦。この試合で自分は「田中謙吾は持っている」という思いを持った。この捉え方が大変失礼であるということは十分理解しつつも、試合当日のゴールキーパーアップ時に先発予定だった鹿野選手が負傷し、急遽先発出場。いわきFCでのデビュー戦が、数ヶ月前まで所属した長野パルセイロ戦だったということに対して「持っている」と思ってしまったのだ。
同日の試合は村主監督(当時)が新型コロナに罹患したことに伴い中島俊一コーチが指揮を執るという異例の状況。この中で選手は奮起し、古川大悟選手のJ3初ゴールを含む4点を挙げ、4-0のクリーンシートで勝利した。この部分もまた自分を「持っている」という意識へと駆り立てた。
長野戦、ご声援ありがとうございました!
— 田中謙吾 (@jantanaken) April 11, 2022
ゴール裏にはたくさんのいわきFCサポーター、とても心強かったです。
フィールドプレーヤーのハードワーク、身体を張った守備にも感謝。
そして長野パルセイロのサポーターの皆様、温かい拍手をありがとうございました!@IwakiFcOfficial @NAGANO_PARCEIRO pic.twitter.com/61J2ZPbEy6
引退試合となった2024年J2リーグ第38節・ザスパ群馬戦は、YBCルヴァンカップ・FC大阪戦、天皇杯・ブラウブリッツ秋田、サンフレッチェ広島戦に続き今シーズン4度目の先発出場(リーグ戦は初)。またしても3-0のクリーンシートに貢献したほか、日体大時代からの親友・小柳達司選手とプロ13年目にして初めて同じピッチに立つという場面も見られた。田中選手は、いわきでの初出場試合を前所属チームとの対戦という形で迎え、引退試合を「夢にまで見た」という親友との対戦を、いずれもクリーンシートで終えた。
忘れられない特別な1日になりました。
— 田中謙吾 (@jantanaken) November 10, 2024
身体張って戦ってくれた、チームメイトたちに感謝です。
そして、沢山のご声援ありがとうございました!
皆さんの笑顔、とっても素敵でした😀@IwakiFcOfficial #田中謙吾#小柳達司#奇跡 pic.twitter.com/Q2R5TsFY4F
普段が繋がり不断となる
「やはり田中謙吾は持っている」
しかしその考えは間違っていた。
田中選手の引退試合後、昨年ある方に聞いた言葉を思い出した。「(ゴールを)決めることが出来る、決めることが出来ないには何か原因がある。ポストに弾かれた先がゴールネットなのかゴールラインを割るのか。指先が少し触れてボールを弾き出せるのか、ネットを揺らすのか。普段の練習や姿勢が大きい」。
日々努力を途切れることなく重ねるという意を持つ言葉に「不断の努力」がある。ゴールキーパーという1人しかピッチに立てないポジションにあって、普段から準備をし、いざという時には最高の状態でピッチに立つことが出来るように備える。モチベーションを保ち続けるという意味においても、相当に大変なことのはずだ。急遽の出場となった長野パルセイロ戦で見せたクリーンシートも、引退試合で見せたクリーンシートも、まさに「不断の努力」の賜物だと僕は思う。様々な巡り合わせも含めて、決して「持っている」からではないのだ。
「日常」という「普段」が重なって「日々」となり、それが1本の線に繋がって「不断」となる。決して持っているのではなく、不断の努力がいわきでの初出場試合や引退試合を手繰り寄せた。不断の努力こそが「サッカーの神」を振り向かせる唯一の方法なのかもしれない。
どんわっせ
そして最後に試合終了後の「どんわっせ」について書いてみたい。みんなで勝利を祝い、サポーターと選手が一体化して笑顔になれる、今や定番の勝利の踊り「どんわっせ」。
「どんわっせ」は田中選手がいなければ、今の形では行われていなかった。
コロナ禍真っ最中のJFL時代とJ3時代。「試合終了後、選手とともにどんわっせをやりたい」そんな思いを当時のゴール裏のみんなが持っていたものの、声を発することが出来なかったこともあり、勝利後も今のように「どんわっせ」を行うことが出来なかった。
2022年J3リーグ時、コール隊を代表して現コールリーダー・あいだい君が「選手とサポーターで一緒に盛り上がりたい」という要望を伝え、田中選手から「こういう形なら出来るんじゃないか」と1本の動画が送られてきた。
そこに映っていたのは田中選手と嵯峨理久選手がロッカールームで今のスタイルの「どんわっせ」を踊っている様子。
「どんどどんどどどどんわっせ」でスタートして左右に2回ずつ移動して終わる。
動画を見た瞬間、いい!と声を出してしまった。
田中選手は選手会として当時の選手たちに新しいスタイルの「どんわっせ」のやり方を伝えてくれて、間もなく今の形の「どんわっせ」を試合後に選手とサポーターみんなが一緒に踊るようになった。まさに田中選手がいなければ、もしかしたら試合後の「どんわっせ」はやっていなかった可能性すらあるのだ。
明治安田生命J3リーグ 第27節
— いわきFC (@IwakiFcOfficial) October 2, 2022
vs #カマタマーレ讃岐
熱い応援ありがとうございました🙌🔴#DAZN で視聴するhttps://t.co/tG974zU2xC#iwakifc #いわきFC #Jリーグ pic.twitter.com/l97LylqU1y
明治安田生命J3リーグ 第32節
— いわきFC (@IwakiFcOfficial) November 6, 2022
vs #鹿児島ユナイテッドFC
🙌🔴勝利のどんわっせ🙌🔴#DAZN で視聴するhttps://t.co/tG974AcbLK#iwakifc #いわきFC #Jリーグ pic.twitter.com/BXYo9oMSL6
写真注※それ以前の「どんわっせ」(上)と鹿児島戦(声出し解禁後)の「どんわっせ」(下)
それ以前では、どんわっせしてるのが江川慶城選手とハマドリだけ笑
これから長い歴史を刻んでいくであろういわきFC。2022年から2024年まで在籍した田中謙吾という選手が、勝利の後に選手やサポーターみんなが笑顔になれる勝利の踊りを作ってくれた、というのはとてつもなく大きな出来事として刻み込んでおきたい。
そのプレーと笑顔で周囲を明るく照らし、周りを笑顔にさせる男。謙吾さんのこれからの人生が、ますます光り輝きますように。田中謙吾選手、お疲れ様でした。ありがとうございました。