"ギフトCD"という新たな試みについて。発売から2ヶ月経ってみて。
4/4のレコ発イベントで、2019年の第一弾CDとして「春を待つ花のように」というシングルをリリースしました。
このCDは僕にとっての新たな試みとして「ギフトCD仕様」という物になっているのですが、その仕様についての具体的な説明や、意図していたことについてのブログを書いていなかったので、いま発売から2ヶ月経った時点での手ごたえや感想も含めて、あらためて記事にしてみようと思います。
「ギフトCD」という名称が世の中にあるのかは分かりませんが、やっていること自体は真新しい訳ではなくて、きっと過去にも同じような販売方法を取ったアーティストもいると思います。
・CDをひとつのコミニュケーションツールとして考える。
単純に言うと一枚のCDを買っていただくと、同じCDがもう一枚付いてきます。
ですがただ単に二枚組というわけではなくて、まずは買っていただいた本人が聴くためのディスク、ジャケット、歌詞カード。
そしてそのパッケージの中に入れ子構造として、同じデザインのディスク、ジャケット、歌詞カードが同封されているという仕組みです。
意図や狙いとしては、その同封されているギフトCDを、買っていただいた方が別の誰かへプレゼントしてくれること。
パッケージが丸々封入されているので、完品としてのCD作品を、そのままプレゼントしてもらうことが可能になっています。
ただ、普段の通常形態のCDでも「友達に渡すから」と複数購入してくださる方もいらっしゃいます。
結果的にそれと同じになってしまっては面白味や温かみが薄くなってしまうので、ギフトCDの盤面にのみ、宛名と送り主の名前を記載できるような仕組みになっています。
価格も3曲入りが二枚で1000円と、通常のシングルCDから値上げなどはしていません。
これが今回のギフトCDの内容です。
ひとつのCDそのものが、"手紙"や"プレゼント"としての役割を担い、ジャケットが"ラッピング"の役割を担う。
デザイン面でもそういったコンセプトにこだわりながら、CDという媒体がひとつのコミニュケーションツールとして、人から人へと渡っていくことを目的としています。
・配信の時代だからこそ、「人から人へ」。
メジャーもインディーズもCDではなく配信がメインの時代になってすでに久しいです。
サブスクリプション配信など、定額で聴き放題のサービスにインディーズもどんどん参入していってます。
そこにはきっと逆らえませんし、現に僕自身もCDを買うよりダウンロードすることのほうが多くなってきました。
なので配信そのものは多いに賛成なのですが、「配信で音楽を聴く」ということはつまり、そこから派生する「共感」や「共有」といった感覚も、デジタル上でのやり取りになっていってるんだなぁと。
お気に入りの曲を友達に聴かせたいときも、配信のURLをコピーして、LINEで送ってしまえばそれでOKです。
そこに反逆したいとか、物申したいとか、そういった気持ちは全くないんですが、そんな時代にあえて"人から人へ伝わっていく温度"みたいなものを、自分なりにもう一度見つめ直してみようかなと思ったんです。
データやYouTubeのように一度にたくさんの人に送れるものではなく、当たり前ですが一枚のCDはひとりの人にしか渡せません。
なので、買ってくれた人が「誰にあげようかな?」と考えたときに、大切な誰かの顔が頭に浮かぶような、そんな作品になってくれたら嬉しいです。
収録されている楽曲も、そんなギフトCDというコンセプトに相応しいと思う曲たちをセレクトしています。
人から人へ伝わっていく、優しくて暖かい雰囲気のある曲たちです。
また、今回のCDの中には皆さんに書いてほしいメッセージカードが封入されています。
皆さんの目標や夢、頑張りたいことなどを書いてもらい、それをライブ会場で回収していくというプロジェクトで、集めたカードは8/30(金)に開催されるウエダケイタのワンマンライブで使用する予定です。
もちろんギフトCDのほうにもメッセージカードは入っているので、ギフトCDのコンセプトと連動して、CDが誰かの手に渡ると同時に、カードもその人のもとまで届く。
そうして、もしかしたらまだ僕もお会いしたことのないような人から、メッセージが返ってきたらすごく素敵だなと思うわけです。
・発売から2ヶ月経ってみて、成果と課題。
そんなギフトCDという試みですが、リリースしてから2ヶ月が過ぎました。
上に書いたように"メジャーもインディーズもCDが売れにくい音楽シーン"の中で、ネガティブな意味ではないですが客観的な個人の感覚として、ウエダケイタは特にCDが売れていないアーティストだと自分では思っています。
商品そのものの価値や内容、つまりは楽曲の良し悪しやクオリティの話をし出すと、今回の内容からはずれてしまうので一旦置いておかせてください。
もちろん良い曲を書いて多くの人に届けられよう精進していきます。
ただ、今回のギフトCDに関してはウエダケイタがこれまでにリリースしてきたCDの中でも、なかなか速いペースで購入していただいています。
累計枚数で言うと販売期間が長いものの方がもちろん売り上げ枚数も多くなるので、あくまでリリースから2ヶ月経った時点での話ですし、ここから同じようなペースで売れ続けるかはまた別問題ではあります。
けれど、リリースから半年を経ても50枚にも満たない作品もある中で、小さな世界の話ではありますが、良いペースで届けられているという事実は素直に嬉しいし、通常のCDを普段通りに販売するよりも、ギフトCDのコンセプトに賛同してくれたり、おもしろがってくれた人も多かったのかなと思います。
価格は据え置きなままコストは二倍になっているので、利益は半減してしまいましたが、枚数的にはこれまでのCDよりも届けられている。
あとは肝心の、「買ってくれた人がギフトCDを誰かに渡してくれているのか?」という部分なんですが、ここに関しては僕自身が直接、自分の目で確かめることはできないので、買ってくれた方に委ねるしかありません。
全員がギフトCDを誰かにプレゼントしてくれたと仮定した場合、単純計算で50枚売れたら100人に、100枚売れたら200人に、楽曲が届いているということになります。
ただ僕の予想では実際のところは、なかなかギフトとして第三者の誰かにまで届いていないんじゃないかなと思います。
これについては僕の発信でもっと動線を分かりやすく提示したり、買ってくれた方が「誰かに渡そう」と思えるような工夫が必要だったなと思っていて、だからこそ二ヶ月経ってこの記事を通して、改めてギフトCDのコンセプトを詳しく書かせてもらった次第です。
売れているアーティストがやればもっと話題になったかも知れないし、僕にもう少し影響力があれば、CDの届け方に悩んでいるアーティストに新たな成功例を提示できたのかも知れません。
SNSなどを通して、バズったり話題になる事はなかったけれど、ファンの方を中心にじわじわとコンセプトは受け入れてもらえていると思うので、ここからがまた踏ん張りどころですね。
・最後に。
CDなのか配信なのか?
そもそもCDはもう時代遅れなのか?
僕は単純に自分が売り出したいシーンや客層によって、まだまだ使い分けていっていいと思っています。
インディーズシーンにはまだまだCDの需要はあると思うし、ライブ後の物販でメンバーから直接CDを買うという行為そのものが、インディーズライブの楽しみ方に組み込まれている面もある。
年齢層によっては配信が苦手な世代もまだまだいるし、要はマーケティングの問題なのかなと思います。
現に僕の場合だと、ファン層に配信が苦手な人が非常に多く、このnoteで配信している映像や音源も、CDやDVDより手間はかからないながらも、受け取ってくれている人はまだまだごくわずかです。
なので今回のギフトCDという企画をやってみようと思った訳ですが、もちろん若い世代であったり、メジャーの音楽を聴くような層の人たちにも積極的に聴いてもらいたいし、見つけてもらいたいので、配信や無料公開も並行してやっていくつもりです。
長くなりましたが、音源を届ける方法や、CDのリリースの仕方については、まだまだやってみたいアイデアがたくさんあるので、これからもどんどん実践していきたいと思っています。
ひとまずはこのギフトCDが、より多くの人の手に届きますように。
ウエダケイタ