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サポーターがまちを輝かせる
以前ある場面で「これまでにいわきFCの試合や遠征で印象に残ったものってありますか?」と質問をされたことがある。ホーム戦はほぼほぼ観ているけど、アウェイはなかなか行けてないなぁ…などと思いながら、それでも一番印象深かった試合を思い出した。
2019年4月14日 東北1部リーグ開幕戦 コバルトーレ女川戦(女川町総合運動公園 第2多目的運動場)本稿では当時を振り返って、プロスポーツクラブがある地域の個人的な理想像について書いていきたい。
2019年はいわきFCにとって、様々な意味で重要な年だった。地域1部に昇格し、この年の状況によっては全国リーグのJFLへの昇格が叶う。世界一過酷とも言われる地域CLを勝ち抜くことや、Jリーグ参入を見据えた運営や選手補強も必要となる。
開幕戦は前年JFLを戦ったコバルトーレ女川。当然ながら1年でのFL復帰を目指し、士気も高い。という部分を一度置いて、両クラブも両クラブサポーターも「地域を盛り上げる、地域を楽しむ」ということを大きなテーマにした開幕戦となった。
試合に際してコバルトーレ女川のwebサイトには次のようなメッセージが掲載された。
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開幕戦で戦う両チームのホームタウンは東日本大震災による被災を経験した地域であることから「東日本大震災復興支援マッチ」として開催します。
当日は、地域や両チームサポーターに開幕戦をお楽しみいただくイベントも開催します。地元団体による応援演技や、パフォーマンス披露のほか、石巻地域の「食」が味わえるスタジアムグルメの提供を予定しています。
また、女川駅前商業エリアを地域間交流の場とし、女川町に足を運んでいただく、いわきFCサポーターの皆さんにも、町の復興状況を確認していただく機会としていきます。
ぜひ、女川町のスタジアムまで、お越しいただきますよう、よろしくお願いいたします。
この試合では、スタジアムでのイベントにとどまらず女川駅前の商業施設「シーパルピア」や周辺店舗などの協力を受け、割引サービスや特典プレゼントが受けられるなど試合後に「女川を楽しむ」各種イベントが用意された。またコバルトーレ女川は試合後選手が同施設を訪れ、来場者との交流を行うことも告知した。
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このようなこともあって試合後は、両クラブサポーターがシーパルピアを訪れ海産物や酒などに舌鼓を打つ姿が見られた。いわきFCの選手やスタッフの方々も「しっかりお金を落とそう」と同施設を訪れ、サポーターと交流を行っていた。まち全体がサッカーでにぎわいをみせる、そんな理想的な姿を女川はみせてくれた。
開幕戦を終え、全選手で女川駅前の商業施設「シーパルピア」を見学、食事をとりました👍#iwakifc#いわきFC#シーパルピア#女川 pic.twitter.com/TB3gtyeWSL
— いわきFC (@IwakiFcOfficial) April 14, 2019
試合後に女川駅前のシーパルピア女川で牡蠣焼いて宴会してたら大倉社長が現れてこの様子www#いわきFC#コバルトーレ女川#ムキムキホヤホヤ pic.twitter.com/zy83ctb4fP
— nagi (@nagi_football23) April 14, 2019
女川町の人口は約6000人、町の面積は約65平方キロ、港を中心としたその一部にまちの機能が集約されている超コンパクトシティという機能面だけではなく、コバルトーレ女川という地元クラブを支援する人々の熱量があの1日を生んだのは間違いない。一方でいわき市は人口約33万、面積は1,232.51平方キロメートル、多核的に人口集中地区が分散している。サッカーであの日のような「祭り感」を体現するのは難しいようにも思える。
けれど、Jリーグに限らずプロスポーツクラブには、地域を牽引する力、地域の様々な資源と結びつき相乗効果を発揮して地域を輝かせることが出来るということを、自分は信じている。
あの日女川で感じた「サッカーの試合がある日常って素晴らしい」「まち全体がサッカーで繋がっている」という感覚を、むしろサッカーに興味のない多くの人に感もじてほしいのだ。
間もなく2025年のシーズンがスタートする。ユニフォームを着てスタジアムに行こう、グッズを持って街に出よう、多くのサポーターと交流を深めよう、地域にたくさん入っていこう。震災から14年が経過した今の福島・浜通りを、復興した様子をビジターサポーターの人々に見てもらおう。
15日、試合前と試合後、まちなかが大勢のサポーターで溢れるのが今から待ち遠しい。