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アザミは空を見上げた(改)

これは、ゆっそ毎月新曲配信ワンマンFINAL終演後の感想を書き直したものだ。前回アップしたものは、直後の興奮及びその後の喪失感からかうまく自分の感情を表現出来ておらず、納得がいかない出来映えだったので衝動的に削除してしまった。
そのままにしようと思っていたのだが、やり遂げたご本人の手記を読み、あの夜の記憶が薄れないように残しておきたいという気持ちが強くなり、元旦から筆を執ったのである。

これを読むと一年を駆け抜けた先のあの夜のライブが、いかに幸せに満ちた時間だったかがよくわかる。ご本人にとっても我々にとっても。そしてこの日に至るまでの苦悩や努力は、第三者が想像して語ることができるようなものではなかったことも。

一年間見守り、子の受験当日を迎えた親のような気持ちで私はソワソワし、成功の願掛けに、スカイツリーの麓まで行ったり日高屋でチゲ味噌ラーメンを食べたり、慣れない花屋で恥ずかしがりながらブーケを買ったりした後、開場の1時間半前くらいには茅場町に到着した。

いつもは出来るだけステージ近くに陣取る私だが、この日は遠くから全体を目に焼き付けようと思い、開演直前までコーヒーを飲んで時間を潰し、5分前にようやくTAKAITOWへ。
ドキドキしながらドアを開けたが、「あっ、キースさん!」といつも通りの笑顔で迎えてくれた彼女。
今思えばこの時から、このライブがゆっそ史上最高にハートウォーミングなものになる予兆はあった。
(結局何故か空いていた最前に陣取った)

照明が落ち、初めて作ったというSEは、今年生み出された12の新曲のタイトル。細部に拘るアーティストとしての側面も彼女の魅力だ(今回のCDのアートワークも素晴らしかった)。

そしてオープニングは「丸裸」

彼女のことを好きになるきっかけとなったこの曲で始まるライブは初めての体験だったが、驚くほどハマっていた。
人生に絶望し、自身が生きている意味さえ疑っていた「あの頃」、そして音楽に救われ歌い始めた第一歩を綴ったこの曲は、普段最も感情を込めて歌われる曲の一つだが、この日の歌唱からはヒリヒリしたものは感じられず、ステージに立ち我々の前で歌えている「今」を噛みしめるような多幸感に満ちていた。

続いて披露された「18歳」から畳み掛けるようにダークなゆっそワールドが炸裂し、いつもの彼女らしさに思わずニヤリとしてしまったが、この日は一年の総決算でありながら、発表された12の新曲を収めたCDのレコ発ライブでもあり、その全てが歌われた。既にセトリの常連になりつつある曲もあるが、なかなか聴く機会のなかった曲もあり、この日に賭けるチャレンジングな姿勢が感じられた。

「女舐め」で中締めしたあと、毎月のワンマンではライブ後に行われていたリスナー参加型コーナータイムへ。FINALはスペシャルバージョンで事前に集められた質問に答えていくというもの。普段のライブのMCでもそうだが、曲調や歌詞の内容からは想像できない温かい人柄は人間としてのゆっその魅力であり、今回のコーナーも自然と笑顔になってしまった。

ライブ後半は更に幸せに満ちた時間だった。
ゆっその曲の多くは今年予定されているワンマンライブ(10月18日@渋谷La.mama)のタイトル(物語と私)にもなっているように、辛かった時期を顧みたり、その頃の自分を癒したりする「私」をテーマにしたものと、作家性の強い「物語」(過去の自分を救ってくれたもの)とに分かれる。
そのいずれもテーマとしてはダークなものが多い中、10月に発表された「誕生日」は生まれてきたことへの感謝や、今を生きている幸福感を歌ったものだ。ご本人もMCやSNSで触れているが、この曲が生み出された背景にはこの一年、試行錯誤をしながら配信ワンマンをやり遂げたことによる成長があるのだろう。

そして、12月の新曲「声」

「丸裸」で始まった意味、これだったんだね。

「あの頃」はまだ手探りだったものが芽を出し、花が咲きそうな、実になりそうな、まだはっきりした自信はないけれど、そんなイメージが湧いてきた。そう、歌い続けてきたから、みんながここにいて聴いていてくれるから…。そんな感情をしっかりと受け止めることが出来た夜だった。

アザミは今、しっかりと空を見上げ、次の目標に向かって昇り始めた、2025年も楽しみだ。


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